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女子アナに恋愛アドバイスした話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「どうしたら、彼氏ができると思いますか」
まさかの質問がきた。
心臓がばくばく言う中で
まさかの質問だった。
 
ネットテレビのリモート取材。
緊張はピークに達していた。
取材の始まる1分前に、いやーな音が鳴ったからだ。
緊急地震速報だった。
 
私は地震が大嫌いなのだ。
音を聞いただけで緊張が高まり平静でいられなかった。
足も震え出した。
 
このタイミングでこんなことが。
1分たって、誤報とわかってもまだ緊張は解けなかった。
 
その余韻のまま、取材は始まった。
1時間1000円で自分を貸し出す、おっさんレンタルについての取材だった。
リモートになって需要が増えたことについてだった。
 
実際に番組の女子アナさんが私をレンタルしてみた、という収録だった。
 
どうして始めたのか。どんな依頼があるのか。など定番の質問が続く。
無難に答えた。一応、答えは用意していたのだ。
 
「私、どうしたら彼氏ができますか」
 
これは、想定外の質問だった。
 
「それでは、ここでひとつ、私にアドバイスをいただきたいのですが」
 
「はい」
 
「彼氏が欲しいんですけど、どうしたらいいですか」
 
まさかの質問がきたのだ。
 
「何か、気の利いた答えをしなければ」
咄嗟に私は思った。
 
うわあ。困った。どこまで言っていいのだろう。
いろんな返しが頭に浮かぶ。
 
「合コン行ったらどうですか」
コロナなのに、これはあかんやろな。
 
「野球のキャンプに行くのはどうでしょう」
これもちょっときついかな。
 
「ほんとは彼氏さんいるんですよね」
いや、アドバイスになってないし。
 
どういうのがいいんだろう。
面白いアドバイスをしなきゃ。
ああどうしょう。
 
悩みに悩んだ。
1分くらいの時間だと思うのだが
悩んだ。
 
挙げ句の果てに私は、こう答えた。
 
「ZOOM飲みで出会いを広げるのはどうでしょう」
 
あー。言ってしまった。なんということだ。
すごい普通の答えじゃないか。
これじゃフォローもできないだろう。
 
「あー。そうですね。ZOOM飲み流行ってますもんね」
女子アナさんは、優しくフォローしてくれた。
そして、さらに続けた。
 
「なるほどです。もうひとつアドバイスいいですか」
 
また、アドバイスか。難しいなあ。
 
女子アナさんは続けた。
 
「交際を続ける極意、って何かありますか」
 
ごくいいいいいいいいいいいいいいい?
 
やめたい、もう収録やめたい。
今度こそ、気の利いたこと言わなきゃ。
 
また、頭がフル回転を始める。
 
「浮気をスルーすること」
いや、物騒すぎるだろ。
 
「キスすること」
生っぽすぎるだろ。
 
「彼氏がアプリ ゲームしてても怒らないこと」
リアルだけど、長いかな。
 
あああああ、えい、もう出たとこ勝負だ。
 
こんなことを30秒ほど考えて、口をついて出た言葉。
 
「そうですね、同じ趣味を持つことですね」
 
つまらん。なんて普通なんだ。まったくつまらん。
 
私は自分にがっかりした。
こんなチャンスはないのに、俺には才能がないのか。
 
「あー、なるほど。同じ趣味ですね」
女子アナさんがまた優しくフォローしてくれた。
 
「そうなんです。同じ趣味があれば、喧嘩しても、どこかで接点を持つじゃないですか。同じ予定とかあるし」
 
また真っ当にこたえてしまう。ああ、なんということだ。
 
「では、最後に」
 
いよいよ最後の質問、爪痕を残さなければ。
 
「こういう男には要注意、というアドバイスをください」
 
こ、今度こそ!
 
ありったけの力を振り絞って、私はこう言った。
 
「ひとつだけ禁句があって、でも、ばかり言う男はやめたほうがいいです」
 
どうだ。
禁句は「でも」というの今までの答えよりはキャッチーじゃないですか?
 
