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子育ての制約から磨かれるものがある


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本のぞみ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
田舎の駅から見える、雑居ビルの2階。
階段を上がってすぐにある居酒屋の、入ってすぐ右手の個室で私は泣いていた。
火曜日の昼間のことだった。突然泣き出した私に、連れ合いは困惑している様子だった。
出された料理がだんだん冷たくなっていく。それでも私は自分の涙が止められなかった。
あぁ、泣いちゃったよ……私。
 
残念ながらこれは恋愛のよくあるワンシーンではない。
私は、片田舎の中規模会社に勤めているワーママである。リフレッシュ休暇を取るように会社から言われ、珍しく平日ランチに出かけたのだった。
相手は、10歳ほど年上の女性で、彼女もまた母親で長年営業の仕事をしているキャリアウーマンだった。たまたま同じ日に偶然休みを取っていたことから、共通の知り合いが経営する居酒屋で、昼食がてらいろいろ話をしようということになった。
 
仕事以外で一人で出かけるなんて、本当に久しぶりのことだった。しかも、1週間も休みを取っている。自分の為にやりたいことがたくさんある。でもひとつ心に引っかかることがあった。
 
「長女ちゃん、お家での様子どうですか?」
数日前の保育園のお迎えで、長女の担任に声を掛けられた。
「年明けくらいから、保育士にべったりくっついてくるようになって、お外で遊びたがらないんです。何か心当たりありませんか?」
 
心当たりは、ある。
4歳の長女は、母親の私から見ても賢い子だ。なかなか引っ込み思案ではあるが、細かい創作が好きで、見たものの形を上手くマネして粘土で作ったりする。大人の顔色を見てしまうところがあり、私の精神的なゆらぎはすぐに彼女に伝染するのだ。
 
異変に気付いたのは、年明けのことだった。昨年夏から通い始めて大好きだった体操教室で、突然母親から離れられなくなった。あまりにも私にべったりで練習に集中しないので、ここ何度か「やらないなら帰ろうよ!」 と彼女に伝えていた。今思えば、みんなと同じようにやるように脅しているのに近い。
 
仕事では、昨年末から忙しい日々が続いていた。
自ら手を上げてやらせてもらっている仕事をいくつか抱えており、社内での評価は好調だったものの、家に仕事を持ち帰ることも多かった。突然お迎えに行けずに延長保育を活用することもしばしばあった。
 
仕事が長引くと今度は家事にも影響が出た。毎日ご飯を食べて充分睡眠時間を確保するために、削れるところは子どもとの時間だった。準備片付けもコンパクトにしなければならない。ご飯をダラダラ食べる、自分で着替えようとしない、何度呼んでも風呂に入らない、そういった細かいことで長女を叱ることが増えていた。
 
更に、楽しんで続けていた体操教室も、本人の意思を無視してやることを強要していた。担任の先生に尋ねられて、心当たりは有り余るほどだった。
私が仕事ばかりするのがいけなかったんだろうか。言葉が詰まって何も言えなかった。
せっかくリフレッシュ休暇だし、明日は長女を休ませようかな……
そんなことを考えながら、昼間の居酒屋ランチに向かっていた。
 
ランチ相手の彼女は、結婚後10年間子どもができなかった。その間キャリアを積み重ね、31歳で大きな昇進を果たした4年後、突然子供を授かったそうだ。その時まさに、部下・上司との関係に悩んでいた。それでも何とか産休を取り、8か月後に復帰したという。
 
「子どもが居るってのは、幸せなことだよね。私は、子どもができて教えられたことがいっぱいあるよ」
かつては彼女の妊娠出産を認めなかった後輩が、今では子どもの名前を呼んでかわいがってくれるまでに変化したそうだ。
そんな話を聞いていると、私の頭の中は長女のことでいっぱいだった。
母親の私がこんなだから長女は苦しんでいるのだろうか。どうして母親ばかりが大変なんだろうか。
 
私の様子がおかしかったのか、突然「どうかした?」と聞かれる。
もう無理だ……ごめんなさい!!
私は泣くのを止められなかった。それから、ここまでの経緯や長女への後悔の念をどっと吐き出してしまった。
こんなに居酒屋の個室がありがたかったことがあるだろうか。
 
ひとしきり私が話し終わると、彼女がこんな話をしてくれた。
「あのさ、保育園のお迎えとか、夕飯の支度とか、無くなったらたくさん仕事できるよう
になると思うでしょ? 違うんだよそれが。結局ね、出来る仕事の量ってあんまり変
わらないの。どうしても動かせないケツがあるからこそ、上手に時間を使うし、
何より『後回し』 が無くなる。時間が無い人は『嫌な仕事からやる』 だから仕
事が早いんだよ。それが一番強みだって、沢山母親見てきたから分かったよ」
 
30人ほどの女性部下を抱える彼女の言葉は、重かった。
確かに、子どもができて時間的な制約がかかった。こんな状況じゃなければ私にだってできる!そう思うことも多々ある。
 
しかし、時間的な制約があるからこそ手に入れたものもある。時間管理能力だ。
子どもができる前に比べれば提出物など期限を超えることは皆無に近い。
定時に退勤できるように、仕事の調整することも上手くなった。(実際、終業時間を見返すと定時ピッタリに終わっていることが何度もある)
無い時間を何とかやり繰りする為にはムダを見つけることも上手くなったのではないか。
 
「どうしても動かせない終わりが決まっている。これが、子どもを抱えるワーキングマザーの弱みでもあり、最大の強みである」
思い通りにならないことを子どものせい、仕事のせいにしていた自分へ大きな一撃となった。弱みは強みになっている。負荷だと思っていたことで自分自身が磨かれるではないか。
目の前のことに囚われて、問題ばかりが目につき、溺れかけていた私自身に気が付いた。
 
よし、明日は長女を休ませて、めいっぱい遊んであげよう。と心に決めた。
娘よ、私を強くしてくれてありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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