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メディアグランプリ

ネットショッピングに愛と感謝を込めて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤嶺里美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
楽天が、今年で25周年を迎えるらしい。
 
初めに断っておくが、楽天の回し者ではない。
楽天、というより、ここ四半世紀で急速に発達した、ネットショッピングというもの全体に、心から感謝をしたいのだ。
 
ネットショッピングが、我々の日常生活を格段に便利にしたことは言わずもがなだが、感謝しているのはそこではないのだ。
自分ではなく、「自分ではない誰か」を幸せにする一端を担ってくれたことに、深く感謝を捧げたい。
そして、25周年、という数字を見て、確かに、20年以上経ったのだ、と私の胸は感慨深さでいっぱいになったのだ。
 
 
 
2000年代も中盤に差し掛かる頃、私の勤めていた会社では、楽天で買い物することが大ブームになっていた。当時、楽天が少しずつ、一般社会に浸透し始めた頃だった。
IT企業に勤めていたため、この手のことに飛びつきやすい人種が、多数いたこともあっただろう。あれを買ってみた、これを買ってみた、という話題には事欠かず、その度に盛り上がった。
 
当時、新人の社会人だった私も例外ではなかった。自他共に認める「財布の紐の硬さ」を誇る私すら、「何か買いたい、何か買うものないかな?」と思う始末であった。
それほどまでに衝撃的だったのである。
 
今の人にはわかりにくいかもしれないが、考えてもみてほしい。
 
楽天が出てくるまでの社会は、何か欲しいものがあったら、その商品の品揃えが良さそうな大きな店に行き、店内をウロウロして商品を見つけなければならないのだ。
置いてある少ない選択肢の中に、気にいるものがあれば良いが、なかった場合は、また、同じことを繰り返さねばならない。
 
それでも、最終的に望みのものが手に入るとは、限らないのである。社会人になり、終電間際に帰るような生活をしていた私は、投資した時間を考えて気が遠くなったこともしばしばだ。
 
それが、家にいながらにして、右手でポチれば手に入るのである。品揃えも、全国津々浦々の溢れるほどの選択肢から選ぶことが可能だ。夢のような世界がやってきたのだ。
 
二代巨頭のもう片方だったAmazonはその当時、何でも屋ではなく、ネットの本屋だった。(Amazonは、書籍販売から始まったのである)しかし、話題の本から希少本まで、ありとあらゆる書籍が手に入る、これまた魔法のような本屋だったのである。
 
 
夢の世界と魔法の出現に、貧乏性の私すら夢中になった。
わあ、こんなものがある、こんなに選べるんだ、ポチれば週末には届くんだ。すごい。簡単。早い。なんて楽しいんだろう。まさに、ショッピング・イズ・エンターテイメントだ。(くれぐれも、私は楽天の回し者ではない)
 
 
 
「なんか、買いたいものないかな〜」
 
その日も、「何かポチりたい」と思いながら、楽天をウロウロしていた。そしてふと、お歳暮特集が目に入ったのである。
 
若い新人社会人に、お歳暮をあげるような関係の人は普通、いないものだが、私には一つ、心当たりがあった。
大学生の頃、京都の湯豆腐屋でバイトをしていたのである。私の母ほどの年齢の女将さんと、板前さん、パートのおばさん達で運営されており、学生は、私を紹介してくれた大学院生と、女将さんの知り合いの高校生1人のみだった。
あまり裕福ではない大学生だった私は、その湯豆腐屋のまかないで食べさせてもらっていたようなものである。
 
「何か、贈り物をしてみようかな?」
 
……半分は自分の買い物欲だったことを白状するが、私はこの思いつきがえらく気に入った。ウキウキとお菓子を選ぶと、湯豆腐屋の住所を配達先に指定して、ポチリと決定ボタンを押す。
女将さんや板前さんは喜んでくれるかな? きっと、びっくりするだろう。
皆が驚いているのを想像しながら、この小さな仕込みに1人で楽しい気持ちになった。
 
数日後、女将さんから電話があった。喜んでくれているのが伝わってくる。
「元気にしてるの?」
軽く世間話をし、板前さんやパートのおばさん達も、かわるがわる受話器の向こうに現れる。皆の声を聞き、遠く離れた地で私のことを案じてくれている人たちの存在を感じて、私の心は暖かくなった。
ああ、贈り物って素晴らしいな。
 
以来、ナント、20年間、盆暮れの年に2回の贈り物が続いているのである。
 
そのうち、実家に帰る際に、たまに京都で途中下車し、お店に顔を出すようになった。卒業してそれきりだと顔を出すのは多少気まずいが、贈り物のおかげで距離が縮まっているのである。
 
顔を出すと、必ず湯豆腐をご馳走になった。時には、湯豆腐屋に隣接している、女将さんの家に一泊させてもらうこともあった。
「私の次女が返ってきた」
一人暮らしの女将さんは私をそう呼ぶ。(ちなみに長女は、私より年上の、同じく元バイトのお姉さんらしい)
私にとっても、女将さんは「京都のお母さん」であり、湯豆腐屋は「私のもう一つの実家」になったのである。
 
 
 
きっと、楽天がなかったら、こうはならなかっただろう。
なんせ、贈り物をしようと思い立ってから、デパートの地下に行き、お菓子を選び、店員さんに声をかけて、手書きで伝票に住所を書き、お会計をしてようやく「贈り物」が完了するのである。
これを20年である。
考えただけで無理ではないか。
 
ネットショッピングは、自分の生活を便利にしてくれただけでなく、自分以外の誰かをちょっと幸せにする、そのハードルを格段に下げてくれたのだ。
夢の世界は、自分の大切な人にも、魔法の粉をパラパラと振りかける楽しみを与えてくれたのである。
 
 
母の日や父の日に贈り物をする人も、昔より増えたんじゃないかな??
 
根拠はないが、勝手にそう思っている。
ネットショップ界のマーケティングの影響もあるかもしれないが、戦略でもなんでも、贈り物が手軽になったことで、世間のお父さんお母さんの笑顔が増えたなら、それで何よりに思う。
 
 
 
今年もそろそろ、お中元の季節がやってくる。
贈り物は、贈り物をする方も、ちょっぴり幸せにしてくれる。
 
「今年は、何にしようかな」
 
湯豆腐屋の人たちの顔を思い浮かべながら、21年目の贈り物を、ゆっくり考え始めた。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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