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いい子であろうとする私は、子どもであって、大人でもあった


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記事:スミ咖(ライティングゼミ日曜コース)
 
 
あーそうだな、私もそう。本を読んで、ここまでしみじみしたことは今までなかった。自分のきもちがその文章の中にあった。
 
人気ブロガー、はあちゅうさんの本の一説
 
”子どもの頃、わかりやすく、理由があって泣くのに対して、大人はなんでもないことで、よく泣くなぁと思っていた”
 
という言葉に激しく共感をしてしまった。大人になると、かなしい、痛いとかいう分かりやすい意味ではなく、もっと複雑な感情がこみあがって、涙が出ることがある。彼女の一節に共感と、胸にちょっとした、ツンとする痛みを感じたのは、私がまさにその時、体験したからなんだと思う。
 
保育園の先生になって12年目。いい意味で慣れて、言い方を変えればマンネリというのか……。こども相手の仕事は、同じ日なんてない。だけど、朝の会をして、外で遊んで、給食を食べて、お昼寝をする。私は毎日子どもを追いかけまわして、話を聞かせるようにして、外でひたすらダンゴムシを獲って、流し込むようにごはんを食べる。こんなことを、これから、毎日、毎日繰り返していくのだろうか……。
 
だけどそんなきもちは、ちょっとガマンすればいいだけ。ガマンして、仕事して、たまに好きなケーキなんかを食べれば、ストレスはなくなる。そうやって自分に言い聞かせて働いてきた。
 
だけど、そのちょっとしたガマン、自分のきもちを見ないようにしていたことは、少しずつ溜まっていって……
遂に、溢れだした。
保育園を目の前にして、涙が止まらなくなって、行けなくなった。原因は分からない。そこに確かにあるのは、ただただ、泣けてきたということと、”保育園に行きたくない”というきもちだけだった。
 
もう行きたくない。だけどそんなこと思っちゃいけないし、親に言えない。自分のきもちは分かっていたけど、迷惑をかけることを考えていたら、正直になれなかった。職場への迷惑をかけるという申し訳なさもあったけど、それ以上に、私は親に保育園に行けないということが言えなかった。
私が保育園に行けなくなったって知ったら、お母さんが心配する。それに、もう辞めたいなんて思ってるなんて、知られたら、私は家にいられない。と思った。
「すみかちゃんは、いつも頑張ってるね」と褒めてくれるんだから、いい子で、保育園の先生をしている私が、お母さんは好きなんだ。
 
少し休めば、気分が変わるかもしれない。また保育園に行けるようになるかもしれない。
だからお母さんに内緒で保育園を休み、出勤していることにして、図書館や外で過ごした。リストラされたことを家族に言えず、公園で過ごしているサラリーマンみたいな生活をして過ごした。
 
自分がいられそうな所を探しては、うろうろする日々。ふと、地元の商店街が気になって立ち寄ってみた。ゆっくり、目的もなく歩くなんて久しぶり過ぎる。と自分がいかに忙しく、こころの余裕がなかったことを実感していた。
 
ぼーっと歩いていると、なつかしいお店が並んでいた。夏休みの工作材料を買いに行った文具店、読み聞かせが習慣だったお母さんと行った図書館、そしてよく通った、大判焼のお店を見つけた。丸くて、ふっくらした生地の中に、あんこやクリームが挟んであるおまんじゅうみたいなお菓子。お店はキレイになっていて、子どもの頃通った時にいたご夫婦ではなかったけど、息子さん夫婦が店に立っていた。店長さんも、店の外観も変わったけど、1個90円という値段と、ふんわりした甘い香りは全く変わってなかった。子どもの時、よく来たな。と懐かしくなって、久しぶりに食べてみた。
 
1人、車の中で、パカッと割ってみる。湯気が出て、車内に甘いにおいが広がった。口に入れると、卵と小麦粉の甘さがしみてきた。
あー……、子どもの時、お母さんと買いに来たっけ。弟と、お母さんと、いろんな種類の味を買って、分けっこしたっけ。あの時はあんこより、チョコが好きだったな。お母さんはいつも「すみかちゃんの好きなやつ食べていいよ」ってにこにこしてたっけ。
 
……。
噛みしめていたら、なみだが止まらなくなってきた。大した理由はない。なんでもない、ただ大判焼を食べた、それだけのこと。なのにどうしても、どうしてもなみだが止まらなかった。
 
子どもの頃に泣くというのは、痛いとか、欲しかった物が手に入らなかったとかそういう単純な理由でしかなかった。なんでもないことをして、思い出して泣くなんてそんな複雑な感情はよく分からなかった。
 
なんでもないことで、泣くというのは、無数の体験をしてきた証拠なんだと思う。だからふとした時、その経験を思い出して、感情が揺さぶられる。
お母さんにいい子であると思われたいと思う私は、まだまだ、子どもなんだろう。
だけど、それと同時に、複雑な感情が分かるようになった大人でもあった。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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