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メディアグランプリ

内戦の地で愛を知る


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ひさだまりこ(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
今思うと親不孝な娘なのだが「私のことは死んだと思ってほしい」家族にそう告げて、意気揚々と緊張高まるアフガニスタンにやってきた。後に夫となるパートナーが持たせてくれた金平糖をお守りにして。
 
青い空と乾いた大地がどこまでも続き、子どもたちが戦車の周りを無邪気に走り回っている。朽ち果てた戦車からは草木が芽吹き、黄色い花がそよ風に揺れていた。ここはアフガニスタン西部の都市ヘラート。
 
アフガニスタンでは、9.11同時多発テロをきっかけに20年以上続いた内戦が停戦を迎えた。国連や各国のNGOがアフガニスタンに流れ込み、一斉に戦後復興支援を始めていた。
 
その頃、京都のNGOでインターンをしていた私にアフガニスタン派遣のチャンスが与えられたのだ。迷う余地はなかった。不安よりも使命感や喜びの方が強かったのを覚えている。
 
私に与えられたミッションは戦後復興支援事業のアシスタント。教育、医療、農業、女性支援など、プロジェクトは多岐にわたる。
 
宗教や風習により、村の女性たちは家族以外の男性に顔を見せることができない。私には女性だからこそできる任務がたくさんあった。
 
土でつくられた民家を1軒ずつ回り、村の女性たちと会って話をする。水色のブルカで頭からつま先まで全身を隠している彼女たちもブルカを上げるととても美しい顔立ちをしていた。
 
家庭の中でどんな風に暮らし、どんな問題を抱えているのか。外側からの支援を押し付けるのではなく、先入観を持たずに、村の女性たちの声を引き出すことは本当に難しい。毎日くたくたになるまで走り回った。
 
教育現場では、ユニセフのBack to Schoolキャンペーンにより、教育を禁じられていた女の子たちが家庭から学校に戻ってきた。
 
ユニセフから寄附されたリュックを背負って通学する女の子たちの笑顔がまぶしい。テントだけが張られた青空教室は子どもたちの明るい声で溢れかえっていた。
 
日常生活ではできるだけ現地の人たちと同じ暮らしを心がけ、毎朝、焼きたてのナンを買うため、窯焼きのナン屋さんに並ぶ。これがものすごく美味しい。
 
小さな商店にはイラン製のジャムやチーズが並び、新鮮な野菜や果物が山積みになっている。毎日、商店に顔を出しているといつの間にか顔なじみになり、ペルシア語で簡単な会話ができるようになった。
 
週に1度の休みの日にはアフガニスタン人のスタッフが誘いに来る。
 
「今日は天気がいいから、ピクニックに行こう」
 
「町のマーケットで爆弾テロがあったから、事務所から出ないように本部から指示が出ていて…」
 
そんなことが日常茶飯事だった。スタッフは笑って答える。
 
「テロがあるからピクニックに行くんだ。人が集まるマーケットは危ない、町の外れまで出かけてみよう。僕が生まれる前からずっとこうなんだ。事務所にいたって爆弾が落ちれば一緒だよ。」
 
彼らは内戦の中で生まれ、内戦の中で育ってきた。その一言にはものすごい重みと説得力があった。
 
内戦やテロに怯えて今日を無駄にすることはない。幸せな明日や明るい未来なんて誰にも約束はできない。だからこそ、ただ今日を生きるだけ。他に何の選択肢もない。
 
ピクニックに行く途中にも、ミサイルで破壊された建物や銃撃戦の後が残った穴だらけの壁面をたくさん見かけた。多くの人が命を落としたのだろう。そういう場所はなぜか冷たく、時が止まっているような感覚があった。
 
生と死が同じバランスでいつも暮らしの中にある。そして、そのバランスはいとも簡単に崩れてしまう。だからこそ、生がより輝いて見えるのかもしれない。
 
村の女性たちには人生の選択肢も自由も与えられてはいなかった。けれど、家族が誰ひとりとして命を落とさず、1日を終えられることの幸せを彼女たちは誰よりも深く知っていた。
 
そして、内戦の地で多くの女性たちに出会い、わかったことがある。命が失われやすい場所ほど、命が多く生み出されるということ。愛とSEXの重要度が限りなく高いのだと思う。
 
生死が紙一重に存在するところほど、選択肢は少なく、人はただ本能や本質に従い生きることができる。そこに人としての美しさとたくましさがあった。
 
内戦中もたくさんの命が生まれ、そして失われていった。その命の循環の中で、愛することや愛された記憶が、生き残った人々の心を支え続けていた。
 
形あるものはいつか失われる。いつ戦争が起きても、時代や世界の価値観が変わっても、揺るぎなく守り抜けるもの。それが唯一、愛なのだ。
 
平和しか知らずに生きてきた私が、内戦しか知らないアフガニスタンの人々に出会い、人を愛することの尊さを知った。
 
あれから20年。2021年の米軍撤退により、アフガニスタンは再び戦火にさらされ、人道危機の真っただ中にある。
 
今の私にできることは一体なんだろう。京都の空を見上げる。この青い空が遠いアフガニスタンにつながっている。そうだ、私たちにできることもまた唯一、愛なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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