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入院生活とQOL

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ノリイ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
2020年11月、巨大なスーツケースをギューギュー詰めにしてわたしが向かったのは都内の結構有名な私立大学病院。
肺がん検診で胸部の腫瘍が発見されてから3年。梅干しサイズだったレントゲンの影はマンゴーサイズまで成長していた。
 
3年ぶりに行った区の定期健診で、肺のレントゲンを撮影した技師が
「精密検査をしないと! 今すぐにでも病院に行ってください!!」
と大慌てで駆け寄ってきてくれたのには本当に感謝している。
普段の呼吸が苦しかったけれど、時は新型コロナウィルスの蔓延でのマスク生活。歩くとすぐに息切れするのもマスクのせいかもなんて悠長に構えていた。とはいえ、夜仰向けに寝ると器官が圧迫されて息ができなかったので、このまま窒息死かも。なんて、考えていた。
他人事のように構えていたので、私以上に心配している他人の存在でことのヤバさが理解できたのかもしれない。
 
そこからは嵐に巻き込まれた船のような気分で、あっという間に腫瘍の正体を突き止めるための入院という運びになった。
要は陰性か陽性か。それがわからないと手術で腫瘍を切除するかどうかも決められないという。
 
がんかも??
日本人の2人に1人はがんになると言われている今の世の中、珍しい病気じゃない。まさか自分が、っていう焦燥感と同時にどんな状態なのか、進行具合次第だと冷静に思う自分もいた。
 
コロナ禍での入院はかなりの孤独。
基本的に面会はNG。差し入れは直接は渡せないので、病院のエントランスで預けたられたものが患者に届く。わたしがいた病院は院内にあるコンビニへ行くのも一般外来の時間が終わる夕方17時から朝8時の外来診察開始まで。検査のために院内を移動するのも制限され、まさに軟禁状態。
病棟内は自由に行動できたが、各ベッドの周りのカーテンは閉ざされている場合がほとんどで、なかなかおしゃべりをする相手もできなかった。
 
そう、時間を潰すものはあった方がいい。
 
わたしの遊び相手はスマホの中のポケモン達だった。首からかけられるスマホホルダーにセットして暇になると「ポケモンGO」というスマホゲームをしていた。リアルな地図上に登場するポケットモンスターと呼ばれるキャラクター達を狩る(集める)ゲームは長い入院生活にはうってつけで、その日捕まえたポケモンを外の友人に報告するという日課ができた。
 
入院生活が10日ほど過ぎた頃、カーテンの向こうにある隣のベッドにいる、ノムラさんと話しをするようになった。40代後半の彼女は非常に珍しい難病を患っていて、入院のベテランだった。わたしより2週間先に入院していて、退院の目処はたっていないという。彼女は看護師さん達と仲が良くて、芸能人の話題や世間話をしている声がいつも隣から聞こえていたので、そこに混ぜてもらえるようになって日々が少し明るくなった。
 
調子がいい日は
「ポケ狩り行ってきま〜す」
と隣のベッドのノムラさんに伝えて、病棟の廊下やコンビニ、院内を徘徊して日夜ポケットモンスターを狩ることに努めていた。かなり院内を徘徊したおかげでそんなに体力が落ちなかったのではないかと自負している。
 
入院生活はQOL(Quality of Life)、生活の質、を確保しないと心が荒む。数日ならば問題にならないけれど、1週間を超えると寂しさと不便さが気になりだす。当たり前だが自宅と同じとは行かないけれど、少しでも快適さや癒しが欲しい。
 
そう確信したわたしは、まずが窓際のベッドをリクエストした。個室なら関係ないが、廊下側のベッドはトイレへのアクセスが良いというメリットはあれど、一晩中ナースステーションや廊下から活動音がして落ち着かない。
窓際の何がよいって外界から遮断されている日々の中で窓から外が見えるという開放感! そして太陽のパワー!!
太陽光を浴びると”幸せホルモン”のセロトニンが分泌されるそうなので、怪我や病気で気落ちしていても少しは元気が出るというもの。わたしは毎朝、看護師さんに内緒で窓を開けて深呼吸をするのを日課にしていた。
ノムラさんの「今日、寒くない?」という声が聞こえて慌てて窓を閉めたことも何度かあった。
 
ギューギューのスーツケースで持ち込んだ折り畳み式のファイルボックスには家で積読になっていた本。
病棟内にFREE WIFIがあったのでタブレットとタブレットスタンドも持ち込んだ。退院後は無用の長物になっているがアームを動かせるタイプのものは、寝ながらNETFLIXやHULUが観られて最高だった。看護師さんには一体何を持ち込んだんだと白い目で見られたが、味気ない食事も好きなドラマや映画を観ながらだとかなり充実した。
 
そして食事といえば、塩分が少ない院内食を楽しむために塩漬け胡椒とバルサミコドレッシング、あとは蜂蜜を持ち込んだ。あとは院内のコンビニで半熟卵を購入してご飯にトッピング。鶏肉も豚肉も半熟卵が乗ると一気に美味しそうに見えるから不思議なものだ。
 
部屋の壁には、お見舞いでもらったポストカードや思い出の写真をテープで貼った。ちょうどクリスマス前だったので、クリスマスイブまでのカウントダウンを楽しめるアドベントカレンダーまで貼りつけた。毎日清掃にくるおばさんには
「こんな大部屋患者さんは初めてです」
と笑われた。壁に数枚の好きなイメージがあるだけで、入院中の寂しさや不安がどれだけ和らいだことか。
ほとんどすることもなく入院をしていたはずだった私の日々はかなり快適だったと思う。
 
 
さて、入院してから2週間後にようやっと出た診断は悪性リンパ腫だった。
悪性リンパ腫と言っても70種類以上タイプがあり、それぞれ治療方法は異なる。当然、治療方法も様々、化学療法にも色々ある。少しでも詳しい情報を求めて安易なネット検索をすれば「1年生存率7割」「5年生存率3割」と、不安ばかり煽られる。
そんな時も顔を上げて自分のベッドの周りを見て気分を上げ、カーテンの向こうにいるノムラさんに声をかけて病院食の文句を言い合った。
そして、お互いに抱えている痛みや苦しみは違うけれど
「(入院して自分の身体と向き合う)この辛さって体験した人にしかわからないよね。まぁ、自分の夫や子どもが元気に暮らせていて本当によかったよ」
とうなずき合った。
 
QOLを下げないことに頑張ったおかげでわたしの入院生活はかなり快適だった。なんなら帰宅後の俗世界の方がよっぽどシンドイ。
病室でただ時間だけが過ぎていくあの焦燥感が今はちょっと懐かしい。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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