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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:園田 美穂(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
『ボーンボーン』懐かしい時計の音が響く。
 
「美穂、何歳になったんだっけ?」
 
先輩に会うのはいつぶりだろう。相変わらず、大きな古時計のあるこのカフェを指定してくる。あの時と変わらない様子にほっとしたのも束の間、私の顔を見るなりこんなことを言う。
 
「2月で31歳になりましたよ〜」
 
「おーもうそんな歳か。結婚は考えてる?」
 
始まった。30代=結婚方程式。
 
「ん〜もう少し先ですね」
 
「え! そうなの? 仕事はどう?」
 
「今、ベビーシッターやってますよ」
 
「正社員?」
 
お決まりのセリフ。
 
30代になった途端、まるで進路の決まっていない受験生かのような扱いが始まる。けれど私は、自分の人生設計をしっかり立てているつもりだ。働き方や結婚、子どもの時期だって自分が一番よく考えている。でもみんな、口を揃えてこう言うんだ。「大丈夫?」30代。世間の風は冷たい。
 
そもそも人の基準値というものは、一体どこに合わせられているのだろうか。そんなことを考えていると、ある面白い出来事を思い出した。
 
日差しが眩しい昼下がり。ツクツクボウシの声を聞きながら、いつも通っているネイルサロンに向かっていた。
 
「今日はこの色にしたいです」
 
そう言って見せた、少しくすんだオレンジ色の画像。
 
たわいもない会話をしながら、ふと爪に乗せられていく色に、視線を落とした。『あれ、なんか違う』
 
「あ、すみません! 少し明るめの色がいいです」
 
「分かった! 色作り直してみるね」
 
……新しい色。なんだかしっくりこない。
 
「もう少し、明るくできますか?」
 
色を調合していくが、やっぱり少し違う気がする。こんなにも伝わらないものなのか?
 
「この色はどう?」
 
「ん〜」
 
このあたりから、少し気まずい雰囲気が出てくる。いつも言えない私にしては、今日は結構な注文をつけた。もうこの色で手を打とうか。いや、でもこの納得していない色で1ヶ月過ごすのか。ネイルでかなりモチベーションが変わってくる。いいのか? 妥協したこの色で本当にいいのか?
 
「あ!もしかして!」
 
その声で我に返る。
 
「ねえ、美穂ちゃん。この色何色に見えてる?」
 
「え?オレンジですよね?」
 
「あーーーやっぱそうよねー!! ごめんごめん勘違いしてた! 私にはこの色、茶色に見えるんよ。そりゃあ合わないはずだわ。オレンジに寄せて色作り直すね」
 
そう言って作り直してくれた色は、私が見ていたあのくすんだオレンジ色だ。やっと理想の色味になり、私は上機嫌で帰ることが出来た。
 
そしてその夜、紹介された男性とお茶をした。共通の友人から『話が合うと思う
から』と聞いていたので、少し期待していた。けれど、待ち合わせに来た男性はイメージとかなり違っていた。想定していたシナリオと全く違う展開に、「ご趣味はなんですか?」とまるで定型文のような質問しかできなかった。
 
「僕、イベントが好きなんですよ」
 
(やっぱりテンション高い系男子か。無理だな。)
 
「へぇ〜。そうなんですね。ワイワイするのがお好きなんですか?」
 
「いえ、騒がしいところはそんなに得意な方じゃなくて。僕、主催をするのが好きで」
 
「あ! 主催されてるんですか?」
 
「主催と言っても、ほんと小さな規模なんですけどね。そこで出会った人たちが友達になったり、仕事に繋がったり。この前なんか、『お陰様でこのイベントで出会った方と結婚することになりました』なんてメールを頂いて。なんだか心の奥の方がじわ〜って温かくなったんですよ。あ〜やっててよかったな〜って」
 
人間味溢れる予想外の返答に、いつの間にか、のめり込むように聞き入っていた。少しでも否定していた自分が恥ずかしい。あんなに合わないと決めつけていたにも関わらず、もはやこの人のことが気になっている。そんなことを思いながら、あっという間に楽しい時間は過ぎて行った。
 
 
今までの人生を振り返ると、同じような場面はたくさんあったのではないかと気付き、ハッとする。30代になった途端に意識させられる『結婚、子ども、仕事』私はこれにうんざりしていた。けれど、自分も同じような行為を無意識にやってきていたのではないか。自分の基準というものに合わせ『普通はこう。あなたとは合わない、間違っている』と。
 
同じものを見ていていても、相手は違う形を見ているかもしれない。同じ言葉を使っていても、違う意味で言っている可能性もある。自分の見ているものが全てだと思い込み、相手の価値観に触れなかったら、私たちは『合わない人』になるだろう。
 
あなたは、こんな経験をしたことはないだろうか。
 
「今日の映画、めっちゃ感動したー。 泣き過ぎて明日目腫れちゃいそう」
 
「え、そんな泣くシーンあった? つまらなくて途中寝てたわ」
 
この時あなたは、どのような対応をしているだろか? もしこの映画が恋愛ものだったとすれば、昨日失恋をした人にとっては切ないものに変化する。 同じ映画を見ていても、それぞれの人生や状況によって感じ方は変わってくるのではないだろうか。
 
自分と違う価値観が現れた時は決めつけずに、もう一歩踏み込み『なぜ、あなたはそうなのか』と、相手の持っているその理由に触れてみると、また人間関係は面白くなっていきそうな気がしている。
 
 
『ボーンボーン』
 
聞こえてくる時計の音で、我に返る。
 
「おーい美穂! 聞いてる?」
 
「はい! 聞いてますよ。ところで先輩は……」
 
 
 
 
***
 
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2022-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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