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実家の片づけをしたら「カムカムエヴリバディ」になった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:塚本 よしこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「たわけ―!」
「たわけ」は方言で、アホ! みたいなことだ。
私のおじいちゃんは、いつもそんな風におばあちゃんを怒っていた。
体の大きいおじいちゃんが、小さなおばあちゃんに毎日のように言うので、おばあちゃんが余計に小さく見えた。
でも、おばあちゃんはいつも「はいはい」って笑っていた。
 
小さい時の私は、なるべくおじいちゃんを怒らせないよう、もしくは好かれようとしていた。おじいちゃんについて掃き掃除の仕方を教わると、それを真似てやり「家の中でじいちゃんの次に上手だ」なんて言われて嬉しかったりもした。
 
ある日、母と追いかけっこをしていたら、見ていたテレビの音が聞こえなかったようで、背中をバシッと叩かれた。
私は痛いのと、びっくりしたのとで大泣きをしたのを覚えている。
とにかく私の中で、おじいちゃんは、怒らせてはならない怖い存在だった。
 
ハムを買ってくると「贅沢だ」とおじいちゃんに怒られたこと、シシャモを食べてればいいと言われたことを後に母から聞いた。
他にも様々なエピソードを聞いたために、私の中でおじいちゃんは、長い間、お母さんを苦しめた人、苦手な人になっていた。
 
「実家の掃除しなきゃ……」
そう思いながらも、そこまで手が回らない人が多いのではないだろうか?
自分の分だけではなく、親の物など色んなものが眠っている。
夏休みの宿題のように、手を付けなきゃいけないが、なるべく後回しにしたい事にようやくこの春着手した。
 
押し入れからは、過去にタイムスリップしたかのように色んな物が出てきた。
そして、奥から出てきた物を見る度に、色んなことを思った。
 
おじいちゃんの膝の中で、運動会にお弁当を食べている写真。
おじいちゃんは優しい時もあったんだろうか?
 
髪の毛がふさふさの若い頃の父の写真。
お父さん、なかなかカッコいいじゃないか。
 
父が母に送った装飾品の数々。
これで、喜ばそうとしたんだろうな……。
 
賞状や卒業証書。
賞状はバンバン捨てられるけど、筒に入った卒業証書ってなぜか捨てられないな。
 
全巻揃った百科事典や沢山の絵本。
愛されてたんだな。娘に対して色んな願いがあったんだろうな。
でも、その期待にそぐえなかったような、申し訳ないような気持ちにもなった。
 
そして、そんな中でも特にびっくりしたのは、おじいちゃんの物が出てきたことだ。
それはもう虫に食われているような、ところどころ穴が開いている掛け軸と、戦争に参加したことによりもらったメダルのようなものだった。
 
掛け軸を破れないように丁寧に開いて思わず声が漏れた。
「え、まじで」
風景が描かれていると思って開いた掛け軸には、「戦争」をイメージさせる文言と、日の丸が描かれていた。
カビたような匂いと一緒に「戦争」というものが急に迫ってきて、圧倒されてしまった。
 
古びたメダルを見ても「うっ」と息が詰まるような感じがした。
このメダルは調べてみると、戦役や事変に従軍ないし関係した人に与えられた従軍記章というものだと分かった。
色んな物を勢いよく捨てていたが、それをごみ袋の中に捨てることは出来なかった。
再びケースに入れて、棚に戻した。
「ふー」大きなため息が出る。
その時、最近までやっていた朝ドラの「カムカムエヴリバディ」を思い出した。
 
それはヒロイン3人による3世代100年の物語だった。
最後の現代を生きるヒロインは、まさに自分と同じくらいの年代で、祖母に当たる初代ヒロインは戦争を経験していた。
私たちは今、幸せな時代を生きているけれど、ほんの2代遡るだけで、そこには「戦争」というリアルがあった。
 
その掛け軸や従軍記章により「戦争」が急に身近に感じられたと同時に、ある思いが私の中に飛び込んできた。
「おじいちゃんも大変な時代を生きてきたんだ……」
すると、今までおじいちゃんに対して持っていた、わだかまりのようなものが溶けていった。
 
あの荒々しさも、怖さも、私たちへの接し方も、大変なことを経験してきた故に出来上がったもののように思えた。
強いおじいちゃんだったけど、怖さや辛さを体験してきたに違いない。
戦争のことは何も語らなかった。
そして、今の平和を享受する私たちに羨ましさのようなものもあったのかもしれない。
 
両親の荷物の中に紛れて、どうして少しだけおじいちゃんの物が混ざっていたのか?
今になって分かる。父もきっと、今まで幾度となく整理をしてきたけれど、あの掛け軸と従軍記章だけは、捨てるに捨てられなかったのだと思う。
私も思い切って捨てることが出来なかった。それぐらい重たい物だった。
 
実家の片づけは、まさに「カムカムエヴリバディ」の全編を一度に見たかのようになった。
3世代の歴史に思いを馳せることで、平和の有難さを実感するとともに、先代に対して感謝の気持ちが湧き、今を尊く感じることが出来たからだ。
そして、ずっとわだかまりのあった関係に変化がもたらされた。
おじいちゃんに対して持っていたちょっとした怒りのようなものが、なくなっていった。
朝ドラを見ていた方はご存じのように、長年あった家族のわだかまりが最後にようやく解消された。そのわだかまりは、誤解や事情を知らないことが発端だった。
 
片づけが進んだ部屋の窓を大きく開けると、春の強い風が部屋の空気を洗い流した。
すっきりとして気持ちがいい。
もうすぐ連休だ。
今までとはちょっと違った心持ちで、久しぶりにお墓参りに行きたいと思った。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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