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メディアグランプリ

ロボットと歩む未来


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横山裕子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
その日の午後は、雷雨の予報だった。
久しぶりに出かけた東京で用事を済ませ、もう一件、足を延ばそうか迷っていた。
行先は、日本科学未来館の『きみとロボット展』だ。
迷った理由は、天候の他にもう一つ。
実のところ、あまりロボットに興味がないのだ。
 
さかのぼること2年ほど前、コロナ禍が始まって不安な日々が続いていた頃だった。
母の担当のケアマネージャーさんの話が、耳に残っている。
「コロナ禍で、介護の仕事に就くための外国人の研修生が入国できず、人手不足は免れないと思います。将来、私たちは、ロボットのお世話になるかもしれないですね」
柔らかい口調だったが、真剣な眼差しだった。
 
「ロボットにお世話になるってどういうことだろう?」
ふと、チャップリンの映画『モダンタイムス』のワンシーンを思い出した。
座ったまま固定されたチャップリンに、機械がスープを飲ませ、トウモロコシを差し出し、と食べさせるのだが、次第に機械が壊れ、チャップリンは食べ物まみれになってしまう。
何も考えずただ楽しんでいた時は、笑えるシーンだが、今となっては素直に笑っていられない。
けれど、その先に思考が進まず、ロボットは静かに心の底に沈んでいった。
 
コロナ感染者数が少しずつ減ってきて、「久しぶりに美術館にでも出かけてみようかな」とパンフレットを手に取っていた時だった。ふと、「ロボット展」という文字が目に入る。
ケアマネージャーさんの言葉が、よみがえってきた……。
 
「やっぱり、行ってみよう」
ほんの少しの好奇心と一緒に、ゆりかもめの駅に向かった。
 
ビル街を抜けると海が見える。窓の外の風景と、ゆりかもめの走行が、テーマパークのアトラクションに乗っているかのような気分にさせる。
予報通り、雲行きが怪しくなってきた。運河に暗雲立ち込める様子が、SF映画のワンシーンのようだ。「スターウォーズのR2-D2」を思い出し、すっかりその気になっている自分が可笑しかった。
船の科学館を横目に見ながら、のんびり歩こうと、東京国際クルーズターミナル駅を降りた。と……、ピカッ、ゴロゴロ、ポツ、ポツ、ザーッと滝のような雨。濡れるのはいいけど、雷が怖い! 慌てて小走りになる。
 
日本科学未来館が見えてきた。ホッとした。社会科見学だろうか。子供たちの列が見える。
チケットを購入し、中に入る……。
 
意外にも、最初の展示は「本」だった。
アイザック・アシモフの『われはロボット』という、ロボットのことを描いた最初のSF作品だ。100年以上前に「ロボット」という言葉を生み出したのは、作家のカレル・チャペックということにも驚いた。
ロボットの歴史を追いながら、お馴染みのASIMO(アシモ)やPepper(ペッパー)、歴代のロボット達の間を歩く。
災害現場や、産業、農業など、人に代わって作業するロボット達、人に装着して動きを助けたり、遠隔操作できる分身ロボット、実にたくさんの種類がすでに活躍していた。
「こんなに身近に、しかも、知らないうちにお世話になっているなんて」
ニュースで見かけたものもある。でも、関心が無かった。その間に、世界は進んでいた。
 
次に現れたのは、「弱いロボット達」だった。
「可愛い!」
今までの頑強なロボット達とは違い、サイズも小さく、何より愛嬌がある。
人間の力及ばないところを助けてもらうのではなく、話を聞いてもらったり、一緒に考えたり、寄り添ってくれそうなロボット達……。思わず、話しかけたり、触ってみたくなる。
社会科見学の子供たちが、楽しそうに、ロボットに話しかけたり、撫でてみたり、一緒に踊ったりしていた。その様子がとても自然で違和感がなく、これからは、子供たちが、ロボットと共に生きる未来を創っていく、そう強く感じた。
 
「あまり自分には関係ない」と興味を持たなかった「ロボット」だが、気付けば、身の回りのそこここに、その技術が活用されていた。
お掃除ロボット然り、スマートフォンの音声認識然り……。
よく耳にするAI(人工知能)と共に、これからも進化し続けるだろう。
詳しい仕組みや内容は、完全文系人間の私には解らない。
それでも、一つ気付いたことがある。
ロボットの体の構造、動くメカニズム、会話のやり取り……、それらは、大量の人間のデータに基づいて作られたものであるということ、ロボットを知ることは、人間を知ることでもあった。
 
私が学生の頃は、スマートフォンどころか、携帯電話もない時代だった。
この30年余り、ものすごい勢いで、生活を取り巻く環境が変化していった。
これから、どんな時代がやってくるのだろう。
期待と不安が入り混じった気持ちをそのままに、会場を後にした。
いつのまにか雨は上がり、青空がのぞいていた。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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