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メディアグランプリ

ペンギンの要望に応えて冒険してみたら、「黒服」の正体が分かった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯田 裕子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
「なに書こうかな」
私がブツブツ言っていたら、隣で夫(あだながペンギン)が
「『黒服の違和感』について調べて書いておくれよ」
と言ってきた。
 
彼は、行きつけの喫茶店によく来る、「オール黒ずくめ」の女性の一団が不思議でならないのだ。自分で調べろよ、とも思うのだが、私の次に原稿を読んでくれる読者になってくれているので、頼みを無碍にもできない。
 
ただ、言われてみれば確かに知りたい気持ちも分かる。彼女たちに会うのはだいたい土曜日の朝。ほぼ毎週示し合わせて集団でやって来ては、楽しそうに話していく。全員が黒服、ということ以外は、とりたてておかしいところはないのだが、やっぱり黒服で集団でいらっしゃると、ちょっと驚く感じもなくはない。黒服は、たいがいは冠婚葬祭、それも「葬」で着るイメージがあるので、毎週着るものでもないだろう。醸し出している明るい雰囲気からすれば、葬儀屋さんというわけでもないようだ。ますます違和感。
 
「あら。時間だわ」「あら、ほんと! 大変!」
 
喫茶店を出ていくのは、だいたいキリのいい00分や30分の15分前と決まってもいる。どこかへ行く前にコーヒーを飲んでいくようだ。注文したものがすぐに出て来ないとひどく慌てている。これがキリのいい時間の10分前などになった日には、ドアを閉めるのもそこそこに、どこかにみんなで走り去る……。
 
黒服が制服のようでもあったので、私は、彼女たちはプロのベビー・シッターになろうとしている人たちで、講習を受けにきているのではないか、と勝手に予想を立てていた。時々漏れ聞こえる言葉の中に「講義」「習い事」という単語があったからだ。きちんとした格好をして、土曜日も勉強しているなんてすごい!
 
ただ、今回、夫の要望に応じてみようかと思い……
先日、ちょうど帰りが同じ時刻になったので、失礼とは思いながらも、さりげなく、行き先を確認してしまった。黒服の集団なので、よく目立つ。探偵出発!
 
追跡が後ろめたくなる前に、ほどなく目的地に到着した。
 
目の前の茶色の建物からは、子どもの歌声が聞こえてきた。リズムをとるようなリズミカルな手拍子も。そして、その建物の外には、喫茶店の女性たちと同じく黒服の女性や、スーツ姿の男性が大勢列を作っていた。喫茶店の彼女たちも、その列の後ろに並んだ。もう少しよく見ると、そこには、白シャツにサスペンダー付きの紺の半ズボンをはいた男の子を連れた方も並んでいるのが分かった。並んでいる方の中には、「○○グループ、男子」や「××グループ、女子」という名札を付けている方もいた。
 
あれ? 普通、ベビー・シッターの教室には、子連れでは来ないよね……。子どもがいる家庭へ行くんだものね……。それに、なんで「女子」とか「男子」とかいう名札を付けているんだろう? ベビー・シッターって、女子専門とか男子専門なんてないよね……。
 
一瞬わけが分からなくなって、しばらくしてから、やっと理解した。
 
そうか! 「お受験」なんだ!
 
話にはよく聞くのだけれど、塾通いをしているお受験の方たちを間近で見たのは初めてだったので、正直驚いた。名古屋にも名門幼稚園や名門小学校はいくつかあるから、そのお受験のための準備なのだろう。
 
それが分かってから、ちょっと気の毒になってしまった。黒い服は、明らかに、塾で指導されているもののようだ(後で分かった。黒く見えるが、全員濃紺の服だそうだ)。親子面談の準備と思われる。「子どもの」受験なのに、親も指導を受けに来ている。受験は、誰の意志で始まったにしても、本来は本人のもののはず。でも、本人があまりに小さいと、ご両親の立ち居振る舞いも、子どもの将来を予測する判断基準の一つになってしまうのか。それも分からなくもないけれど、本来は違う人格なのだから、子どもにしてみたら、親で自分が品定めされたことが後で分かった時、きっと面白くないだろうな。
 
そういう私も、大昔に幼稚園受験をしたらしい。小学校の制服が可愛らしかったので、それを着させたいという理由が大きかったらしい。後から聞いた話では、受験の順番を決めるくじをひくために、朝早くから並んでくれたらしい。でも、私の場合は、親の面談はなかった。先生と私(まあ母親は後ろにいてくれたのだろうけれど、黒服なんて着させられていないと思う)の面談はあったらしい。私の母は、試験だと聞いて萎縮したら本来のふるまいが出来ないだろうからと、試験だと一切言わず、ちょっと変わったところへ遊びに行くと言ったそうだ。その日、私は、いつもどおりに元気に挨拶できたようだ。積み木遊びも知能テストも、試験だと知らない私には遊びと一緒で、その日はいつもと違うことをしてとても楽しかった記憶しかない。それはそれで、なんと能天気! 大昔だからこれでも良かったということか。私も、別に両親を見られても、何の問題もないとは思うけれど、でも、幼稚園に通うのは私。親じゃない!
 
 
その日の夜、彼女たちの正体を夫に話すと、夫は、
 
「へえー、お受験かー! お母さんって大変だねえ。僕は母親じゃなくてよかったな」
 
おいおい! 親子面談には父親も行くんだぞ。そんなことでどうする! 父親も責任持てよ!
 
 
こんなことがあってから2週間。ここ最近、彼女たちをぱったりと見かけなくなった。さては、「お受験」も佳境らしい。もう喫茶店でおしゃべりをする余裕はないよね。
 
小さな喫茶店には静寂が訪れたのだけれど、彼女たちの元気な姿が見られなくなったのもちょっと寂しい……。頑張ってくださいね!
 
 
 
 
***
 
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2021-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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