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いつも一緒にいたよね


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:張川裕稀(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
私は生まれた時から一緒にいたペットがいる。
「モモ」という名前の白いメスの犬だ。
 
某携帯電話会社のCMに出てくる白い犬にそっくりだった。
あのCMが世間で大流行した時は、私の家族も食い入るようにテレビを見ては「モモにそっくりだ」と騒いでいた。
白い毛、黒い鼻とつぶらな瞳、耳の先だけ茶色くて、しっぽがドーナツみたいに丸い。
モモはずっと赤い首輪をしていたのだが、そんなところまで同じだった。
 
モモは私が生まれる2年前に、道で拾われた犬だ。
その頃はまだまだ道に野良犬がいる光景は当たり前で、まだ小さくてよちよち歩きのモモは、お母さんとはぐれてしまっていたらしい。そんなモモを叔母が拾ってきたそうだ。
真っ白で両手の上に乗せられそうなくらい小さくてかわいかったとのことだ。
私が生まれた頃にはすでに大きくなっていたので、「写真だけでもいいから子供のモモを見てみたい」と言ったのだが、昔の人は動物を写真に収める習慣もないためか、残念ながら1枚もない。
そう言う親に向かって、どうしようもないのに憤怒した記憶がある。
 
そんなモモと私は、物心がついた時からいつも一緒だった。
リビングから庭を見ればモモがこっちを見ていたり、日向ぼっこをしていたり、洗濯物の陰に寝そべって昼寝をしている時もあった。
私が庭に出ると、モモも小屋から飛び出してついてよくついてきた。
目が合うといつも尻尾を振って嬉しそうに私を見つめるモモが大好きだ。
私が親に怒られて泣いていれば、心配そうな顔をして私の顔を舐めてくれた。
 
祖母がいつもモモを散歩に連れていくのだが、小学生の頃からそれについて行くのが好きだった。その頃もまだ空き地の近くには野良犬がいたので、野良犬を見つけると祖母とモモと3人でそろりそろりと逃げるのも、ハラハラして楽しかった。
 
モモは普段外で過ごしていたのだが、台風が来たり、大雨が降ると、勝手口にバスタオルを敷いて、1晩だけ家の中に入れてもらえることがあった。家の中にモモがいるなんてこれ以上に嬉しいことはない。「モモと一緒に勝手口で寝る!」と親に駄々をこねたり、丸くなって気持ちよく寝ているモモをバスタオルで包んで嫌な顔をされることもあったけど、それだけ一緒にいる時間が愛おしかった。
 
小学4年生の頃に、学校で保護者向けに毎月回覧される雑誌があったのだが、その一角に「私のペット自慢コーナー」があった。私はモモが一番かわいく写っている写真を封筒に入れ、自分で宛名を書いて、切手を親にもらい、郵便ポストに入れたことがあった。
翌々月の雑誌にはモモの写真が大きくそのコーナーに載っていた。
クラスの友達には照れくさくて「賞品の図書カードが欲しかった」と言ったけれど、本当はモモをみんなに見て欲しかったのだ。
 
小学生高学年にもなると、1人でモモの散歩にも行けるようになった。
ある日、いつものようにモモの散歩をしていると、急に首輪とリードをぶら下げたビーグル犬が後ろから走ってきて、モモに噛みつこうとした事があった。
気の強かったモモもそれに応戦して、犬2匹の取っ組み合いの喧嘩が始まった事がある。当時、もう10歳を超えていたモモとは思えないほどの威勢だった。
数十秒後、ビーグル犬の飼い主の女性が走って来て、ビーグル犬のリードを引っ張って去っていった。だが、モモの口元が血で真っ赤になっており、私は血の気が引いた。
急いで家へ帰り、親にモモの体を見てもらったが、どこにも傷がない。
その数日後、親がエリザベスカラー(犬や猫の首に付けて、体を舐めないようにするラッパみたいなもの)をつけたビーグル犬を見たというんだから、驚いた。
きっとモモは人間にしたら、上司にもどんどん噛み付いてバリバリ仕事をする気の強い女性だったかもしれない。
 
そんなモモも15歳を超えて段々と衰えてきた。毛並みも悪くなったし、つぶらでかわいかた瞳も白内障で白く濁った。あんなに大好きで遠くまで歩いていた散歩だって、もう家の周りを一周するのがやっとだった。
 
ある年の年末、もうモモは自力では立てないほど衰弱していた。ご飯も食べないし、水を飲むのも精一杯だった。夜になると苦しそうな声を出す。家族が何度も病院に連れて行くが、もう手の施しようがなかった。苦しそうな声を出すのは、あまりにも体が痛くて、もう痛いという感覚すら分からないくらい頭がおかしくなっているからだと獣医さんが言っていた。当時中学2年生だった私には、そんな感覚を理解するには子供すぎた。
 
そして、年明け頃、モモは息を引き取った。
その日、私は部活動をしており、学校から帰ってくると、死んだモモは白い棺桶に横たわっていた。周りには綺麗な色とりどりの花が敷き詰められていて、小さい頃から付けていた赤い首輪も、花の上に置いてあった。
その姿を見たときに、一気に涙が溢れ出た。わんわん泣いた。撫でるとまだ少しだけ温かかった。
モモに天国で読んでもらうための手紙を一生懸命書いた。今まであったこと、楽しかったこと、嬉しかったこと、とにかく紙に書き殴った。もうあと1時間もしたらモモはここからいなくなってしまうんだから。
 
手紙を書き終えて棺桶に入れ、最後にモモを撫でた時、はっとした。冷たくて固くなっていたのだ。その時、本当にモモは死んでしまったんだと分かった。あの月や星よりももっと遠いところにモモは行ってしまったんだ。モモの目がうっすらと開いていたが、あのかわいい瞳ともう二度と見つめ合うこともできないのだ。
 
神様、どうかモモを連れて行かないでくれ。
 
そう願ったが、どうにもならない。
私は今までにないほどわんわん泣いた。
 
モモがいなくなってもう13年が経つ。
モモが話題に出ることももうほとんどなくなってしまった。
その代わり、私の実家には茶色い猫がいる。
人間は死後、三途の川を渡るというが、動物は死後、虹の橋を渡るという。
実家に帰るとモモの影をふと感じる事がある。
モモがまだ虹の橋を渡らずに、見守ってくれているような気がする。
私たちはいつも一緒にいた。そして今も心の中でいつも一緒にいる。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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