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4ヶ月間毎日かかってくる命の電話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:リヒターけいこ(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
私には80歳になったばかりの母がいる。
栃木の温泉町で7人兄弟の4何3女の真ん中として生まれた母は、
若い頃は歌が上手く愛嬌のあるバスガイドとして人気者だったらしい。
人は知らないのだが、頭の真ん中に7cmくらいのハゲがある。
子供の頃遊んでいて、囲炉裏に頭から落ちてしまったんだとか。
だからテッペンはいつもハゲが隠れるようにパーマをかけてフワッとさせていた。
そして私が子供の頃の母は、お化粧が上手で可愛いさを失わない女性だった。
 
 
そんな母にこの4ヶ月間毎日中学の同級生から電話がかかってきている。
同級生だったAさんとは数年前同窓会で再会以来なぜか時々電話が来るようになったという。
4ヶ月前、突然全身癌で余命3ヶ月と医者に告げられた時も、ショックで母に
電話してきたらしい。
 
 
最初の頃は可哀想に思って断ることもなく電話の相手をしていた母だったが、
Aさんの話はいつも、昔亡くなったギャンブル好きの夫の悪口や嫁の愚痴ばかりで
信じられないくらい酷い内容ばかりだったそうだ。
誰に対しても文句ばかり、悪いのは自分以外、そんな風だから友人もほぼいなくて
二人の子供達ともうまくいっていなかったとか。
 
 
せっかく一緒に住んでくれていた長男が
「お母さん、ごめんなさい。お母さんは大切だけど、僕は嫁をとても愛していて
一緒に暮らしていくことはもうできない。」と家を出て行ったという。
 
 
娘からは長男のバースデーは必ずケーキを買ってきてお祝いしたのに、
娘の誕生日にはケーキを買ってあげたことがなかったと言われて
なんと娘に謝るどころか
「そんなこと思ってたのー?」と、大変デリカシーのない一言を放って
しまったAさん。
 
 
ものすごいエゴの塊のような、不満だらけの人生を送ってきた女性が容易に想像できた。
最初は母は「へー」とか、「そんなことあったんだー」と聞き流していたらしいが
そのうちになんて人なのか、と頭にくるようになり、Aさんに説教をするようになった。
「母親なのにそんな言い方はひどい」「それはあなたが間違ってる」
そうやって怒られながらも、毎日かかってくる電話。
 
 
 
母もよく相手にしてきたと感心もするが、まるで堰を切ったように後から
あとから話が出てきたらしい。Aさんはきっと今まで誰にも言うことがないまま、悲しみ、
失望、挫折、憎しみをためてきてしまったんだろう。
 
 
 
 
私が驚いたのは、その後である。母が言うには、4ヶ月も毎日話を聞いているうちに
相手にものすごい変化が起きたのだという。まず、口を開けば文句ばかりで
笑ったこともなかった人が、末期癌だということも忘れて声を出して笑うように
なったそうだ。
 
 
嫁さんのことを愚痴る相手に、母がもっと思いやりを持つようにと説教すると、
驚くことに、本当にそうだね、と反省するようになったというのだ。
 
 
話を聞いてもらえていると感じると、人は自分を認めてもらえている、と
思うものである。Aさんに起こった変化の一番の原因は、おそらく人生で初めて
自分の話を聞いてくれる、親身になって助言をしてくれる人(私の母)と
出会って起きたことなのだろう。
 
 
そしてAさんの心に、これもおそらく初めて、母のおかげで「感謝のこころ」が
生まれたのではないかと想像する。
 
 
私が8歳の頃離婚し、さらに2度結婚に失敗した母だ。
お人好しで優しすぎて、夫に尽くしてばかりいた気がする。
3度も離婚をした母は、それでも幼なじみの女友達が助けてくれて
一人で定食屋を開業できたわけだから、運は決して悪くなかったと思う。
そして母の人生で最も大切だったのは、人生で初めて一人になってようやく
母自身が自分と向き合うことができた、ということである。
 
 
親のため、夫のため、子供たちのため、と言っては我慢をしながら生きて
きた母だけど、自分さえ我慢すればいいんだ、と思ってしまった女性の
生まれた環境と祖母との関係性は、考え方に大きな影響を与えていたんだと
娘として感じることが多い。
 
 
子供たちに迷惑をかけまいと普段から健康に気を配っているので、80歳の
今は主治医に褒められるくらい健康そのものなんだそうだ。
母はこの数年間、いつ何があっても子供たちが困らないようにと断捨離をし、
自分の人生の最後とも向き合ってきた。
 
 
毎日できるだけ思い出を書き出し日記をつけているし、墓はいらないから
灰を撒いて欲しい、と遺書にしたためてあるという。
母曰く、「自分は幸せな結婚ができなかったのに、3人の子供たちはそれぞれ
子供にも恵まれて幸せな家庭を築いている。こんな幸せなことがあるだろうか」
そう言って、もう母はいつお迎えが来ても何にも怖くないし、後悔もない、と
言い切るのだ。
 
 
私たち姉妹は今の今まで、一ミリ足りとも母の愛を疑ったことはない。
愛は連鎖する。そして感謝の心を知っている人は必ず人にも優しくなれるのだ。
私はそんな母は心からすごい、と思う。
何しろAさんは今、既に5ヶ月以上元気に暮らしている。ガチガチに硬くなっていた心が
ほぐれ、身体中の細胞がようやく活力を生み出したのだと、心から嬉しく思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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