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リハビリテーションが私の身体に刻んだストップモーションアニメ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:アキ・ミヤジ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「おお、動いた!」
 
スマホの画面を眺めて私は、病院のベッドでひとり、歓声をあげてしまった。
見ていたのは、病室で自作した4秒間のストップモーションアニメ。
 
ストップモーションアニメを作るには、静止した物体をカメラで撮影し、少し動かしてカメラで撮影し、という作業を繰り返す。
撮影した写真をつなぎ合わせると、物体が生き生きと動き出すアニメーションになる。
 
「ウォレスとグルーミット」「チェブラーシカ」「ひつじのショーン」といったストップモーションアニメには手作りの温かみが感じられて、私は大好きだ。
そのストップモーションアニメを、ひとり病室で作ってみたのだった。
 
でもなぜ、どうやって、入院中にストップモーションアニメを作ったのか。
 
実は、その日の朝のワイドショーが、堀貴秀監督のストップモーションアニメ作品「JUNK HEAD」を取り上げていた。
堀監督は、独学でストップモーションアニメの制作を始め、ハリウッドからの誘いがありながらも「自分の作りたいものが作れない気がした」と断り、自力で作品を作り上げたのだそうだ。
 
制作にまつわるエピソードも、作品そのものも魅力的だった。
しかし、私が一番気になったのは、番組で紹介されていたストップモーションアニメが手軽に作れるスマホアプリだった。
 
その頃ちょうど、脊髄の手術を受けてから2カ月が経っていた。
車椅子の生活も覚悟しなければならなかった状況から、リハビリテーションによって、車椅子から立ち上がり、杖を使って歩けるまで回復していた。
順調な回復に気持ちにはゆとりが生まれ、病院での時間を持て余すようになっていた。
 
そこで、さっそくアプリをスマホにインストール。
チョコビスケットが動くストップモーションアニメを作ってみた。
 
ベッド脇のテーブルに、病院内の自販機で買ったチョコビスケットを山積みにし、スマホで一枚撮影。
次に、ビスケットのいくつかを動かして一枚撮影。
また少しだけ動かして撮影。
これを繰り返して60枚ほどの写真を撮影し、つなぎ合わせると、4秒間のアニメーションができた。
スマホの中で、山積みにされたビスケットたちは、自由に四方八方へと散らばっていった。
 
スマホ以外、なんの機材もない病院の一室。
そんな場所でも、まるで子供が授業中に教科書の隅に絵を描いてパラパラ漫画を作るように、ストップモーションアニメを手軽に作れたことは驚きだった。
そして、たった4秒でも、本来なら動かないビスケットが動き出す映像を自分で作れたことに感動した。
 
こうしてストップモーションアニメ制作の作業を楽しんでいたら、なんだか自分のリハビリテーションもストップモーションアニメのように思えてきた。
 
一日、トレーニングを頑張ってみる。
回復している実感はあまりない。
けれども翌朝起きると、身体の感覚や動きがなんだか昨日と違っている。
それが良い変化なのか悪い変化なのかはわからない。
ただ昨日とは違うとだけわかる。
 
そして、また一日、トレーニングを頑張ってみる。
すると次の日の朝には、また身体の何かが変わっている。
 
これを毎日毎日繰り返していくうちに、できなかった動きができるようになっていたり、これまではなかった感覚が感じられるようになっていることに気がつく。
その毎日の積み重ねの結果、手術の後、身体を起こし、ベッドで脚を動かし、ベッドから脚を下ろして座り、人に支えてもらいながら立ち上がり、車椅子に乗り移り、歩行補助器具につかまって立ち上がり、足を前に踏み出し、身体を支えてもらいながら前に歩き出し、少しずつ歩ける長さをのばしていって、補助器具が杖に変わり、と私の身体はどんどん変わっていた。
まるで、生き物が進化していく様子や赤ちゃんが成長していく姿を早送りしたアニメーションのようだ。
 
回復アニメーションの一コマ一コマを作ってくれたのは、理学療法士の方々だ。
彼らは、自身が持つ専門知識と経験、そして日々の努力によって、毎日のトレーニングを組み立ててくれた。
一コマ一コマがうまくつなぎ合わさるように、細部まで丁寧に作り込んでくれた。
 
おかげで、私はすっかり普通に歩けるようになった。
そして、リハビリテーションの成果と記憶は、どんな作品にも勝るかけがえのないストップモーションアニメ作品として、私の身体に刻まれているのだった。
 
日常の一日一日は、否応なく過ぎていく。
そんな時間の流れの中では、時間に追われ、気持ちに焦りが生じることがある。
けれども物事は、ストップモーションアニメのように、一日一日が細部までなめらかにつなぎ合わさった結果として動き出すものだ。
だから、焦ることなく、未来に向けてやるべきこと、やれることを少しでもいいから行動に移すように、一日一日を丁寧に過ごしていくことを心がけたいと思う。
 
思えば、そんなことは当たり前のことなのだけれども、仕事や家事に追われ、忙しく毎日を過ごしていると、実感しづらいことだった。
幸い私は、歩行機能の喪失から回復するためのリハビリテーションによって、実感することができた。
この実感を、先が読めないと言われる今の時代の生き方として、あるいはSDGsのようにスケールが大きくて判断が難しいことを決断するときのために、大切に持ち続けていたいと思う。
 
けれども、せっかく実感できたことも、またいつか忘れてしまうことがあるに違いない。
そんなときは、また同じ体験を繰り返してみれば、きっとまた思い出すことができるだろう。
けれども、あの痛みと不自由さ、そしてリハビリテーションを繰り返すのは、さすがにもうイヤだ。
 
だから代わりに、またストップモーションアニメを作ってみようと思う。
一日一日を丁寧に過ごしていくことの大切さを思い出すために。
 
 
 
 
***
 
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