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「「=」への誤解に対する嘆き」に対する嘆き

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鶴聡太郎(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「この単語、本来はこういう意味じゃないんだけどな……」
なんて思ったことはないだろうか。学んだ分野の専門用語が間違った意味で使われていると、その指摘が野暮なものであるのは理解しつつも、なんとも残念な気持ちになる。その間違いが広く使われていると尚更だ。私の場合、その最たる例が「=」という記号である。
 
この二重線の記号「=」は「等しい」という意味を持つ数学の記号だ。数学的には、プリンキピア・マテマティカの定義を自然言語的に解釈すれば、「二項関係x=yは、任意の集合Uに対して、xがUに含まれるならば、yがUに含まれる」と定義される。要するにxとyは全く同じということだ。
 
ここまで読んだあなたが言いたいことはわかる。
「いやいや、「=」の定義なんてわざわざ言われなくても知っているよ。小学生でも知っていることだ。そんな難しい数学的な話をしないでくれ」と。
しかしながら、多くの人がこの記号を本来の意味を超えて使っているのである。
 
先に述べたように、「=」という記号には等しいという意味があるが、それ以外の意味は持っていない。そして、この「等しい」であるが、言い換えると「=」の右側と左側が全く同じということだ。これを踏まえると、正しく「=」を使えている例は次のようなものである。
 
1+1=2
パン=小麦粉を主材料とし、これに水とイーストなどを加えてからこね、発酵させてから焼き上げた食品
 
対して、間違った「=」の使用例を以下に示す。
 
小麦粉+イースト=パン
 
これの何が間違っているのか。「+」という記号が意味するところが何かによって変わってくるので、一概にはいえないのだが、この記号が「加える」を意味するものだとすると、どう考えても小麦粉にイーストを加えただけではそれはパンにはならない。水を加える必要があるし、こねたり、発酵させたり、焼いたりといった工程を経ないとパンはできあがらない。とすると、小麦粉にイーストを加えたものとパンは「全く同じもの」ではない。この意味ではこの用法は間違っていると言える。
 
そう、「=」という記号は完全に同じもの同士の関係にしか使えない記号なのである。
このことはよく「「=」には=以上の意味はない」と表現される。数学好きにとっては、なぞなぞやビジネス書などでこれが守られていないととても気持ちが悪く感じる。私もその一人だが、やはりこういうのを見ると、数学記号を本来とは異なる意味合いで使われていることに対して悲しい気分になる。そんな彼らを満足させるには、変化するというような意味合いで、矢印記号を使うと良いだろう。例えば、
 
小麦粉+イースト→パン
 
 
といった具合だ。別に使う記号は本質ではないので好きな記号を使えば良いと思うが、「=」記号を使いたい場合は、それで結ばれる右と左が本当に全く同じなのかをよく考えないといけない。もし、「=」記号がさまざまな場面で間違って使われていると、数学の世界でも誤った意味合いで使われてしまうかもしれないという危険がある。特に初学者にとっては、この誤解は後々になって致命的な誤りに繋がる可能性がある。
 
ここまで読んだあなたは、きっとこう思うはずだ。
「面倒臭いなぁ。そんなこといちいち考えてられないよ。だいたい自分が使う時は数学は関係がないし」
もっともである。そもそも数学が関係していない多くの場面で「=」記号を使う場合は、その右と左が完全に同じであるかどうかというのは本質でない場合が多いだろう。基本的には式の形で表現することで、主張を簡潔で、そして親しみやすい形にすることが目的なのではないかと思う。そう考えると、主張をわかりやすくしたいだけなのに数学的にはどうこうと横槍を入れられるのは単純にウザいのではないか。少なくとも自分がその立場だったらそう思うだろう。
 
こういうところが、ステレオタイプな文系が理系を怖がったり避けたりする理由の一つなのではないかと思ってしまう。そんな本質でない部分に囚われ続けていても何の価値も産まないし、多くの場合でこの線が2本の記号の意味を適切に読み替えることもできるだろう。
 
数学というのは他にないくらい厳密さを重んじる学問である。だからそれを学び、愛する人にとっては数学の厳密さが損なわれるというのは由々しき事態である。特によく使う「=」という記号であれば尚更だ。だからこそ、それが間違って使われているのにはモヤっとするし、それのせいで数学の理解が妨げられるのはとても悲しい。他方で、全ての人がそれについてずっと考えるわけにもいかないし、それを修正したところで、その人の主張には影響しないことも多いだろう。そのような場合、厳密さのために他の表現を探すよりも、わかりやすく「=」記号を使ってしまった方がコストが低いということはよくあることだろう。両者が不必要に対立しないためにも、折衷案が必要だ。
 
ところで、ヒルベルトという数学者は、記号そのものではなくそれによって作られる関係性に本質がある、と主張した。
なので、別に「等しい」という意味を必ず「=」を使って表現しなければならないということはない。逆に、「=」が必ずしも「等しい」を意味する必要もない。(誤解を生む可能性はあるが)
とすれば、「等しい」ではない「=」に出会ったときは、どう「=」を定義すればその関係性が成立するのかを考えてみると楽しいのではないだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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