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愛を込めて花束を


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:納見萌芳(ライティング・ゼミ日曜コース)
※この記事は、フィクションです。
 
 
付き合って初めての誕生日だった。彼が花を買ってきてくれた。3月生まれの私の雰囲気を思ってチューリップを買ってきたのだ。淡いピンク色のチューリップはまだ蕾が開くまで、とても可愛らしい。彼は実直で誠実なタイプだけど、この手のロマンチックなプレゼントははじめてで、お花屋さんに買いに行くのもとてもちゅうちょしたらしい。身長180cm以上ある大柄な彼が花屋でチューリップを買う光景は確かに滑稽かもしれない。それでも、花が好きだと言った私の言葉を覚えてくれていたのが、とても嬉しくて、私は彼のほおにそっとキスをプレゼントした。
 
「結婚しよう」
付き合って3年目の私の誕生日のことだった。大学から付き合って、3年目。社会人になり、お互い忙しくなるも、それでも変わらずお互いのことが好きでい続けることが出来た。どんなすれ違いも乗り越えて今日まできたのだけれども、とても嬉しいのだけれども、それでもどうしても「結婚」 の二文字は私の心にどこか重くおしかかる。私たちは遠距離恋愛だった。結婚するということは彼の実家の方に行かなくてはならない。今身近にある親しい友人や家族を置いて行かなくてはいけない。それはとても悲しいことのように思えた。でも、それでも、目の前の私を真っ直ぐ見つめて、大切にしている彼を信じて歩いていきたい。
「お願いがあるの、あのね。」
私は今日、一つの条件と引き換えに彼と人生を歩み続ける約束をした。
 
「お母さん、お誕生日おめでとう!」
ある日ご飯を作っていたら、息子からプレゼントされた。色とりどりの花束は、到底5歳の息子に買える代物ではない。
「あれれ?これは一体誰が買ってきたのかな〜?」
とニヤと笑ったら、そっと背後からパパが出てきた。
「じゃ〜ん、毎年合例の花束で〜す」
結婚をパパから申し込まれた時、私はパパにある一つのお願いをした。それは毎年私の誕生日に花束を送ること。そして毎年欠かさずパパは私に花束を送ってくれる。
「今年はどんな花かな?」
と覗いてみたら、ネモフィラとかすみ草、カーネションに、チューリップなどの色とりどりの花が入ってある。
「ママは、どんなお花が好きなの?」
と息子に聞かれれば、私は付き合ってはじめての誕生日のことをそっと息子に話すことにした。
 
先日、夫と喧嘩をした。
理由は20歳になる息子のことだった。息子はあれからすくすくと成長し、私たちの毎日を彩り豊かに楽しませてくれた。個性を伸ばし、いいところを褒めてたくさん伸ばし、とても心が素直な子に成長した。しかし、個性を大切にしすぎたためか、息子は急に大学をやめてミュージシャンになりたいと言い出した。高校から続けていたバンド。確かに上手だとは思ったけど、プロの世界でやっていけるかどうかはわからない。でも、私は息子を応援したくて、そっと金銭的に支援をしていた。それが夫にバレたのだ。夫は激怒し、そのまま出張に行った。私は夫の言うことが理解できても、夫の言い方にはどうしても納得することが出来ず、出張から帰ってきた後も上手に話すことが出来ていない。冷戦状態がしばらく続くと思われていたが、ある日、家に帰るとダイニングに花が飾ってあった。淡いピンク色のチューリップ。入れ物に対して明らかに大きい花はどうにも不恰好でなんだかおかしい。大体50過ぎたおじさんが、花屋に花を買いに行く姿は思わず吹き出してしまいそうだった。怒りでいっぱいだった私の腹も落ち着き、今日は夫の好物を作ることに決めた。
 
夫が入院してから4ケ月が経っていた。
病名は胃がん。友人に癌が見つかってから、自身も試しに病院に行き、検査したところ見つかった癌だった。余命、1年。70を過ぎたあたりからそういう覚悟はしているつもりだった。けれど、だけど。
今思えばたくさんのことがあった。結婚して、子供を育てて、孫が生まれて。ありきたりな人生のドラマかもしれないけれど、私にとってはかけがえのない日々。美しい日々。あと10年はあなたと一緒かしらと呑気に話していたら、こんなことになるなんて。そっと夫の方を見れば、彼は薄く笑っている。
「ありきたりな話だけど、笑わないで聞いてほしいのだけど、実はね、家の庭にある花のタネを植えてきたんだ」
「なんの種ですか」
「私はあなたと結婚するとき、とある約束をしましたね」
「えぇ」
「毎年あなたに花束を送ると」
「送っていない年もありましたが」
「まぁ、それは置いておいて。それでね、これからも毎年送れるように花を用意しときました」
「庭にですか」
「えぇ」
「結局世話をするのは私ではないですか」
「そうですね」
「あなたっていっつもそうですね、人に世話を任せて」
「面目ない」
「でも、そうやっていっつも私を楽しませようとしましたね」
「努力はしたつもりですよ」
「あなたのそうところが、好きでした」
「好きでしたって、まるで過去形のように」
「えぇ、好きでした。あなたの送ってくれた花束が、どんなに辛いことがあっても、必ず私の心に咲いていました。ありがとう、約束を守ってくれて、ありがとう、愛しています」
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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