「どういうことですか」
 
ス、スルーですか。。。。。。仕方なく答える。
 
「言い訳ばかりする男はダメ、ということです」
 
「ああ、そういう意味ですね」
 
空振りした。完全に空振りだ。
 
がっくりだ。
 
この収録、どのくらい使ってもらえるだろうか。
 
落ち込んだ。
 
おっさんレンタルに登録して7年。
 
テレビやネットの出演は10回近くになる。
 
だが、残念ながら、なかなか気の利いたことが言えない。
 
それがコンプレックスだ。
 
毎回毎回、準備はしている。何か面白いことを言わなきゃと。
 
しかし、本番でなかなか力を発揮できなかった。
 
どうしたら、面白いことが言えるのか。
 
レンタルで出会った、仰天エピソードを喋る練習もした。
どうして始めたか、も面白く言えるように考えた。
いい返しができるように、バラエティ番組を研究した。
 
しかし、今回のような真面目な答えしかできない。
 
つまらない人だと思われたくない。
なのに。
 
1週間経って、放送日を迎えた。
放送を見ると、真面目そうな私が写っていた。
硬くなりながら、女子アナさんの質問に答えていた。
 
やりとりはほぼ使われていた。
「でも、を言う男はダメです」
以外はほぼ使われていた。
 
なんと。狙って言った言葉が使われず、素直なところが使われていた。
 
収録場面のあと、まとめのコメントが泣けた。
「こんな風に、射手座さん(私の名前)は、私の話を親身に聴いてくれて
なんだか、ほっこりしました」
 
なんと優しい方だろうか。
面白みのないコメントをうまくフォローしてくれるとは。
ありがたい。
 
よし、次のチャンスがあれば、もっと気の利いたことを言えるように頑張ろう。私は決心した。
 
それから1週間ほどして、レンタルの依頼があった。
 
「この前の番組を見て、話を聴いてもらおうと思って」
利用してくれた方はそんな風に言ってくれた。
 
「いやいや。お恥ずかしいことに、全然面白いこと言えなかったです。
それなのに、ありがとうございます」
私は自信なさげに答えた。
 
「そんなことないですよ。話を聴いてくれそうな雰囲気がありました」
 
そうか。面白くなくていいんだ。
私は気づいた。
 
面白いことを求められていないのだ。
話を聴いてくれそうな人を求めているのだ。
 
なーんだ。
 
私はやっとわかった。
 
そして、さらに思った。
 
いや、待てよ。
だからと言って、そのままでいい、というものでもないだろう。
 
面白い、よりも、話を聴いてくれそうな人、をしっかり打ち出さないといけないんじゃないか。
 
つまり、聴く姿勢をもっと伝えなければいけなかったのでは。と思った。
 
たしかに、アドバイスを、と言われたが、それはアドバイスをすることで
よかったのだろうか。
 
いつもと同じように、答える方法はなかったか。
 
「私はアドバイスはしません。よく話を聴くので、一緒に答えを探しましょう」
と言ったら、どうだっただろうか。
 
意外性はあったんじゃないか。
 
おっさん=アドバイスする人、という思い込みを裏切る方法はあったのではないか。
 
間違ってた。
 
番組だし、気の利いた答えを、と私は瞬時に思った。
 
しかしそれは、自分のエゴだったのではないか。
 
目立ちたい、面白いと思われたい。という思いが先行したのではないか。
 
悩み相談の悩みがどこかへ行ってしまい
自分のために答えようとしてはいなかったか。
 
答える瞬間、女子アナさんがどのくらい悩んでいるのか
どんな答えを期待しているか、それすらも吹き飛んでいたのではないか。
 
そしたら、いいアドバイスなんかできるはずがない。
そもそも、何も知らない人のアドバイスなんか瞬時にできるはずがない。
 
なんて思いあがっていたのだろう。
なんて浅はかだったんだろう。私は後悔した。
面白いことを期待されているのはプロの芸人さん。
私のような素人は、素材として、役回りをこなし
あとは料理してもらえばいいんじゃないか。
 
やるべきことは、こうだった。
3つの質問すべてに、「じっくり聴くので、一緒に答えを探しましょう」
と答えてみたら、どうなっていただろう。
 
面白くないかもしれないけれど
いじりがいはあったのではないか。
 
「聴きすぎ、一緒に答え探しすぎ」みたいにいじってもらえたかもしれない。
 
もうメディア出演のとき、気の利いたことを言おうとするのはやめよう。
 
そのままで、フレンドリーに反応し、ひたすら話を聴く人、
というキャラを立たせていこう。と心に決めた。
ちょっと変わった素人、の役割をしっかりやろう。
 
後日、別の番組収録もその心構えで臨んだ。
案の定、タレントさんがフってくれたネタに
単純に食いついてる姿だけが使われた。
 
わずか1分。
でも、知人から「よかったよ」という連絡をたくさんもらった。
 
メディア出演するとき、素人は自然体でいい。気負いすぎなくていい。
今ならそう言える。
計算できるから出演オファーをいただいたわけだ。
だから、それをきっちりこなせば、プロが料理してくれる。
 
番組だけではない。もしかしたら、仕事、プライベート、あらゆるオファーで
一番大事なことは、いつもの自分を出すことではないだろうか。
 
もしみなさんが、何か自信のないことにアサインされたら、
思い出して欲しいのです。
相手の方は、あなたのことを知った上で大丈夫だと思って
オファーしてくれているということを。
どうかそこを信じてください。
 
ああ、もう一度オファーを信じて、あの番組でリベンジしたい。
 
じっくり話を聴く姿勢を見せてみたい。律儀に、笑ってしまうほど律儀に。
 
あ、でもその頃には
女子アナさんが素敵な恋愛をしていてほしいなとも思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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