デパートコスメは全ての女性の武器
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:張川裕稀(ライティング・ゼミ10月コース)
※この記事はフィクションです。
「気になる商品がございましたらご案内しますね」
綺麗なメイクを施した30代の女性が、私に向かって微笑む。
その輝かしい笑顔を見ていつものように「は、はい……」と呟く。
私はここにいていいのかな……。
美しい女性が目の前に現れた途端、俯いてしまった。
目線の先には鏡があり、綺麗な女性とは対照的で自信のなさそうな女子大生の顔が映っていた。
ここは駅前にある大きなデパートの1階。
そしてありとあらゆる化粧品のカウンターが並んでいる。
CHANEL、Dior、Laura Mercier、ADDICTION、LUNASOL……。
フロア全体が何故か明るく感じられるし、並べられている化粧品はその辺のドラッグストアで手に入るものとは全く違う。
パッケージの高級感や粉質、香りや色味、そしてお値段も。
こういうデパートのカウンターで販売されている化粧品を「デパートコスメ」、略して「デパコス」と女子の間では呼ばれている。
女子大生の私には、勇気を出さないと化粧品フロアに立ち入れないし、いつも化粧品を眺めるだけでなかなか店員さんに声をかけて購入することはできなかった。
私みたいな芋っぽい女子が、こんなキラキラしている化粧品を買ってもいいのか不安だった。
いつも店員さんが「何かありましたらお声掛けくださいね」と微笑んでくれるのだが、「あんたみたいな芋がくるところじゃないのよ」と心の中で言ってるんじゃないかと勘繰ってしまう。
大学の男子は「デパートの1階の化粧品がたくさんあるフロア? あそこさ、なんか匂いキツいし、店員さんは気が強そうな人ばっかりだし、お客さんで来てる女の人もみんなガメツそうだよな」って言っていたのだが、男子は全然分かってない。
デパコスは女性の夢が詰まっている。
持っているだけで、自分に自信がつきそうなパッケージ。いい女にランクアップさせてくれそうな香り。見つめるだけでドキドキするラメの質感。ピンク色のアイシャドウだって、ナチュラルな自分を演出できる淡いピンクから、ちょっと攻めた気分にさせてくれるワイン色に近いピンクまである。
一度買ってみたい。そしてデパコスで自信をつけたい。
ずっとそう思っていたのだが、なかなか店員さんに声をかけられなかった。
でも今日は、絶対に店員さんに声をかけたい理由がある。
それは、柴田くんとの映画デートが来週末に迫っているからだ。
同じゼミでずっと気になっていた柴田くんと、この前ゼミ発表の打ち合わせのためにLINEを交換できた。授業の話から始まってだんだんLINEが盛り上がってきて、今度2人で気になってた映画を見に行けることになったのだ。
約束ができた時、ベッドの上で「キャー!」と叫びながら、ゴロゴロ転がって大興奮してしまった。
そして枕の上に顔を埋めて「絶対にかわいいって思われたい。だからデパコスを買うんだ!!」と神様に誓ったのだ。
「すみません! この01番のアイシャドウ、試してみたいんですけど……」
店員さんに向かって叫ぶように声をかけた。
先ほど声をかけてくれた店員さんがクルッと振り向いて「はい! でしたらこちらのミラーの前に腰掛けていただけますか?」と、あの美しい笑顔で微笑んだ。
眩しいライトが付いたミラーの前に大人しく座る。
化粧品が洋服につかないようにケープを付けてくれる。
「もしよかったらおすすめのベースメイクもご紹介したいので、今のお化粧を落としてフルメイクでご案内しても良いでしょうか?」
ラッキー! 化粧下地やファンデーションも試させてくれるらしい。
化粧を全て落とし、店員さんが化粧下地を私の頬へ塗り始める。
「下地は手でつけてもいいんですけど、その後にスポンジで馴染ませるとその後に塗るファンデーションの仕上がりが良くなります」
「自然でふんわりとした肌質に見せたければ、パウダーファンデーションがオススメです」
「このアイシャドウのここの一番濃い色を、こうやって目尻から5mmくらいはみ出すように塗ると、大人っぽくなるんですよ」
「最後にこのラメを黒目の下のこの辺りに仕込むと、泣いた後みたいで守りたくなる女の子になりますよ」
こういうデパートのカウンターでは、化粧品をお試しさせてくれるだけじゃなくて、より綺麗に見せるためのテクニックも教えてくれるみたいだ。
店員さんは、あれよあれよと私を美しく着飾らせてくれる。
そして全てのメイクが終わってから、鏡を見てびっくりした。
だって鏡の中にいたのは、今まで見たことがない私だったから。
肌はマシュマロみたいにふわふわしてて、目がいつもより大きく見えるし、瞬きするたびに輝くラメは宝石みたいだった。
「うん! かわいいですね! 肌荒れも全然ないですし、色々覚えたらすぐに綺麗になれますよ」
店員さんの言葉で、私は舞い上がってしまった。
そして下地、ファンデーション、アイシャドウの3つで2万円近いお会計も、サラッと終わらせてしまった。
家に帰ってコスメを箱から取り出す。
その瞬間、大人の女の階段を登ってしまったような気分になった。
そして柴田くんとのデートが上手くいくような気がしてきた。
だって私、デパコスのおかげで今までよりもかわいくなれるんだもん。
デート当日、何回も練習した通りにデパコスを使ってメイクをする。
それから今日のために買った洋服を着て、家を出る。
電車の隣に座る人、すれ違う人、待ち合わせ場所で目の前を通る人。
綺麗な女性やかっこいい男性がいると、いつもの私なら俯いてしまっていた。
でも今日は違う。
胸を張って前を見て歩ける。
私だって負けないよ。
だって、私の今日の肌もまぶたもぜーんぶデパコスで作られてるんだもん。
待ち合わせ場所に現れた柴田くんは今日もかっこよかった。
それだけで幸せなのに、会ってすぐに「あれ、なんか今日いつもと雰囲気違っていいね!」って褒められてしまった。
その瞬間、柴田くんを置いて走り出したいくらい嬉しかったのだが、そんな衝動を抑えて「ありがとう」と返す。
デパートの化粧品フロアにいる女性がみんな自信たっぷりな理由がわかった。
デパコスは女性の自信をつけてくれる。
綺麗になりたい、いつもと違う自分になりたい、次の仕事を成功させたい。
色々な願いを持った女性が、そのフロアに集まり自信を付けて夢を叶えていく。
あぁ、もうデパコスの虜になってしまったかも。
映画館へ向かう時、大きなクリスマスツリーに出くわした。
真っ白でキラキラした飾りが付いたクリスマスツリー。
「このツリーデカすぎでしょ」と柴田くんが私に向かって笑う。
「でもすごく綺麗だよね」
そう言って柴田くんの目を見つめる。
もう今までの私とは違う。
絶対に今日のデートを楽しく過ごして、12月24日も柴田くんと一緒にいたい。
柴田くんを見つめながら、そう願う私だった。
***
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