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メディアグランプリ

”せっかく”との付き合い方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:尾治(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
好意を素直に受け取るのが難しいという場面は、自我を持って数十年ある人なら誰しもあるのではないだろうか。
私の場合は、”せっかく”を押し付けられたときだった。
『せっかく○○してあげたのに!』
私のことを思って〇〇をしてくれたが、的外れだと感じる場面である。好物でもないもの作られたり、欲しいと言っていないものを買ってこられたり。〇〇に入ることは多種多様だ。
『そんなん頼んでないし!』
理科で習った作用反作用のように、“せっかく”と言われるとつい突っぱねてしまったこと、ありませんか。
 
私がケツの青い19歳だった頃、この”せっかく”の愛をうまく受け取れずにいた。
『お前が勝手にやったことを受け入れなかったら怒るって何? イミフ』
岩も三枚におろす鋭さを持った、ひねくれ者で未熟な人間だった。
そんな私にも、当時付き合っている人がいた。あまり自分の感情を語らない、寡黙で優しくて聞き上手な人。おしゃべりマシンガンだった私にはこれ以上にない相手であったし、私は彼が大好きで、恥ずかしいくらいメロメロだった。人間性激ヤバの私のどこが好かれたのか、語るには紙幅が足りないので割愛するが、そんな人がいたのだ。
 
ある日の放課後、図書館で二人勉強しているとバケツをひっくり返したような夕立に見舞われた。そろそろ帰ろうかと話していた矢先だった。恋人は車で通学していたので、送っていくよ、と言ってくれたが、傘もなしに駐車場まで走っていったら、二匹ともぬれねずみになってしまう。どうしたもんかと悩んでいたら、『車に傘が積んであるから取ってくるよ』と恋人が言った。止むまで待とうと言ったが彼は駆け出し、案の定、全身ぐっしょりにして戻ってきたのだ。
一匹の犠牲を払った私たちは車に乗り、私の家まで送ってもらった。
車内の居心地は悪かった。私を濡らさないために傘を取りに行った恋人が、隣で髪から雫を落とし、びしょびしょの服のまま運転しているのだ。私が嫌な奴みたいじゃないか、待とうって言ったのに。自分の気持ちと裏腹な相手の行動に、もやもやしていた。
家につき、車から降りて彼の車が出ていくのを見送るとき。
「風邪、引かないでね。私のせいで、とかやだし。傘とってきてとか言ってないし」
可愛げがなさすぎる私の一言に、普段だったら「ああ」とか「うん」とかしか言わない彼が、まっすぐ私を見てはっきりと言った。
「そういうときは、“ありがとう”って言ってくれたら嬉しい。せっかく濡れなかったんだから」
自分の意見をはっきり言わない彼の、力強い言葉が私の胸を貫いた。
今でこそ思えば、いやいや、若気の至り、これもエゴな優しさの押し付けじゃん、という出来事なのだが、『ああ、この人は、私が濡れなかったら喜んでくれると思っていて、それを実行してくれただけなんだ。それがこの人にとっての愛なんだ。』と思ったのだ。”大好きな人”はひねくれ者にも効果てき面だった。
 
それから私は、人からの”せっかく”の好意とうまく付き合えるようになった。この出来事は自分と人の価値観と愛について考える大きなきっかけになったと思う。
 
せっかく、という言葉の本質を考えると、”困難なこと”、”稀なこと”ではないだろうか。
せっかくの旅行だから特別なものを食べよう。せっかく勉強したのにテストができなかった。
こんな使い方もできる言葉である。つまり、『せっかく〇〇してあげたのに』の“せっかく”というのは、『私(行為者)にとってはとても困難なこと、稀なことはあなたにとっても同じことだから、代わりにやってあげた。私がやってもらって嬉しいことは、あなたもやってもらったら嬉しいでしょ?だからありがたいはずだ』という意図が含まれていると考える。
そして、困難なこと、稀なこと、というのは、行為者の価値観から判断される。毎週末旅行に出かけるような人は、”せっかくの旅行”とは言わないだろう。旅行は珍しいことではないのだから。
相手が“せっかく”と思うことは、その人にとっての大事な価値観の一つなわけで、それを頭から拒否するのはあまりにコミュニケーションを放棄していると私は学んだ。
 
困難を乗り越えてでもやってあげたい、相手にしてあげたい。この感情は大変尊いもので、素晴らしい愛だ。自分と相手を同一視してしまうほど、自分の半身になってしまうほど、深く想っているからこそ出る言葉ではなかろうか。
だから私は、”せっかく”でラッピングされた好意を押し付けられたとしても、まずは受け取ることにしている。私を想ってくれてありがとう、というように。そのあと、『でも、私はあなたとは違う人間だから、これをしてもらってもあなたと同じようには喜べないな』と伝えている。
人間同士だから価値観が違うのは当たり前だ。でも、時々それを忘れてしまう。なぜ、その言葉が発せられるのか、話している人の意図を考え、自分の価値観を伝える丁寧なコミュニケーションを図ることで、我々はもっとお互いを想い合うことができると私は思うのだ。
 
 
 
 
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2022-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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