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メディアグランプリ

自信や威厳のない、あなたへ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:スズキ ヤスヒロ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「本部長、いないんだ。じゃ、これ渡しといて」
大手コンピュータ会社の、精悍な若い部長は、受付のテーブルの上に、名刺を放り投げ、去っていった。
講演会の受付をしていた私は、名刺を拾い上げ、名前を参加者名簿に書き込んだ。
 
ほどなく、重役たちにアテンドされて、招待講演者の米国の医療系政府機関のトップ、ジョーンズ博士が現れた。
受付は、私と女子社員の2名。緊張して、立ち上がり、お辞儀をする。
女子社員が、講演者の胸にコサージュをつけた。
 
大柄。金髪。紺のスーツに赤のネクタイ。
トランプ元大統領のような、パワフルさ、が全身から滲みでている。
「今日は、よろしくお願いします」
人懐こい笑顔で、挨拶してくれた。
「これが、今日のスライド。2台分あるから、よろしくね」
彼の秘書さんに、スライドのカートリッジを渡された。
 
みなさんは「スライド」を知っているだろうか?
少し前まで、パワーポイントのような、プレゼンテーション用のアプリなどなかった。
スライドとは、プレゼンテーション資料を1枚づつ撮影し、切手サイズぐらいのカラーフィルムにしたものだ。それをスライド映写機でスクリーンに映し出していた。
映写機にはリモコンのボタンがついていて、ボタンを押すと、次のスライドに切り替わっていく。
 
預かったスライドが入ったカートリッジから、順序を間違えないように、銃に銃弾を込めていくように、1枚ずつ慎重に映写機についているカートリッジへ装填していく。
講演開始まで10分しかないので、かなり焦った。
スライドをきちんと装填できていないと、プリンターで紙詰まりをするように、スライドが映写機のなかで詰まってしまう。けっこう注意深く装填しても、けっこうスライドが詰まってしまうことがある。
 
冷や汗をかきながら、なんとか、講演開始までになんとか、すべてのスライドを装填した。
ほっと、する間もなく、講演がはじまった。
 
講演にあわせて、2台のスライドのリモコンを操作して、スライドを切り替えていかないといけない。
 
全身を耳にして、
「次のスライド」
という言葉を待つ。
その言葉をキッカケとして、交互にスライドを入れ替えていく。
緊張で、口がカラカラになり、手が汗でベトベトしてくる。
 
「では、次のスライドお願いします」
リモコンのボタンを押すと、スライドが引っかかる機械音がする。
スライドが詰まってしまった。
スクリーンにはなにも映し出されず、真っ暗なままだ。
慌てて、スライド映写機を調べると、スライドが機械の奥で詰まってしまっている。
 
顔面蒼白、冷や汗が止まらない。
どうやっても、詰まったスライドが外せない。
一番前の列に陣取っている、お偉方がみな、自分を睨んでいる。
「おい、さっさとなんとかしろ!」
名刺を投げてよこした、若い部長が小声で怒鳴っている。
 
彼は笑顔のままで、真っ暗なスクリーンをポインターで指しながら、まったく平然と講演を続けている。
 
「次のスライドをお願いします」
スライド詰まりを起こしていない、映写機のスライドを切り替える。
 
2台の映写機のスライドを交互に使って講演するように組み立てられていたので、1台がまったく動かなくなるのは、致命的だ。
だが、彼はまったく問題なく、講演を続けていく。
結局、そのまま講演が終わってしまった。
 
ドライバーをつかって、映写機の裏ぶたをこじ開けて、詰まっていたスライドを取り出した。
 
彼は、たくさんの聴衆に囲まれ、挨拶をうけていた。
「どう、お詫びをしたものか」
顔面蒼白で、人垣の後ろに突っ立っていた。
「ありがとう! お世話になったね!」
人垣の向こうから彼が満面の笑顔で声をかけてくれている。
「ジョーンズ博士、本日は大変申し訳ありませんでした」
深々とお辞儀をした。
アテンドしている重役も、平身低頭、お詫びをしている。
 
彼は、それをまったく無視するかのように、周囲に聞かせるような大きな声で、
「今日は、彼がとてもクレバーに対応してくれた。助かった。本当にありがとう!」
感謝の言葉をもらった、
驚いた。
床につくぐらいまで、頭を下げた。
頭を上げると、満面の笑顔の彼が、サムアップしてくれた。
 
秘書さんに、スライドを返した。
「大変、申し訳ありませんでした」
「え、何が?」
「いえ、スライドが詰まってしまいまして……」
「博士も言っていたでしょ。スライド詰まりはよくあること。あなたが冷静に対応してくれて助かったわ。おつかれさま」
笑顔だった。
 
博士は教えてくれた、自信や威厳は、自分でつくるものではない、ことを。
彼は、威張らない。
威張る必要などないからだ。
彼は、ただ言葉や態度、他人に対する気持ち、に対して真摯なんだろう。
 
自信があるようにみせようとしても、
威厳があるようにみせようとしても、
どんなに頑張って、みせよう、としても、それは無理だ。
 
自信や威厳はアクセサリーのように、とって付けられるものではない。
どのように、生きているか。
生き方を鏡で写すように、自信や威厳は、滲み出てくる。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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