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ある1枚の写真を大切にしている理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:牧 奈穂 (ライティング・ゼミNEO)

私には、とても大切にしている写真がある。
その写真は、息子が中学1年生の頃、初めて私から離れて、10日間のキャンプに行った時に撮影されたものだ。中学生にもなれば、親から10日間くらい離れることは、珍しくはないのかもしれない。だが息子は、それまで、お泊まりが大嫌いな子だった。祖父母の家に泊まりに行くことすらしなかったし、1泊の学校行事も嫌でたまらない子だ。だから、10日間家を離れるだけで、すでに冒険だったのである。

息子が中学生に上がる前に、知能検査をしたことがある。いわゆるIQが分かる検査だ。こういう検査をする時は、大概何かしら日々に問題があることが多い。息子は、学校が好きではなかった。優しい子だけれど、同時にとても育てにくい子だ。母親のカンで、何かが人と違うことを感じていた。だから、アスペルガーなどの特徴を調べてみたが、似ているようでしっくりとこない。息子のIQは、150近いことがわかった。通常、人のIQは100〜110、東大生の平均IQは、120だそうだ。私の父がIQが高かったと聞いているから、遺伝もあるのかもしれない。
IQが高いとどうなるのだろう? 勉強が理解しやすかったり、得なことがあるのだろうか? ネットで調べてみたが、幸せというよりは、孤独感が高まることがわかった。息子が、小学生の頃、ずっと「学校」という箱の中が合わないことが、何となく理解できた瞬間だった。いつも、どこにいても、居心地が悪い。やっとその理由が見えてきた私は、今までの時間を取り戻すかのように、IQの高い子について調べ始めた。

調べて行くと、「ギフティッド」という言葉にたどり着いた。アメリカでは、息子のような子を、「ギフティッド」というカテゴリーで呼ぶらしい。勉強がついていけない子を特別クラスで学ばせてあげるように、本来は、ギフティッドも、学校でのサポートが必要な子なのだそうだが、放って置かれている。
サポートが必要な理由は、とても難しい数式が理解できるかと思うと、精神年齢は、同じ歳の子以下だったりもして、一人の子の中で、凹凸が激しく出てしまい、何でもできる優秀な子ではないからなのだ。

ギフティッドについて調べて行くうちに、ギフティッドの子供達に指導をしている先生に出会った。毎年、山に子供達を連れて行ったり、キャンプに連れて行っている。子供達ができないと思うようなことにチャレンジさせ、自分自身の中にある本来の魅力を見つめる教育のようだ。ギフティッドの子は、周りと合わないことが多いため、自己肯定感が低い子が多い。そして、一番よくないケースになると、自らの死を選ぶ危険性すらある。難解な数式が理解できるから素晴らしいのではなく、自分が自分らしくあるから素晴らしいのだ、と自分自身の魅力を見つめていくことを、体験を通して学ばせる教育だ。アメリカでギフティッドの子供達を教えたという経験豊富な先生が、息子にもキャンプに行くことを誘ってくれた。

お泊まりの嫌いな息子は、虫も嫌いだ。
「虫がたくさん出るようなキャンプには、絶対、行きたくない」
息子はとても行くことを嫌がった。だが、息子を理解してくれる環境に少しでも置いてあげたくて、半ば強引に行かせることを決めた。

ある1枚の写真を見ると、涙が溢れてたまらなくなる。
その写真は、息子が海岸で、年下の男の子と座って、貝殻拾いのようなことをしている時の1枚だ。海岸には、大きな貝殻が落ちていたのだろう。そして、その貝殻を拾い、息子がそっと男の子の耳に押し当てている。時間がゆっくりと流れているのが、伝わってくる。
「ほら、音がするでしょ?」
そう言っているかのようだ。
あんなに嫌がってキャンプに行った息子が、私の知らない土地で、とても優しい穏やかな眼差しで、男の子と海岸で過ごしている。
キャンプに行く前にあった、トゲトゲした険しさが抜け、穏やかな、素の息子のまま、海岸に座っている。そして、それを少し離れたところから、ずっと先生は、温かな眼差しで見ていてくれたのだろう。まるで、その時の先生の心までもが、写っているかのようだ。おそらく、シャッターチャンスを待っていたわけではないはずだ。子供達を温かく見守る先生の「心」が撮った写真は、見ているだけで幸せな気持ちになり、涙が出てたまらなかった。息子を、このように温かな眼差しで撮影してもらえたことも、感動的だった。

写真には、撮影者の「心」が表れる気がする。
被写体をどう見つめるか……撮影者のその心までもが、写っている気がするからだ。
その瞬間は、二度と訪れることはない。だから、「瞬間」を切り取るように、写真を撮る。写真を見ながら、その先にある撮影者の心が伝わってくるような写真が、私は好きだ。

時が過ぎ、息子は変わり、そして私自身も変わっていく。もう二度とあの瞬間は、戻ることはない。だが、どんなに時が経っても、その1枚の写真を見ると、あの時の息子、あの時の私の心も同時に思い出すことができる。たかがデータ、たかが写真1枚かもしれないが、写真には、撮影者の心までもが添えられている気がする。
だからこそ、どんなに時が過ぎても、どんなに息子が変わっても、息子の成長の「瞬間」を切り取ったこの写真を、私は大切にして行くだろう。

***

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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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