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セクハラとコミュニケーションの境い目


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記事:久米 靖(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
先日、オリンピックの金メダルを某市長が噛んだことが、ごうごうたる非難の的になっていた。
コロナ禍であることが批判に拍車をかけたが、たとえ平常時であっても非難されたことは間違いないだろう。
 
そのニュースを見て、ふと思った。
(ここまで大問題になってセクハラだとか言われているけど、そうならないケースもあるんじゃないかな……)
 
例えば、その金メダリストの方が福山雅治さんの熱狂的なファンで、メダルを噛んだのが福山さんだったとしたらどうだろう?
もっとも福山さんはメダルを噛んだりしないだろうから、この例えそのものが成り立たないのだが、それは一旦さておいて、である。
選手の方のたゆまぬ努力が結晶化したメダルに、さらに「福山さんが“噛んでくれた”」という「付加価値」が付き、消毒や交換などしないで保管するかもしれない。
 
このように、その行為が「セクハラかどうか」はその行為者の主観ではなく、「それを受けた当人がどう感じるか」ということで決まるものだ。
その意図がなくても、受けた方が「セクハラをされた」と感じれば、それはもう立派なセクハラなのだ。
 
今回取り上げる「セクハラ」とは、一昔前に横行していた「体を触る」「性的な言葉をかける」、というような明らかなセクハラのことではない。
注意をしていないと「セクハラ」と取られかねない少し微妙な状況のことだ。
 
かなり前のことだが、「ナチュラルメイク」なるものが流行っていた頃、社内で同僚の女性二人が話をしていた。
「そのナチュラルメイク、いいわねえ~」
「そう? ありがとう!」
すぐ近くにいたボクは、つい口を滑らせてしまった。
「ナチュラルメイクって、ナチュラルに見せかけた厚化粧のことじゃないの?」
 
その時、その二人以外に少し離れて数人の女性がいた。
当の女性は「もう! 久米さんたらっ!」と、ケラケラ笑いながら返してきた。
ボクも普段の会話からそういう反応がわかっていたので口にした言葉だったが、その時周囲の空気に一瞬ひびが入ったのを感じた。
会話をしていた二人ではない。その周りにいた女性たちの間の空気だ。
 
(あ、失敗した)。
セクハラとは当人たちだけではなく、周囲に及ぼす影響も含めてのものだと気づいた瞬間だった。あの時のなんとも言えない空気感を、今でも覚えている。
 
ボクには相容れない長所と短所があって、それゆえによくセクハラとコミュニケーションの間を漂ってしまう。
長所(だと思っている点)は、細かいことによく気がつくことだ。「観察眼が鋭い」とプラスに評価してくれる人も多い。
逆に短所は、それをそのまま口に出してしまうことだ。
 
観察眼の点では、会社の同僚のちょっとした変化にことごとく気づいてしまう。
髪を切ったり少し色を変えたりしたことはもちろん、さらに“まつ毛が少し長くなった”“アイラインの入れ方を変えた”ことまで気づいてしまう。
それをそのまま口にしてしまうものだから、大抵はギョッとした目で見られてしまうのだ。
 
こんなことがあった。
ある時、同僚の女性がファンデーションを変えたのに気づいた。
「あ、ファンデーション変えたんだね」
「……はい、よく気づきましたね!」
しばらくしてまた気づいた。
「あれ、ファンデーション元に戻した?」
「……!!」
 
あとで共通の知り合いから聞いたのだが、彼女は一時期試供品のファンデーションを使い始めた。それを使い終わったため、いつものファンデーションに戻した。その両方ともを指摘されてしまったのだという。
「もしかして、いやがってた?」
「いえ、爆笑してました(笑)」
 
女性の化粧は男性のネクタイと同じように、いわば“正装”の一種だと思う。であれば、その
正装をいつもと変えたり、何かを加えたりした場合はそれを誰かに気づいて欲しいのではないかと思うのだ。
男性のボクにしても、スーツを新調したりした時など、誰かに気づいて欲しいと思う。
 
その変化に気づく者に対して当人が普段どのような感情を持っているかが、セクハラとコミュニケ―ンの境い目を決定づけるのではないだろうか。
 
しかしこれも、加減というのが非常に大事なようだ。
 
ボクは旅行会社に勤めているが、一時期女性が中心の某企業のツアーの添乗をしていた。
ある参加者で、ツアー内で呼ばれる名前とパスポートの名前が違っている方がいた。
数年に渡り何度かご一緒したのだが、そのうちにパスポートの期限が切れ、更新されたパスポートのお名前は普段呼ばれているのと同じになった。
 
結婚してもパスポートの名義変更をしないで、旧姓のまま海外旅行に行く方は意外と多い。
その方のパスポートの名前が変わったのを見た時、ボクは善意から不用意に口走ってしまった。
「ようやくパスポートのお名前が変わりましたね。おめでとうございます!」
 
ところが、その女性から返ってきた言葉はボクを戦慄させた。
「……久米さん、勘違いされてます。逆です……。私、離婚したんです。今回ようやくパスポートの名前が元に戻ったんです」
「……!!」
これも下手をすれば一種のセクハラだ。平謝りに謝ったところ、ご容赦いただけた。
 
また、同じ企業のツアーで丁度クリスマスの時期に海外にご案内することがあった。参加者はやはり女性ばかりで30名ほど。
せっかくなので、クリスマスカードを全員に贈ろうと考えた。
 
通り一遍の言葉ではなく、それぞれの方に個別のメッセージをしたためようと思った。
ツアーが始まってからクリスマスイブまでの数日間、どの方にどんなメッセージを贈るかをいろいろと考え、イブの前夜に一気に書き上げた。
 
クリスマスイブの夜、カードをお渡ししたところ、みなさんはキャーキャー騒いで喜んでくださって、お互いに見せ合ったりされていた。
 
だが翌朝、ツアーの代表の女性から言われた言葉は意外なものだった。
「クリスマスカードありがとうございました。みんなとても喜んでいますよ! でも、同時に少し怖いとも言っています」
「……怖い? 怖いって、なぜですか?」
「なんか、全てを見透かされているような気がするんですって……」
「…………」
 
その日から、ツアーの雰囲気が明らかに少し変わった。
ツアー自体は和気あいあいと進行したのだが、数人の方に薄いバリヤーを張られているような印象を持った。
 
また逆に、前日までとは全く違う親しげな態度で接してこられる方もいた。
個別にしたためたメッセージが、ある方には有効なコミュニケ―ションとなり、またある方には一線を越えたものになってしまったのだった。
 
このように危うい経験を重ねても、ボクの癖は変わらない。
相変わらず、セクハラとコミュニケーションの間の綱渡りをしてしまっている。
 
しかしさすがに年を重ねると「加減」というものが多少は分かってきたと思う。
相手の表情や言葉によって、ちょっとした“機微”を何となく察することができるようになったようだ。
ただそれも、実はそんな気がするだけで、ボクの周りがみな大人なのかもしれない……。
 
今日も会社で気がついた。
「あ、髪切ったんだね」
「そうなんですよ~、よく気がつきましたね!」
すると隣にいた別の女性が声を上げた。
「私も切ったんですよ!」
「あ、ホントだ!」
「ひどーいっ! 私のには気づいてくれないんですねっ!」
 
やれやれ、境い目を探るにはさらなる繊細さが必要なようだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-08-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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