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目の前で向き合うものは何なのか ~あなたならどうしますか? ~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:わこ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「嘘ばかり言わないでくれないかな!」
と、私の気持ちがとうとう沸点に達し、発してしまった言葉だ。
言った相手は、私の同僚。普通ではない彼にいったところで何も変わらないことはわかっていたのに、とうとう言葉に出してしまった。
 
私が所属する経理部には3人の経理スタッフがいる。
長年勤務しているベテランスタッフの女性、安さん。一生懸命頑張っているがなかなか成長が見られない男性。そしてこの会社での勤務歴は少ないが、長年経理をやっている私の3人だ。
 
最初は、彼の異変には気づけなかった。
隣の席で、年齢の割には子供っぽい受け答えをする人だなと思ったくらいだ。
ベテラン女性の安さんは、私が仕事に慣れてくるといつも彼のことを愚痴っていた。
「人のいうことを素直に聞かないし、経理なのに仕事が雑すぎる……」
 
最初は、他人事のようにその愚痴を聞いていたのだが、1ヵ月観察してみるとやはり、どこか経理の人材にしては、帳簿の入力が雑だったり、表を作っても見づらかったり。
とにかく「普通ではない」状況が次第にわかってきた。
 
2か月目にして、私の中で、もしかして彼は、発達障害かもしれないという疑問がでてきた。
先に1年近く彼と一緒に仕事をしてきた安さんでさえ、そのことはわからないようだった。
 
私が気づいたのには理由がある。
16年位前になるだろうか、私が職業訓練校の講師をしていた時に、精神障害等で仕事ができなくなった方たちの対応もしていた。
その関係で、大学で心理学を学ぶことにし、通信だが教養学部に入り、認定心理士の資格を取った。
講師をしている間には、大学を卒業することはできなかったが、講師を辞め、企業に勤めている間に大学を卒業した。
卒業後に、飲食系の会社に入り、本業の経理をしながら認定心理士として、メンタル不調の方のカウンセリングをすることもあった。
そんな中で、発達障害の人に出会っていたのである。
 
発達障害は、子供の時からわかるケースもあるが、大人になってから発達障害になるケースも少なくない。
主には、自分なりのこだわりが多く、コミュニケーションは苦手である。人の気持ちが理解できない、臨機応変な対応が苦手、自己中心的な言動が多いなどがある。
 
私の同僚の男性は、38歳位だが、周囲とのコミュニケーションがなかなか取れなかった。そして、マニュアル以外のことがでてくると応用力がないため、パニックになる。あるいは、自分勝手に事を進めてお客様へご迷惑をかけてしまうということも多い。
本人はできているつもりのようだが……
 
書類の整理も最初はできていたのに、次の月には、違うやり方で雑に整理をしたり……
まわりと同じ事ができない。
 
身体的には全く問題ないのだが、極端に緊張すると、ことばがでてこないのか同じ言葉を何度も繰り返し、話が先に進まない。
メールを書くにしても、何を言いたいのかわからない文章を書く。
話していると、毎回いうことが違っていて、その違ったことを言っている意識はない。
とにかく、認識がかなりずれているのだ。
 
ただ、これだけでは発達障害と決めつけるわけにはいかない。
本人が病院へ行って診断してもらわなければ証明できないのだ。
 
以前あったケースでは、50歳過ぎた兄弟。兄は、弟の変化に気づいていなかった。
ただ、小さいころから頭が悪かったと思っていたくらいだ。しかし、いつまでたっても子供のような話し方、計算できないと言ってパニックになる、慌てるといろんなことを忘れてしまう。簡単で同じ事ならできるのだが……
このように、家族が病院に連れていかず、発達障害をただ頭が悪いだけと解釈するケースもまた少なくないのだ。
 
あるデータでは、義務教育の普通の学級で発達障害と言われる人は6.5%程いるとも言われている(教員アンケートによるもの)
 
社会人になってからは、勤務成績が著しく低く成長が無いことから退職勧奨の対象になることも多いそうだ。
 
このようなことも私はわかっていながら、あまりにも彼の言動が無責任に感じた事件があった。
「このシステムでは、この処理の仕方しかできません」と言い切ったことがあった。
結論から言えば、会計システムよりも前に、会計処理をするための仕訳という処理内容ができれば、何も問題なくシステムでできることを、私にできないと言ってきたのだ。
 
私は「そうなの?」と一旦のみ込んだ。それは、彼が混乱しないために。
だが、どうしても決算の関係で、その処理を正式なものに変更しなければならなかった。
 
ベテラン安さんに相談し、決算の関係で会計事務所が修正したということで話をしましょうということになった。
 
3人でミーティングをした際に、この話をした。
彼は、何が間違っているのかもわからない様子だった。
丁寧に安さんが説明していった。
なぜ、こうなったのかも手順に沿って話をして聞き出していった。
だが、彼は、いつものように言うことが毎回違っていて堂々巡りだ。
 
普通なら、そんな感じだったらほおっておけばいいと思うかもしれない。
しかし彼は、入社の時に、決算までやれるといって入社したようなのだ。
決算を経験しているのであれば、わかる内容も、全くわかっていなかった。
 
私は、入社して1年、ずっとこのようなやり取りを彼として疲れていた。
ずっと彼の話し相手になっていた。そのたびに、自分を押し殺していた反動が、とうとう忙しさで疲れているのもあって、怒鳴ってしまったのだ。
「なんでそうやって嘘つくの! 嘘ばかり言わないでくれないかな!」
彼は無反応だった。
 
その瞬間、私は我に返った。
あ! この子は通常の認識とは違っていたんだったと。
怒りをあらわにした自分に落ち込んだ。
 
いまだに、彼が発達障害であるかはわからない。
彼のご両親は、彼が若いころに亡くなったことは聞いていた。
おばあ様に育ててもらったと言っていたのである。
実家から離れた後は、ずっと一人で暮らしている。
だから、彼の変化に気づく人は誰もいないのだ。
 
ただ、いまだに彼の言った言葉で印象的なことがある。
それは、ある宴会で、他の部署の方が「仕事はどう?」と聞いたときに、「ここにはいじめる人がいないからいいですね」と言っていたことを。
 
彼は、仕事を転々としていたようだが、もしかしたら、彼の行動や発言が原因で、仕事を追いやられていたのかもしれないと想像をしてしまった。
 
周りは、彼が病気なのではないかと思い始めている。彼に病院へいってみたらと一言言ったほうがいいのかもしれないが、本人の自覚がないのに、それを言ったことで会社が訴えられたら困ると人事部から言われている。
私もまた、板挟みだ。こんな時、他の人はどう考えるのだろうかと心が沈んだ。
 
改めて感じることは、彼にとって、今の環境は幸せなのか? ということだ。
その答えは、誰にもわからないが、今わかっていることは、少しでも目の前にいる彼が成長できることを考えて、私も向き合っていこうとしている、ということだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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