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「猫の妹分」だった私が「猫の母」になれた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:まこんぶ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「……で、弟の姿が見えてしまったみたいで、ギャン泣きし始めちゃったんですよ。弟はもう、後ろ髪引かれる、っていう感じで……」
「そうだよね。泣かれると辛いよね……」
 
コロナ禍で在宅勤務がメインとなり、久しぶりに出社し残業したある日、電車の中で向かいに座った男女が話していた声が耳に入ってきた。
目を閉じて、聞くともなしに聞いていたその会話の、
「やっぱり、家に自分たち以外の誰かが待っているって思うと、不思議な気持ちだよね」という男性の一言で、急に我に返った。ああ、ペットの話だな。「ギャン泣き」じゃなくて、「ギャン鳴き」だ。弟さんの姿を見て鳴いていたのは、犬だろうか、猫だろうか。
わかる、すごくよくわかる。
ついこないだ私も、「ここに私たちがいるのに、隣の部屋に別の生命体がいるって、すごく不思議じゃない?」という話を、夫としたばかりだ。
会話に加わりたい気持ちをぐっとこらえた。
 
私は、猫好きファミリーの出身。
振り返ってみると、幼い頃からずっと、猫のいる生活が当たり前だった。人生最初の大事件の記憶は、兄と拾ってきた大きな三毛猫が、翌日に自宅で出産したこと。
母の実家に猫を連れて車で帰省したこともあるし、引っ越し先に大きな庭があったときは、9匹もの外猫の面倒をみていたこともある。
私と兄が実家を出てからも、両親は猫を飼い続け、私たちは会いに行き続けた。
 
2年前に引っ越してきたこの街には、保護猫センターがある。
買い物のついでにのぞきながら、
「いつか、何かペットを飼いたいね」
「でも旅行に行けなくなっちゃうから、今は無理だね」
「猫なら慣れてるけど、犬は私飼ったことないし、毎日散歩できるかな」
「でも柴犬とか黒柴とか、かわいいよね」
そんな会話を夫と繰り返していた。
 
昨年秋が深まるころ、そんな私に、突然「自分の猫」との出会いがやってきた。
いつもと同じように新入り保護猫のプロフィール写真が貼られていたのに、なぜか「あ、この子はうちに来る」と直感した。
初めてガラス張りのプレイルームにその猫が連れてこられた瞬間にも、なぜか居合わせることができた。緊張にあふれた顔で、匂いを嗅ぎまわって、大きな目で周りを見つめていたのだった。
 
その時初めて、私は、ふと間違っていたことを感じた。
「ずっと猫を飼っていた」ので、猫の生態はわかっている。抱く時にはどこをどう支えればいいか。どこを触ると怒るか、喜ぶか。大体わかるよと、夫には伝えていた。
でも、この不安そうにうつむいている子をどうやって幸せにするのか、わからなかったのだ。
 
今まで私は、「ずっと猫を飼っていた」のではないんだ。飼っていたのは母で、私は気の向いたときに遊んだり、えさをやったり、寝ている猫にちょっかいを出したりしていただけだったことに気づいた。
子供の頃に飼っていた猫を思い出すと、独立した雰囲気の猫が多かったように思う。自分から人に甘えてくることはめったにないが、子供のちょっかいにも忍耐強く、最も多くの時間を一緒に過ごした母とは、特別な信頼関係で結ばれていた。「やれやれ、この子は時々面倒だけれど、私は幸せですよ、お母さん」「そうね。大目に見てくれてありがとうね」。母と猫を見ているとそんな会話が聞こえてきそうだった。
 
しかし、縁あって我が家に迎えることができたこの子は、人の姿が見えないとにゃあにゃあ鳴いて、抱き上げると柔らかい肉球で人の顔をペタペタと触ってくる。人間のベッドに上がり、川の字になって寝るし、誰が遊びに来てもスリスリと頭をこすりつけ、手や顔を舐めて熱烈歓迎。
これには猫好きの両親や兄もびっくり。密かに犬を飼いたがっていた夫は、「猫って呼べば返事するし、走り寄ってくるし、膝にも乗ってくるし犬みたいだね」と満足そうだ。
 
お世話になった保護猫センターでは、保護猫・保護犬の現状について勉強会をしていただいた。あまりに悲しい現状を数字で知り、涙が止まらなくなった。
でもそれを通して、ペットを飼うという意義と責任をしっかりと心に刻むことができた。
その毎日の暮らしに、健康に、命に責任を持つということ。
物言えぬペットの心や体の状態に気を配り、可能な限り良い環境を整え、慈しむこと。適切に専門家の力を借りること。
それができる状態に自分たちがなったことで、自然と出会いのタイミングが生まれ、出会うべくしてこの子に出会えたということが、心の奥深くに響いてきた。
 
学校帰りに、かわるがわる野良猫を拾ってきた私や兄。
転勤先に、家族より一足先に赴任している数か月の間に、庭で野良猫を手なずけてしまった父。
インターネットもなかったような時代に、2度も自宅での猫の出産のお世話をし、何匹もの子猫を取り上げ母猫と二人三脚で育てた母。
そして、犬のような猫を家族に迎え、「猫って思ったよりフレンドリーだね!」と喜びわが子のように毎日猫を優しく抱き上げ話しかける夫。
 
そんな人たちと歩んできた私が出会った、初めての「自分の猫」。
猫らしくない、犬みたいな猫。私と夫を両親だと思ってくれていると信じて、これからもずっと幸せにしてやりたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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