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メディアグランプリ

悲劇はある朝突然に


202*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:レティシア(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
それは月曜日の午前5時頃のことだった。
 
月曜日。そう。ライティング・ゼミの課題の締切日である。
なのに、一文字も書けていない。テーマさえ決まっていない。
 
いつもより早く目覚めた私は、部屋の灯りをつけ、デスクからリングノートとペンを持ってベッドに戻った。いちご柄の表紙のノートは、ロルバーンの福岡限定モデルである。福岡のブランドいちご「あまおう」にちなんだもので、店頭で見つけた時に即買いした。エッセイのアイデアを書きつける「ネタ帳」として、貴重な限定モデルを選んだのは、私の心意気と言っていい。
 
ベッドに座って、ネタ帳をめくる。
 
軽く絶望した。
 
新ネタ、ないじゃん。途方に暮れた。
 
いや、まだ時間はある。とりあえず、ブレーンストーミングから始めようと、ペンを持ち直したその時、私の背中がかすかな兆候を感知した。
 
やばい。来るかも。
 
そして、身じろぎした次の瞬間、激痛に襲われ、体を折り曲げた。
 
来た! 来た! 背中が攣った!!!
 
疲れが溜まると、背中が攣るのである。ぎっくり腰ならぬ、ぎっくり背中。伸びをしたり、シャワーを浴びていたり、そんな日常動作の最中に、突然激痛に襲われる。運動中や就寝中に突然ふくらはぎがつる「こむら返り」に似た痛みだ。
 
こむら返りの場合、つった足の爪先をつかんで、ゆっくりと手前に引っ張ったり、マッサージをしたりすると、筋肉のこわばりがほぐれ、数分もすれば痛みは治まる。しかし、背中にはつま先がない。マッサージするにも、手が届かない。
 
とりあえず筋肉を伸ばそうと、体を前後左右に曲げていたら、あろうことか、悪化した。
 
曲げてはいけない方向に曲げてしまったらしく、痛みが倍増し、息もしにくい。こんなことは初めてだ。胎児のように体を丸めて、浅い呼吸を繰り返す。
 
夫は単身赴任中。午前5時は、間違いなく就寝中。
夫を叩き起こすべきかどうか30秒ほど迷った末、電話をかけた。
 
出ない。もう一度かけてみる。
 
出ない。出ない。出ない。
 
ここは自力でなんとかするしかない。ぎっくり背中で死ぬことはないということが、かすかな希望を灯している。
 
着信。
 
携帯の向こうから、寝ぼけた夫の声が聞こえてきた。息も切れ切れに、助けを求める。
 
「せ、せな、かが、つっ、た」
 
医療従事者の夫は、すぐに「シャクヤクカンゾウトウ」を飲むように言った。
 
は? 漢方? 今から体質改善とかしてる場合じゃないんですけど。
 
「いや、そういう、んじゃ、なく、て」
 
力なく反論するが、とにかく飲めと言う。だまされたと思って、とまで言う。薬箱にあるはずだからと。
 
電話を切り、携帯をパジャマのポケットに入れて、ゆっくりゆっくりベッドを降りる。薬箱はリビングだ。四つん這いで、部屋のドアまでたどり着いた。
 
痛くて体が起こせない。ドアノブを見上げ、右手を伸ばす。
 
……届かない。
 
万事休す。情けなくて泣けてきた。うずくまって痛みに耐えていると、夫から電話。
 
「飲めた?」
「ドア、ノ、ブに、手、が、届か、な、い」
 
ベソをかいている私に、夫は、壁を使うなどして、まずは立ち上がれと言った。
 
立て、立つんだ、ジョー!
立ち上がれ! ガンダム!
 
昭和のアニメを脳裏に巡らせながら、壁に体をもたせかけ、じわりじわりと立ち上がる。
どうにか立てた。クララが立った!
 
ドアを開けることに成功した私は、腰の曲がった老人のようによちよちと廊下を進み、リビングのドアに挑む。2枚目は難なくクリアした。
 
薬箱を開け、漢方薬「ケイシブクリョウガン」を探す。
 
あった。
 
しかし、水道の蛇口ははるかかなた。戸棚の奥にあった経口補水液で流し込んだ。
 
30分後、リビングのソファで息をつきながら、私は漢方薬「芍薬甘草湯」の効果を実感していた。夫によると、ぎっくり腰の急性期に処方される薬らしい。
 
知らなかった。漢方、疑ってごめん。
 
「即効性のある漢方薬もあるのよ。風邪の引きはじめに、葛根湯飲むでしょ?」と夫。そういえばそう。だまされたと思って飲んでよかった。化学を駆使した西洋薬のほうがすべてにおいて優れていると思っていたけれど、伝統的な薬には、何百年も使い続けてこられただけの効能があるんだなぁ。
 
整骨院の予約が取れたので、昼過ぎに受診すると、
 
「ぎっくり腰やぎっくり背中は、季節の変わり目に多いんです。今日は、あなたで4人目ですよ」とのこと。
 
「背中が肉離れを起こしている状態なので、炎症がおさまるまでは温めないでくださいね。サウナ? 厳禁です」
 
聞いといてよかった。サウナに行く気満々だった。
 
炎症部位を避けて周りの筋肉をほぐしてもらい、ついでに湿布も貼ってもらった。痛みは3~4日でおさまるでしょうとのこと。
 
帰り道、運動公園の桜が開花していた。
少し気分が明るくなった。
背中は今も痛いけれど、今日の課題のネタができたので、良しとしよう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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