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メディアグランプリ

少年野球はどんな時代であっても、少年がいる限り不滅なのだ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:モトタケ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
ここは元首相宅の敷地だった場所だ。区営公園となった今、園内休憩所の2階は解放されていて見晴らしがよく、一面に広がる緑の芝が目に入る。午前中に利用する人がほとんどいないのは私にはありがたく、いつも貸し切り状態で読書やライティング作業に集中できている。
 
だが今日はいつもと全く違っていた。目の前の野球グラウンドで中学生による少年野球チームの試合が行われていたのだ。打球が上がるたびに歓声が響き渡り、やかましいのだが何故か心地よい。梅雨の晴れ間に差し込む日差しと相まって、夏の到来を錯覚させるほどだった。
 
(こんなの久しぶりだな~)(やっと思いっきり試合ができるようになったんだ!)そう思いながら眺めていた。
 
私の野球経験は無いに等しく、ルールくらいは分かるがさほど興味もない。しかし、こんなにも大声で意気揚々と歓声が行き交うとついつい見入ってしまう。また、このごく自然な光景をとても懐かしく思った。これまで我慢していた時間を取り戻すかのように選手、保護者、観客までもが一つの球を歓声とともに目で追っていた。
 
速球一投! シュビッ! → → バシッ!! とキャッチャーミットに叩き込まれる。
少年野球といっても中学生にもなると、投げる球は矢のような速さだ。
 
バスケットやサッカーとは違い、野球は選手同士の接触が少ないスポーツだ。ピッチャーが投げた球をバッターが打つまで試合は大きく進行しない。静と動のバランスが見ている側にも考える時間を与え、期待値をあおる。そしてオセロゲームの駒の様に、ほんの一瞬の出来事で試合の局面がひっくり返されてしまうこともある。
 
3アウトチェンジで攻撃と守備のチームそれぞれがグラウンド上で入れ替わると、ピッチャーとキャッチャー、内野手、外野手でそれぞれウォーミングアップの球回しが始まる。そして時おり相手を牽制するかのように猛烈な速球を繰り出すのだ。
サードからファーストまで対角線で15メートルはあるだろうが、彼らの投げる球はまるで弾丸の様に一直線にゆるむことなく飛距離を伸ばし、バシッ! と相手のグローブを叩きつける。放物線の理論をまるで無視しているようだ。(球に回転がかかっている為であろう)
 
試合中バッターが打った打球を、その場面場面で然るべき場所へ素早く、正しく投げる所作は、なんだかコンピュータープログラミングや商業ロボットの動きに似ている様にも思えた。機械的でありながら人間の躍動感に溢れている。選手同士を繋いでいるものはチームとしての連帯感、友情そして何より、『信頼』であろう。
 
試合が終わった後も彼らは次の試合のためにトンボ(木の棒)を使ってグラウンド整備を行っていた。相手チームに敬意を払い、審判員に感謝をし、グラウンドに向かって一礼をし皆笑顔で去って行った。
 
勝手な推測だが、彼らの大半はこれから高校球児になるのであろう。大人になってもずっと野球を続ける者もいるだろう。チームの監督や審判員の方々も元々は少年球児だったのではないだろうか?
 
そう思ったら、ふと自分の父親の事を思い出した。私の父はスポーツとは無縁の人だった。少なくとも私の知っている父はずっとそうであった。しかし晩年になって何かの拍子に、自分は中学、高校まで野球部のピッチャーで、キャプテンだったとカミングアウトされた時には思わずのけぞって驚いた。『またまた、お父さん冗談でしょ!』とあまり詳しく聞かなかった事が今となっては少し悔やまれる。マウンドに立つ若いころの父の姿がどうしても想像できない。野球に関するエピードを聞かせてもらった事が無かったのはもちろんのこと、子供の頃にキャッチボールをしてもらった覚えさえも無いのだ。
 
父の葬儀の日の事もフラッシュバックした。交友関係において家族でも知り得る人数が少なかった為、ごく限られた方々と新聞に5行程度の訃報のご案内を出した。会場は50人規模の式場であったのに対して、当日は100人を越える方々が来られたので、法要時に追加席では追いつかず、多くの方を立たせてしまい、父に無言の叱責を受けた。
献花、出棺の際、一人の男性が目についた。割と軽装で他の方々と違う雰囲気は、もしかしたら部外者が紛れ込んでいるのか? と思ってしまったのだ。年相応に老いてはいたが、どこか枯れない若々しさを持っているような印象も目につく要因であった。ご参列いただいたお礼を述べてから父との関係を訊いてみた。すると、
 
『中学の野球部であいつの球を受けていたんですよ』
 
清々しく、まるでそれを誇りに思ってくれていると私は勝手に解釈し涙がこぼれた。
新聞の案内を見て出先から来ていただいたようだった。長い年月が経っても少年野球で培われた友情、精神がこれほどまで長く続いている事を嬉しく思い、私は何度も何度もお礼を言った。
 
父とこのご友人も、今ここで試合をしていた少年達とルールも道具も何ら変わりなく、遠い昔に野球を楽しんでいたのだろう。年月は経ち、年老いてもチームメイトは野球を通してできた『信頼』でずっと繋がっているのだ。少年の心のままで。
 
父がなぜ野球の経験談を全く語らなかったのかは知る由もないが、きっと昭和の男児らしく、その時々で悔いなく完全燃焼していたのだろう。潔く、決して忘れてしまったわけではないのだが、わざわざ自伝的に多くを語る事をしなかったのだと思いたい。
 
今回の2000文字ライティングは彼ら少年球児達のおかげで試合が終わるまでに即興で語ることができた。彼らの輝きが私を動かしたのだ。今後の活躍に期待し、後で声をかけてみようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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