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行司に学ぶ仕事のやりがい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山口 幸美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「はっけよーい! のこった! のこった!」
大相撲中継を見ていた時、ふと思った。
相撲をとる力士の間で、軍配を持ち、取り組みを裁く「行司」。
彼らは普段、力士たちが稽古に励んでいる間、何をして過ごしているのだろう。
本番で良い声を出すための発声練習? 際どい勝敗を正確に見極めるための特訓? もしかして普段は全く違う仕事をしているダブルワーカー?
 
調べてみると、その仕事内容は多岐にわたるものだった。
例えば力士の番付と四股名がびっしりと書かれた「番付表」を作成するのも行司の仕事だ。番付表は相撲字と呼ばれる独特な書体で書かれている。行司は数年かけてこの相撲字を習得する。そして新しい番付が決まると、書き手となった行司は10日間かけて1枚の番付表を書き上げる。
また場所中であれば、場内アナウンスや翌日の取り組みを決めるのも行司の仕事だ。審判部と協議して、前日までの力士の星取表を見比べながら、より観客が盛り上がる取り組みを考える。
その他にも地方巡業の時の会計や力士の冠婚葬祭のイベントの事務作業など、行司は相撲界の総務課的な役割も担っている。
 
なんだか自分の姿と重なった。
私は小さな会社の事務員として働いている。
総務や経理を兼務しているため、幅広い業務をこなさなければならない。
会社には力士のように表舞台で戦う営業や技術職の人たちがいる。彼らがなかなか仕事をしてくれない時には、行司が「はっけよい!」と動きの止まった力士に戦いを促すように、「早くしてくださいね!」と発破をかけることもある。
しかし事務員というのは、なかなかその仕事が評価されないことも多い。営業や技術職の仕事が、営業成績や売り上げにはっきりと表れるのに対して、事務員の仕事はその成果を数字で表すことができない。昇進も基本的には年功序列だ。
時々、何をやりがいとして働けばいいのかわからなくなることがある。
 
行司も年功序列の世界だ。
力士であれば、先輩後輩関係なく実力で番付の上位にのし上がっていくことができる。しかし行司は、例外はあるものの原則として1日でも早く入門した人が上位となり、その関係は半永久的に変わらない。
そのうえ行司は、相撲部屋に所属し力士たちとともに団体生活を送る。同年代の若者たちが楽しく遊んでいるなか、プライベートな時間はほとんどない。夢を抱いて入ってきても、厳しい規制や理不尽な生活に耐えられず辞めていく人も多いという。
その生活をどうやって乗り越えるのか。
約50年間の行司生活を送った三十六代木村庄之助は、著書『大相撲 行司さんのちょっといい話』でこう語っている。
「まずは、1日でも早く先輩の仕事に追いつくよう、自分自身を磨くこと。相手に闘争心など見せる必要はありません。「心のライバルを持つこと」で、自分を奮い立たせるのです」
 
自分自身を磨く。
わかっているようで、なかなか出来ないことだ。
私はよく他人と自分を比較してしまう。悪い癖だとわかっていても、ついつい「あの人は私より仕事をしていないくせに……」と考えてしまう。しかし、そこから得られるものは何もない。
自分自身を見つめ、どんな仕事をしたいのか、どんな自分になりたいのかを考えてみると、浮かんでくるライバルは弱い自分やだらしない自分だった。そんな自分に打ち勝つことで、自分自身を磨いていくことができるのかもしれない。
 
また木村庄之助はこうも言っている。
「自分の中では正論と思っても、この世界では通らないこともたくさんあります。それをどうとらえるのかは本人次第なのでしょうが、行司の場合、「相撲が好き」ということが、この世界で生きていくための基本中の基本になります。その気持ちを忘れなければ、いろいろなことを乗り越えていけるのではないかと、私は思っています」
 
思い出した。私は会社に愛着をもっている。一緒に働いている人たちのことも好きだ。
この会社で働く人たちが、もっと快適に働けて、スムーズに仕事を進めることができるように全力でサポートしていきたい。それが私の基本中の基本だった。
面倒なことを押し付けられたり、思うように評価されなかったり、理不尽なこともたくさんあるけれど、会社が成長するための土台をつくっていくことが、私の選んだ仕事のやりがいだ。
 
行司の仕事が相撲界に必要不可欠であるように、私の仕事も会社にとって必要不可欠だ。そのことを誇りに思い、今日も「はっけよい!」と自分自身を奮い立たせて、元気に働きたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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