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メディアグランプリ

露出狂の聖地を張り込み取材したらまんまと全裸男が現れて僕の目の前まで無言で近づいてきた顛末


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉原まさる(ライティング・ゼミ スピード通信コース)
 
 
「露出狂の本領発揮は夏ではなく冬にある!」
編集長は編集会議で熱く語った。
 
サブカル系の雑誌社でバイトしていた僕はそうして編集長からの言いつけで、都内有数の露出狂が現れるという公園に張り込み取材をすることになった。
11月も下旬に差し掛かり、夜はガッツリ寒くなる。露出狂たちはどこからともなく真夜中の時間帯に現れ、何をするでもなく裸で過ごしたり、ひとしきり自撮りを楽しんではどこへともなく消えていくらしい。
「とりあえず、裸だってわかる程度に、顔がわかんない程度に、露出狂が出没したときの写真が撮れてればいいから」
編集長からのミッションはユルいのかキツいのかわからない内容だった。
幸い、バイクで来られる距離にその公園はあったので、終電を気にすることなく夜じゅう見張ることはできる。足元までのロングコートで防寒し、首から一眼レフのカメラを提げて準備は万端。
だが怖い。
だって、露出狂って単語が強烈だ。そういうのは変質者というんじゃないのか。そして変質者というのは犯罪者とはどう違うのか。
自分はこれまでの人生で露出狂というものに出会ったことがない。子供の頃にテレビで見た志村けんのコントも、中学生くらいまで意味もわからずなんとなく笑っていた。ロングコートを着た異様な風情の志村けんがカメラに背を向け、石野陽子などその時々の重宝された女性タレントに向かってコートを開く。キャーと叫んで逃げていく演技をする女性タレント。あれは何をしているのか。それすら考えず、「志村けんが何かする」だけで可笑しくて笑っていた。何をしているのか、友達との会話でそれとなく知ったときは「そんなのテレビでやっていいの?」と青ざめた中学生時代。
そういう回想に浸っていたら露出狂が現れた。
 
ロングコートは着ていなかった。完全全裸の男。靴も履いておらず、正真正銘のすっぽんぽん。
自分との距離がそこそこ以上あればまだよかった。しかし露出狂はどこからともなく自分の目の前、ほんの数メートル先に現れた。目が合う。意外なことにその露出狂はマトモそうな感じがした。もっと目が虚ろとか、怪しげにヘラヘラ笑っていてくれたら、危険を察知して逃げるとかこちらもできたかもしれないのに、その瞳のマトモさが僕を硬直させたままにした。
数秒、数十秒が長い。
そしてやはり怖い。
男は30代後半くらいの年齢だろうか。いかにも大学でラグビー部に所属し、体育会推薦枠で総合商社へ就職して馬車馬生活もなんのその。そんながっしりした体格をしていた。全裸であることを除けば顔つきも精悍で、酔ってもいなければクスリのようなものもやっている風情はなかった。
「ダッシュで逃げても追いつかれるな……」
目を逸らしたら負ける、そんな動物的本能のような直感で目を合わせたまま、相変わらず足がすくんで動かない。せっかくのシャッターチャンスではあるのに、今ここで首に提げたカメラを構えたら相手は逆上するかもしれない。
露出狂は僕を見つめたまましばらくじっとしていたが、意を決したようにゆっくり一歩、また一歩と歩み寄ってきた。
相手との距離が1メートルを切り、目の前に立っていると呼べる距離感になっていた。
そこまで近づかれて初めて、自分の脳裏に「同性愛レイプ」の可能性がよぎった。それまでよぎっていなかった自分の呑気さにもうんざりした。考えれば考えるほど自分の欠点ばかり再確認するので、思い切って何も考えるのをやめた。
 
「服、貸してください」
 
全裸男は口を開いた。
 
は?
 
唐突に自分の頭が冷静に回転し出したが、今度は状況の特異さに理解が追いつかない。言うまでもなくこんなことは人生初だ。
よく見たら男は困った顔をしていた。
 
こちらが話を聞く姿勢を見てとったのか、全裸男は訥々と事情を話し始めた。
いつものように深夜の独り露出を楽しむためここに来て楽しんでいる隙に、脱いだ服や財布など一式を入れて茂みに隠しておいたバッグを盗まれて途方に暮れていたのだという。
事情はわかったし気の毒にも感じたが露出狂であることが確定したショックで全然安心できなかった。でも話せる相手だ。
 
結論からいうと、服を貸す交換条件として、やらせモデルを無償でしてもらった。
いかにもスクープ、といった雰囲気になるよう、構図から何からこちらが指示して全裸男を撮影した。顔バレしない、は全裸男の警戒心(ってよく考えたら変だな、自分から全裸で公園を徘徊しておいて)を瞬時に解いた魔法ワードだった。
 
防寒具の下に来ていたスウェット上下を「あげます」といって全裸男に渡して着てもらい、タクシーを止めて乗せた。家まで着けば金があるからタクシー代も払えて問題ないそうだ。
 
善行を積んだ気がして清々しかった。そういえば胸元もスースーした。
僕はいつかテレビで見た志村けんと同じ露出狂の服装をしていた。
これでバイクに乗って風が吹いたら僕はいよいよ本当に……。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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