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単身者が保護猫を手にするまでのハードルは思いのほか高かった話


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:赤嶺里美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
ここ数年、保護猫を飼うことは随分、一般的になってきた気がする。我が家の2匹の猫も保護猫だ。
「なんかたくさん、保護猫の団体あるみたいだし、言えば手に入るんでしょ?」と思われる方もいるかもしれないが、ところがどっこい、猫をもらってくるには、思いのほか数々のハードルがあるのだ。特に、単身者にとっては……。
 
猫を飼うことにしたきっかけは、コロナ禍による在宅勤務だ。平日は遅くまで仕事、土日も出かけていては猫に悪かろう、とこれまで手を出せなかった。おまけに都心に近い賃貸物件は大半がペット不可だ。全面的に無理である。
「猫を飼いたい」と思いつつも「年を取って仕事を辞めて、田舎に引っ越したら飼おう」という、いつの話をしているのかわからないレベルの願望に成り果てていた。
そこにコロナ禍である。会社が「オフィスの面積を2分の1にする」と宣言した瞬間に、郊外に引っ越すことにした。平日は在宅勤務、広くてペット可のマンションに住み始め、猫を飼う条件は思わぬ方向から急速にそろい始めたのである。
 
引っ越して2ヶ月、いよいよ猫探しを開始した。Googleで検索すると、いくつかのマッチングサイトがヒットする。あちこちの団体が、里親募集中の猫を掲載しているのだ。
かわいい猫の写真が並ぶ画面を、何ページか見てみて愕然とした。
大半が「単身者不可」ではないか……。
 
なんということだ。
「単身者可」の条件を入れて再度、検索すると、件数が5分の1以下になった。ある程度近い場所の団体となると、更に候補が減った。この中から、年齢、オスメス、甘えん坊かビビりかの性格、はては猫の柄など、自分が家族にしたいと思う猫に出会わなければならないのである。これは大変なことになった。
 
単身者可、かつ自宅から電車で2時間以内の団体を探す。最初は「猫を探す」だったがもはや「団体を探す」に近い。よくよく見ると保護団体にもいろいろあり、トライアル期間の有無、身分証明書の提示や誓約書の提出の要不要など、条件のトーンがかなり異なるのである。
ホームページやSNSも見て、どのような団体かを観察する。条件の厳格さに辟易する団体もあるが、かといってあまりにゆるゆるで「どなたでもOK!」という団体もためらわれる。単身者という条件的に不利な身ではあるが、やりとりするなら「信頼のおける人に猫の里親になってほしい」という誠実さが伺える団体が良い。ある程度の条件はあるが、単身者にも理解のある、その塩梅が重要だ。
 
選んだ団体は、猫の具体的な性格と、どのような里親なら相性が良いかが丁寧に書かれていた。子猫に母猫がいる場合、母猫+子猫で引き取れる人を優先する、というスタンスも気に入った。子猫は飛ぶようにもらい手がつくが、成猫はあまりがちなのだ。子猫たちがみんな引き取られたあと、お母さん猫はどうなるのだろう……と思っていた私は、母猫のことも考えているこの団体に大変、好感をもった。
単身者はご遠慮ください、とは書かれているが「長期的に暮らせる環境を準備した、など猫との長い暮らしを考えてくださっている方は歓迎します」と記載がある。まさに、私のことではないか!!
 
早速、申し込みフォームに記入する。母猫と子猫の2匹を譲り受けたいこと、ひとり暮らしだが郊外のペット可マンションに引越しずっとここに暮らすこと、コロナが収束しても在宅勤務が続くこと、近所に姉家族が住んでおり、いざとなれば猫の世話をお願いできること、など思いの丈をしたためる。何しろ、信頼してもらわなければ猫は手に入らないのだ。こっちも必死である。
 
思いが通じたか、「是非、一度、お見合いにいらしてください」という好意的な返事が返ってきた。
出かけた場所は、都内の高層マンションだ。ここに住む2名で捨て猫の保護を始め、今では20名ほどが里親が決まるまでの預かりボランティアをしてくれているそうだ。
2名で回しているということにも驚いたが、家にお邪魔して更に驚いた。成猫・子猫あわせて20匹以上の猫がいたのである。母親のいない子猫たちは、1匹1匹ミルクを飲ませているそうだ。成猫は成猫で、半数はケージの奥に引きこもっている。人が怖いのだ。
 
お見合いをお願いした母猫は、ちょうど5匹の子猫の授乳中だった。野良時代も近所の人からごはんをもらっていたらしく、人には慣れており、授乳中にもかかわらず快く子猫を触らせてくれた。
聞けば、もともと山口県で保護され、飛行機で都内に空輸されてきたのだという。……空輸!!
「地方だともらい手の数が限られるんですよ、やっぱり首都圏の方が、もらい手は多いので……。知り合いが山口にいて、そのつながりで引き取ったんです」
地方と都心の、需要供給のアンバランスは、保護猫界でも健在だった。
 
お見合いの結果、母猫と身体の一番小さな男の子を引き取ることにした。
「この子が一番おとなしくておっとりしてるので、他の兄弟に押しのけられがちなんですよ」
一番小さなこの子がずっとお母さんと一緒、というのも悪くないだろう。うちで存分に、お母さんに甘えると良い。
 
母猫の避妊手術をすませてから、2週間後に引き取ることになった。準備しておいた方が良いものをアドバイスしてもらい、家を後にした。
 
電車の中で、うんうん、と頷いた。当初、里親に課せられる数々の条件を見てのけぞったが、それも当然だ。猫の保護は大変なのだ。20匹の猫屋敷に、空輸である。保護した猫は健康な猫ばかりではない。団体のInstagramでは、治らない病気を抱えた猫のお世話をしている写真も見かけた。あの子の里親を見つけるのは、かなりの難易度だろう。
 
うちの子になる猫は、野良時代にごはんをもらい、保護され、空輸され、病院でウィルス検査やワクチンを打ってもらい、預かり先で出産した後に、子猫ともども面倒を見てもらった上に、避妊手術を受けてうちに来るのである。
ただただ「子猫かわいい」だけでなく、小さな命と20年、暮らしていく覚悟を持っている人なのか、見極めたいと思うのは当然だろう。
 
どんと来いだ。こっちも本気で引越したのだ。
「キャットタワー、買おうかなぁ」
電車に揺られながら、猫たちが幸せに暮らせるために何が必要かを、指を折って考え始めた。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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