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我が家にはるがやってきた


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Allie(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
昨年11月、冬というには少し早い時期に実家の犬が旅立った。夏頃に後ろ足が動かなくなってからも前足だけで器用に動いたり、犬用の車椅子をつけて走ったりする姿を母が動画で送ってくれていた。それを見て安堵していたのだが、やはり体の本来の機能を失った代償は大きく、長くは生きられなかった。犬が旅立ってまだ日が浅い時に、母から「癖でリビングのドアを少し開けっぱなしにしてしまう」聞いた時は心が痛んだ。
 
私自身も犬を飼っているので、当たり前のように隣にいた犬がなくなるつらさは想像を絶する。トリミングや健康診断で数時間だけ病院に犬を預けて家に帰った時ですら、家の中はしんとして、空気が冷たくなったようにさえ感じる。人間より体は小さくても、それだけ存在感があるということなのだろう。
 
こうして、雪が降り始めるより少し早く、私の実家は少し長い冬を迎えることになった。犬と一緒に暮らしていた父と母、そして頻繁に面倒を見ていた弟に気を遣って、連絡をとっても何となく犬の話は避けていた。先代の犬も見送っているし、もうつらい思いはしたくないだろうから、犬はもう飼わないかもしれない。そんな風に思っていた。
 
だが犬が旅立って約3ヶ月経ったある日、父から電話があった。また犬を迎えたいというのだ。それを聞いた妹は誰よりも行動が早かった。きっと私よりも両親のことを気にしていたのだろう。待っていましたとばかりに子犬を探し始め、あっという間に静岡のブリーダーさんの所へ見学に行く日取りが決まった。私が考えあぐねている間にレンタカーの予約まで済ませ、気づいたら見学当日になっていた。
 
妹と2人で見学に行ったのは2月の下旬。希望していた子犬以外も見せてもらったので、実際に足を運べない両親のために子犬たちの動画と写真を撮りまくって、ブリーダーさんにもそれぞれの子犬についてできる限りの情報をもらい、お宅をあとにした。
 
引き取る子犬はわりとすんなり決まったものの、問題は名前だった。ピッタリの名前がなかなか決まらない。メールでのやりとりも大変ということで、我が家で初のオンライン会議が設定された。家族間のやりとりは基本的にLINEの文章なので、前代未聞の事態である。私を含め、家族みんなが子犬を迎えることを楽しみにしているのだな、と感じられて何だかうれしくなってしまった。
 
我が家は根っからの犬好きで、家に犬がいなかったことがない。私が生まれてからこれまでに実家では3匹の犬を飼ったことがあって、いつも数字にちなんだ名前をつけていた。
 
最初に犬を飼ったのは祖父母と両親、弟と妹と私の7人家族の時で、迎えた犬が8番目の家族だったことから数字にちなんで「はっちー」。その子が旅立ち、次に迎えた子は9番目。また数字にちなんで名前は「キュン」。次に迎えた子は10番目だから「テン」と名付けた。
 
順番でいくと、今回我が家に来る子犬は11番目の家族ということになる。11にちなんだ名前にしようという流れだったのだが、これがなかなか難しい。
 
「第1候補は、イレブンを省略してイブ!」
 
母が唐突に候補を出す。いやいや、お迎えするのはオスなんですけど! きょうだいそろって母に同じツッコミを入れる。
 
「ドイツ語で11はエルフだから、エルとか?」
「フランス語だとオンズだって。略してオズ?」
 
次に候補を出してきたのは弟だ。エルもオズもみんなの反応が悪く、イマイチ……ということで却下になった。
 
「マロ眉っぽいからマロは?」
「和風っぽい顔だからハヤテとかよくない?」
 
11との関連はネタ切れしたので、私は犬の顔の印象から候補を出してみたのだが、すべて妹に光の速さでボツにされた。
 
「新たな始まりを込めてアラタ!」
 
母が別の角度から切り込んで候補を出すが、義兄の子供と名前が被るのでNGになった。
 
「じゃあ、イチとかハジメのほうがよくない?」と妹。
「嫌いな人の名前がハジメだからイヤ」と母。
 
全員が納得する名前がなかなか挙がらない。子犬が実際にやってくるまでまだ時間があるものの、本当に決まるのだろうかと思っていると、ふいに「ジャック」という名前が挙がった。トランプの11にちなんだ名前だ。今までの候補よりはいいかもね、という話にまとまったので、参加していなかった父に母が打診してみることで会議はお開きとなった。
 
翌朝、母からLINEが届いた。何と、父が自分で名前を考えていたという。普段から口数が少なくて何かを決める時も積極的には参加しない父が、自ら候補を考えていた、ということが私にはかなり驚きだった。「なんていう名前?」と早速返信する。
 
「はる だって。春だから」
 
不思議なことに、引き取る子犬にピッタリだと直感した。なぜだかストンと納得できた。父にこんなセンスがあるとは。きっと子犬がやってくることを誰よりも楽しみにしているということなのだろう。父の意外な一面が垣間見られて心が和んだ。
 
鶴の一声で名前が決まり、「はる」と名付けられた子犬は3月12日に我が家の一員となった。今のところ順調に、元気よく育っているようだ。母の話だと、父に一番なついているという。名前をくれた人間がわかるのだろうか。いや、きっと一番甘やかしてくれる人間を本能で察知しているに違いない。
 
こうして桜の開花より少し早く、我が家にはるが訪れたのだった。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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