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「幸せにしかなれない」実はそういうシステムなのかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ニエベ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「だめだ、体が動かない。足が動かない。声もでない」
 
私は立ったまま固まっていた。目には溢れだしそうな涙が、かろうじて目の中にとどまっていた。あと5歩、足が出れば上司Aの部屋だ。来客が到着したことを伝えないといけない。
 
それなのに私の体は硬直して、声を出すこともできなかった。
 
来客は重要な人だ。ある国の大使だ。表敬訪問と今後の協力の話で足を運んでくださった。
 
受付から秘書の私に来客到着の内線がはいり、私は上司に伝えなければいけないが、その日、いや、その日も朝から、上司Aは不機嫌で、怒鳴り声をあげていた。
 
朝から理不尽に怒鳴られまくっていた私は、心が限界だった。心も体もフリーズしてしまった。
 
そして10分程が過ぎ、その来客はしびれを切らして帰ってしまった。
ありえない!
一国の大使を、待たせて、怒らせて、帰らせてしまった。ある意味、外交問題だ。
 
それに気づいた女性の中間管理職的上司が、事情を察し、上司Aに伝えてくれた。
そして気分を害して帰られた、その国の大使館まで一緒に謝りに行こう、「大丈夫、私が取りなすから」と言ってくれて一緒に謝りに行き、なんとか事なきを得た。
 
 
上司Aが着任してから、理不尽な怒鳴り声と、さすがに人には手は出せなかったけれど、物や扉を蹴とばし壁が凹んだりして、私たちは心がしぼんでいった。
 
秘書の私は、彼の許可がなければ、自分の席を立つこともできなかった。週末にも怒りの電話をかけてきて、電話に出られない時は折り返すと「なんで電話に出ない!」と罵声を浴びせられた。
 
 
毎朝、職場に向かう道では、涙を流しながら歩き、自分を励ましながら数年耐えたが、もう限界だった。
 
そして私は、あのフリーズ事件から数か月後、上司Aに伝えた「辞めることにしました。勉強したいことが見つかったので」と。さも、あなたに非があるのではない、というていで。
 
実際、本当に学んでみたい、と思ったのは心理学、心理カウンセリング。友達に誘われて体験コースに行き、心が疲弊していた私は学びたい! そう強く思い、その心理学の協会で資格を習得して、その後は心理カウンセラーとして生業を得たい、そう考えた。
 
 
正規の仕事を辞めて派遣として働きながら、心理学の学びに励んだ。収入はかなり減り、お金の心配で目が覚める、そんなこともあったが、目標のある日々は楽しかった。
 
 
心理学の学びが終盤にかかってきた頃、これからどうしてゆくのか、考え始めた。
今後の生業として資格を生かして、心理カウンセラーとして起業したい、そう思い始めると、ちょうど女性向け起業塾に出会った。私にとっては大金だったが、未来のためと今までの貯金をはたき起業塾にはいった。
 
派遣の仕事をしながら、自分のホームページを作ったり、メーリングを書く勉強をしたり、自分のイメージを作ったり、平行してカウンセリングに必要なさらなる学びをこれまた、貯金をくずして取り組んだりした。
 
 
 
約2年が過ぎ、心理カウンセリングの学びを無事修了し資格を取った。
自分なりに頑張った。起業して、どうにか生業を得て、頑張ってゆこう、と希望だけは大きかった。
 
そのために自分の生活を最低限維持するため働いていた派遣の仕事は辞めることにした。先はまだ何も決まっていないのに。
 
 
そんな風に意気揚々と始めた私の起業は……、全くもって芽が出なかった。
カウンセリングに来てくれたのは「お試し価格」を利用しての友人や、知り合いのみ。
 
 
確かにそうだ。心理学をプロコースまで学んだからといって、大学で臨床心理を修了したわけでもなく、実績もない私のところに多くのクライアントが来るはずがない。
起業は失敗した。
 
 
さて、どうやって生きてゆこう。
貯金はかなり使ってしまった。派遣も辞めてしまった。
40代半ば、独身、東京で一人暮らし。
 
 
「上司Aの出現で、私の人生は変わってしまった。なんでこんなことに……」
 
 
 
そんな時だ。数年前一緒に働いていた尊敬する上司Bから突然メールが届いた。
 
「今度また東京事務所に赴任することになったよ。君が戻ってきてくれたらいいな」
 
そうか、転勤の時期だ。A氏は東京からいなくなり、B氏が戻ってくることになったんだ。
 
 
あの職場に戻ることは1ミリも考えていなかった。仕事は好きだったけれど、私は逃げ出したのだ。いくら上司Aがいなくなるとはいえ、逃げだした私はみんなに合わせる顔がない。
 
 
そう思いつつも、無職で、起業にも失敗して、資格は取ったものの、自分を養うほどの力量はなく、生きてゆくための糧が今の私にはない。
 
自分のことを覚えていてくれて、声をかけてくれたB氏に恩返しをしたい、そう思い、私は前の職場に改めて面接に行った。
 
行ってみると実は書類上、私は退職をした、というより「勉学のための一時休職」の扱いとなっていた。それは怒鳴ってばかりいた上司Aが、そうしてくれていたそうだ。
 
戻ってきた上司Bをはじめ、あの時私を助けてくれた女性上司や同僚も温かく迎えてくれた。
 
一方、私生活では父が難病になり精神が弱り始めていた。そこでは心理カウンセラーの勉強が大きく役立った。カウンセリングの勉強をしていなかったら、父にどう接していいか分からなかっただろう。
父がこんな状況になるなんて、あの頃全く想像していなかった。
今となっては、この家族の危機に備えて私は勉強していたのではないか、とさえ思えるのだ。
 
 
同じ職場の同じ場所、数年前にフリーズした場所に私はいる。
 
でも見える景色はあの時とは違う。
怒鳴り声に怯えていた私。あの時は怯えることしかできなかった。
 
 
それが、心理学を勉強した今、A氏のことに想いを馳せると、切ない気持ちになる。
怒鳴るという行為しか選択できず、虚勢を張って、埋めたい承認欲求の行き場は、どこだったのだろう?
 
 
私はその仕事が好きだったから、仕事を休職してまで、心理学を学ぼうなんて全く思っていなかったけれど、A氏が出現してくれたおかげで、私は一度辞める(結果的には休職扱い)決心をし、学んで、それはビジネスとしては成功しなかったけれど、家族という何にも代えがたい存在を救うことに大いに役立っている。
 
「Aさん、ありがとう。あなたのおかげです」
 
今ではそう思っている。
A氏は、言ってみれば私の人生の中で悪役として登場したが、実は私の人生を豊かに幸せにしてくれる菩薩さまだったのだろう。
 
「人生、万事塞翁が馬」という故事があるけれど、2022年にいる私はあの時フリーズしてしまった数年前の私に、事の顛末を優しく語りかけてあげたい。
 
そして、もしこれからの私がまた何かのことでフリーズしてしまいそうになったら、未来の自分、こうなっていたいと想像する未来の自分を今に登場させて語ってもらおう。
 
「それはね、あなたの人生がもっと実り豊かになるための逆縁の菩薩さま、塞翁が馬だよ」って。
 
その言葉が自分の中にあれば、きっとこれからも私は自分の道を歩いて行けそうな気がする。
 
今、何かで苦しい状況にいるあなたへ。
あなたもきっといつか、そう言える日が来ますように。
 
 
最後に、あの日、助けてくれた女性上司と上司B氏、私は一生あなた達のことを忘れないし、恩返しがしたい。「人がついてゆく」ということはどういうことか、あなた達は教えてくれたから。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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