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私のスイーツづくりの始まりは天火だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:飯髙裕子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
天火というものをご存じだろうか?今の電気オーブンと同じ機能を持つガス火オーブンである。私がお菓子作りを始めたときにはじめて母が買ってくれた調理器具なのだ。
 
もともとお料理には興味があったが、中学の頃よく学校帰りに寄っていた本屋で一冊のお菓子作りのレシピ本を見つけた。
 
母にクッキーを焼きたいとせがんだのかもしれない。そのころ電気オーブンはまだそんなに一般的ではなかったし、天火だってそんなに安かったとも思えないが、母は私に天火を買ってくれた。
材料を計り、混ぜて、型を抜く。火加減を調節して天板にクッキーを並べ、中に入れる。
しばらくするとバターのいい香りがしてきて、中をのぞくとこんがりと色づいたクッキーが見えた。
開けるまでのドキドキ感と、開けたときのわくわく感がたまらなく気持ちよかった。
食べるのがもったいなくて、そばで待っていた妹になかなかあげず母に怒られるくらいだった。
 
それから私はせっせとお菓子を作った。レシピ本にはいろんな種類のお菓子の作り方が乗っていた。何回か作るうちに、少し難しいものもできるようになっていた。
しばらくすると、母が近所のおばさまたちとお茶を飲むときのパイ生地のコルネを頼まれ、母はどうも自慢げにそれをみんなに披露したらしい。
なんだか、私は大人に認められたような嬉しさを感じた。
 
大学に入って下宿するときに私は天火を持って行った。お菓子作りは私の日常になっていたからだ。
そのころ、ケーキも焼くようになっていたのだが、いまいち満足していなかった。と言うのも、スポンジケーキの生地はふわふわだけど、お店で売っているようなきめ細かさに欠けていたからだ。私はどうしてもそのきめ細かさを作り出したかった。
 
色々調べて粉の配合や、卵と砂糖の割合、ちょっとずつ変えて試作を重ねた。
まるで化学の実験のようだと思った。試薬を変えたり分量が違うと化学反応も変わって違う物質ができたりする。お菓子も同じ卵や粉を使っても分量や調理の仕方で違うものが出来上がるからだ。
 
何回も作るうちに甘さが控えめできめが細かくふわふわのケーキが出来上がったときは天にも昇る心地だった。
よく友達に、「材料を計ったりいろいろめんどくさいじゃない」と言われたりするのだが、なぜかそういう過程が一切苦にならない。むしろ、新しいものを作るときはレシピをどのくらい変えても大丈夫か、そっちが気になってしまう。
どうしてなんだろうと思っていた。
私がお菓子作りに魅せられるのは、こんなドキドキ、わくわくな感覚が好きだからなのだろうとだんだんわかってきた。
それだけじゃなくて、もう一つ理由がある。
作ったお菓子を食べる相手の反応が嬉しいのだ。自分でも満足できるお菓子ができたとき、作ってあげた人は笑顔になる。「おいしい」の一言とその笑顔で作ってよかった。また作ろう。と気持ちが明るくなるからだ。
そうか。私はお菓子を作ることで、誰かの喜ぶ姿を見たかったんだなと改めて思った。
売っているおいしいスイーツはたくさんあるし、もちろんそういうものも大好きだけれど、私のスイーツはオンリーワンだということが私にとってとても大切なことだったんだ。
家族や友達に喜んでもらえるスイーツは、普通のレシピをもとに少しだけ私のオリジナルを混ぜ込んだ私だけのレシピなのだ。
 
中学の時買ってもらった天火は、古くなって結婚するときに手放したけれど、それに代わって電気オーブンが頼もしい相棒になっている。
あの天火がもしなかったら、今私はお菓子を作っているだろうか? いや、作っていないかもしれない。どうして買ってもらえたかも覚えていない魔法のような調理器具が私のお菓子作りの原点だった。あの時の母にとても感謝しているのだ。(言ったことはないけど)
 
オーブンの中で、ふっくらと膨らみ始めた生地が見える。
最近私の中でブームのシフォンケーキだ。
学生の頃にさんざん試行錯誤したふわっふわのきめの細かいスポンジケーキをはるかに超える柔らかさと軽さ。
これもまた元のレシピをほんの少し私流に変えてみたレシピになっている。
あげる人たちから口々に出てくる「おいしい」の言葉が心地よくて、ことあるごとにやっぱり作ってしまう。このケーキを食べたときの笑顔を想像しただけで、うれしくなって心が温かくなる。
 
きっとこれからも私はお菓子を作り続ける。子供達のために。孫たちのために。そして何より自分のために。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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