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バレーボールに戦いを挑むとこうなる


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鏡味義明(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「俺とバレーボール、どっちが大事なの?」
 
19年前の冬の夕方、うどん屋のお座敷席。囲炉裏がある落ち着いた雰囲気のお店で僕は、彼女に不思議な問いを投げかけていた。
 
「そんなの、比べられないよ。わかんない」
 
「そりゃそうだよね」
 
しばらくの沈黙。もう耐えられない何か言わなきゃと思った時、ちょうど運び込まれてきた味噌煮込みうどんを、ふたり無言で食べた。
 
当時僕は26歳。彼女とはもう、6年半の付き合いだった。中学時代の同級生だった彼女とは、成人式で再会し意気投合。とにかく明るくて馬鹿な事も何でも言い合える、そんな関係が心地よく、大学時代も社会人になってからもずっと楽しくやってきた。これがずっと続いていくんだろうな、と思っていた。
 
僕は、彼女がやりたいと言ったことを、叶えてあげるのが好きだった。マニュアル車のスポーツカーに乗りたいと言えば一緒に車探しをしたり、パソコンが使えるようになりたいと言えば、彼女が好みそうな見た目のパソコンを探し、一緒に買いに行き、使い方を教えた。
 
ある日彼女はバレーボールがしたい、遊びじゃなく試合ができるようなチームに入りたいと言い出した。学生時代部活に真剣に打ち込んでいたことを知っていた僕は、地元に新しくできたバレーポールサークルのホームページを見つけ、教えてあげた。彼女は喜び、そのサークルに通うようになった。
 
僕も彼女もお互い働いていたので、会える日は週末。バレーボールサークルも週末に練習があったので、練習がある日は必然的に会えなくなった。しばらく通っていると、彼女もサークルの幹部になり、打合せという事で練習日以外もサークル活動をすることが増えていった。僕と会う頻度は毎週だったものが隔週、月に1回と減っていき、最初は応援していた僕も会えないことにだんだん不満がたまっていった。
 
そして何とか連絡をつけて呼び出した地元のうどん屋。そこで冒頭のやり取りになるわけだ。その一件以降、彼女とはますます連絡が取れなくなり、電話どころかメールのやり取りすらも途切れがちになっていた。
 
また更に時が経ち、やっと約束を取り付け会うことになった地元のコメダ珈琲店。喜ぶ僕とは対象に、久しぶりに会う彼女は口数も少なく、居心地が悪そうだった。
 
コーヒーを挟んで、苦い空気が漂う。
 
「じゃあ、ここからどこ行こっか」
 
場所を変えて何とか楽しい雰囲気にしたい、僕のその言葉を遮るように
 
「もう帰るね」
 
彼女は言った。
 
「このあとサークルがあって、副部長が迎えに来てくれてるから」
 
「え? あ、そうなのね。じゃあまた……」
 
困惑する僕と冷めたコーヒーを残し、彼女は帰っていった。
 
以降、僕から何度連絡しても、彼女からの返事は来なかった。
そして数か月後、僕のケータイに、メールが届いた。
 
「いろいろ考えたけど、バレーボールを頑張りたい。別れましょう」
 
もっとたくさんの事が書いてあったと思うけれど、全く頭に入ってこなかった。仕事のお昼休みにそれを見て、午後は何も手につかなかった。
 
この数か月の状況で、こういう結果になることは予想がついていたが、実際なってみると相当ショックだった。食欲がなくなり、夜はコンビニのサラダしか食べられなかった。体重も7キロ痩せた。
 
実は初めての大きな失恋で、なぜ別れることになったのか頭の中で正しく認識できていなかったのかもしれない。僕はバレーボールに負けたとばかり思っていた。当時はテレビでバレーボール世界大会が大盛り上がりで放映されており、自分にとっては完全な嫌がらせだと思っていたし、何なら、大会マスコットのバボちゃんも嫌いだった。
 
でも、それは違った。
 
翌年のお正月、彼女から年賀状が届いた。そこには披露宴の写真が写っており、知らない男性と、幸せそうにグラスタワーにシャンパンを注いでいた。
 
そしてそこに手書きのコメントで「副部長と結婚しました」と書いてあった。
 
なんだ、そういう事だったのか。
 
バレーボールに負けたんじゃない。ただ彼女に好きな人ができ、振られただけだった。
 
今考えれば至極当然のことであるが、その年賀状で一気にモヤモヤが晴れた。と同時に、一連の深刻だった出来事がなんだか急に可笑しく思えて、笑える出来事に変化した。今では、文章にして発表できてしまうくらいのものになった。
 
6年半、ずっと続くと思っていた関係も、ふとしたことで途切れてしまう。きっかけは、どこに転がっているか分からない。そしてその出来事は、捉え方次第でどうにだって変化するものなのだ。それは、オセロゲームのように。
 
そして、バレーボールに罪はない。ごめん、バボちゃん。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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