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「本当は温泉で泳ぎたい大人」が大浴場を独り占めして泳ぐ方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯塚 真由美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
大人になってから温泉旅館の大浴場で泳いだことはあるだろうか?
もっぱら泳ぎたい子供を注意する側に回ることがほとんどだと思う。
でも本当は大人だって泳ぎたいんじゃないか? 泳いで良いなら、大きなお風呂で温かいお湯をかいて進んでみたいのではないか?
私はやってみたい。ただし、他に誰もいなければ。
先日「300人も入れる温泉大浴場を独り占めして泳ぐ」という難題を実現することができた。どうやったのかを皆さんにもお伝えしたい。
 
大浴場が今回のホテル選びの決め手だった。ただただ、広々としたお風呂に入ってのんびりしたかった。広ければ広いほど良い、と探していたらすごい宿を見つけた。300人が一度に入れる大浴場、なんて書いてある。どれだけ広いのか想像がつかなかった。ここに泊まって自分の目で確かめてみたくなった。
広々とした大浴場の写真をスクロールしつつ、ふと思ってしまったのだ。このお風呂で泳いでみたいと。
 
チェックインの時間になると、長い列ができるほどお客さんが沢山いた。300人が入れる大浴場を作るくらいだから当然なのだが、大型ホテルなのだ。
列で待ちながら、あるお知らせ看板の写真を撮った。それは夕食バイキング営業時間のご案内だった。そもそも私は食事無しで予約したので、ホテルで食事をする予定は無い。地元の魚屋さんで買ってきた地魚刺し身盛り合わせを持ち込み、部屋で一杯やろうと企んでいた。
ではなぜ夕食時間を忘れないように写真を撮ったのか?
 
大浴場で泳ぐというミッションのためには、最重要な情報なのだ。つまり、他の皆が夕食を食べている間に大浴場に行けば、空いていることが期待できる。
 
部屋に入って浴衣に着替え、まずはいそいそと大浴場に行ってみる。下見だ。
今までの人生で見た最大級の大浴場だった。ローマ風呂と名付けられていて、古代の遺跡で見るような白い列柱が周りに配されていた。奥にあるお湯が流れ出す場所の上には、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの白い像がでーんと置かれ、湯に入る民の平和を上から見守っていた。
 
お湯に浸かって、ふうっと息を吐く。リラックスのスイッチが入る瞬間だ。これだけお風呂が大きいと、小さい「つ」が3つ増量の「ふうっっっっ」位のリラックス感マシマシになるのが不思議だった。
 
お風呂の広さを実感したくて、お湯の中をゆっくり端から端まで歩いてみる。手前は浅く、奥は深い造りになっていた。
皇帝アウグストゥスの近くは、お湯がおへその下まであった。下に座れないほどの深さだ。これは泳ぐ時に底に膝をぶつけなくていいな、なんて考えてついニヤニヤしてしまう。
 
部屋に戻って寝てしまった。急激にお布団に吸い込まれるような深い眠りにつき、ハッと目が覚めた。いけない、今何時だ?
枕元のスマホの時計を見る。大急ぎでチェックインの時に撮った夕食時間のご案内の写真をひっぱりだす。夕食時間のいわばコアタイムだった。すぐに作戦に移る。
 
これだけ大きなホテルなので、他の人が食事をしている時間とはいえ、大浴場を独り占めできるかは賭けだ。急いで部屋を飛び出し、焦ってエレベーターの閉まるボタンを何度も押す。
大浴場の入り口に来た。瞬時に、脱がれたスリッパの数を数える。3人分あった。どうしよう、出直そうか。
 
いや待てよ。
 
脱衣場に進む。2人がタオルで体を拭いているところだった。この人達はもう出る。ということは大浴場にいるのは1人。出直しはやめ。前進あるのみだ。白く煙る大浴場のガラス扉を開ける。
 
湯気の向こうにいる年配の女性の動向をじっと探る。お願い、早く上がって私を一人にして。
待っている間にのぼせないように、手前の浅い部分に陣取り半身浴で待つ。この人がいなくなったとしても、次に誰かが入って来たら作戦は失敗に終わってしまう。
そわそわして、さっきと同じお風呂に入っているのに全くリラックスできなかった。いっそのこと、一緒に泳ぎませんか? と勧誘してみようか。
 
ねえ、もうそろそろ上がらないとのぼせるんじゃないですか? と心の声を大にしてもう一度その人を見た。それが聞こえたのか、ゆっくりと彼女は出口に向かっていった。
 
ついにその瞬間がやって来た。300人も入れる大浴場を独り占めだ。
手前の端からスタートし、奥の皇帝アウグストゥスまでまっすぐ泳いでみることにした。
ただし、次の誰かが入って来たらピタリと泳ぎを止め、何事も無かったように振る舞わなければいけない。大人の辛いところだ。
 
スタート地点で位置につく。お湯で温まったのと、巨大な大浴場を貸し切りにして泳げるワクワクと、次の誰かが入って来るんじゃないかというドキドキで、心臓はバクバクしていた。
 
位置について。用意。
片足の足の裏を浴槽の壁にピタリとつける。深呼吸。
 
ピッ!!
心の中でスタートの笛が鳴った。両足で思いっきり壁を蹴る。お湯が両側に割れて大きな音を立てる。顔を出したまま平泳ぎ。
ひとかき、もうひとかき。温かいお湯に包まれて幸せだった。
楽しくて楽しくて、入って来る人を見る余裕なんて無かった。誰も来なくてラッキーだった。
 
後半の深い部分に差し掛かった。調子が上がってスピードが出てきた。蹴った後思い切り手足を伸ばす。ひとかきするごとにお湯の注ぎ口が近くなり、体に感じるお湯は熱くなっていった。
ちょうど10かき、両手でタッチしてゴールした。オリンピックの水泳選手の気分で、振り返り、ゴーグルを上げ、目を凝らして電光掲示板の記録を見る。優勝している設定なので、両手で水面を叩いて喜ぶ。
他の人がいたら、こんなこと絶対にできない。ものすごく、楽しかった。
 
着替えて部屋に帰ろうとする頃、30代とおぼしき女性が1人、脱衣場に入って来た。
この楽しさを彼女にも味わってもらいたかった。
話しかけてみた。良かったですね、今貸し切りですよ。
彼女が喜んでいたので、今なら泳げますよと続けた。いいですねー、と彼女の目がキラリと光るのが分かった。
端から端まで、平泳ぎで10かきでしたと話すと、爆笑していた。いたずらっ子みたいにニヤリとして「私も絶対やります」と言うと、長い髪を急いでまとめ始めた。
 
熱海の温泉旅館では、宿で食事をしなかったことと、皆が食事をしている時間を狙って大浴場に行ったのが勝因だった。人と違うタイミングで行動するメリットは、他にも色々な場面で応用できそうだ。
他の人と時間をずらすと、空いている上に、思ってもみなかった楽しみ方もできる。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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