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メディアグランプリ

もうひとつの天の川で密会していた、織姫と彦星


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小西 裕美(ライティング・ゼミNEO)
 
 
実は、天の川は夏だけじゃなく、冬も見ることができる。
ただ、夏の方が銀河系と地球の距離が近く、輝く星たちがきれいに見えるらしい。
 
天の川といえば、織姫と彦星が思い浮かぶが、ふたりは一年に一度、七夕の日しか会うことが許されていない。なんでも、恋に落ちたふたりは、夫婦生活が楽しすぎて、全然働かなくなってしまったそうで、それに怒った織姫のお父さんが、ふたりを引き離したらしい。
 
この会えなくなった理由を聞くと、ちょっとおバカさんなふたりに思えるが、これはよく考えてみると、ちょっとすごいことだ。遠距離恋愛なんてものじゃなく、364日別居婚。久しぶりに顔を合わせたふたりは、一体どんな話をするのだろうか。そもそも、そんな状態でお互いを想い続けることができるのだろうか。まさに純愛じゃないか。
 
 
ある冬の日、私はホットワインが飲みたくて、出店に並んでいた。
もうすっかり夜になり、駅から歩いてくるだけで、すっかり手や足が冷えてしまった。
早くスパイスがたっぷり入ったホットワインで、あたたまりたい。
 
もうすぐ、次のプロジェクションマッピングがはじまる時間だ。
私は友人と、イルミネーションのイベントに遊びにきていた。クリスマスまであと2週間ほどだったこともあり、会場はカップルや友人同士で賑わっている。
 
ようやくホットワインを受け取り、会場に設置されたテーブルとイスをさっと見渡すと、ラッキーなことに、ちょうど一席だけ空いていた。友人と急いで、席に座る。
ようやく、ホットワインにありつけた。あぁ、美味しすぎる。
 
すると、後ろから誰かに声をかけられた。
「すみません、席が空いていなくて、もし良かったら相席させて頂けませんか?」
 
顔を向けると、そこには60代ぐらいの紳士が立っていた。
少し丸みのある黒のハット帽を被り、スーツの上に光沢のあるウールのチェスターコートを羽織り、柔らかそうなカシミアの赤いマフラーを首周りに掛けている。
切り揃えられたグレーヘアが、紳士らしさを際立たせていた。
 
後ろには、その紳士に手を引かれている、マダムが立っていた。
同じく上質そうなノーカラーのロングコートに身を包み、足元は黒いタイツに、少し高さのあるヒールだ。バッチリ決まった格好とは裏腹に、とても穏やかそうな雰囲気の女性だった。でも、お化粧の感じから、ああ、今日はデートなんだな、とすぐにわかった。
 
私たちは、空いていたイスを譲った。
ふたりがどうしても絵になってしまうので、私はチラチラとみてしまう。
今日は平日だし、仕事帰りにデートかな?
仕事もプライベートも楽しんで、なにより仲が良さそうで、憧れちゃうなあ、なんて思いながら、ふたりをみていると、紳士と目があった。
 
紳士は、優しく微笑みながら、声をかけてきた。
「僕たち、どんな関係やと思う?」
 
え……?
もう、これを聞いてくる時点で、絶対まともな関係じゃないよなあ、と思ってしまう私。
まさかこの上品な紳士とマダムが、ふ、不倫なの? と思ったけれど、紳士もマダムも手袋をしていて、指輪の有無は確認できず、確証を得られない。
 
「ふ、夫婦だと思ってました」
と、答えると、紳士はなんだか、すごく嬉しそうに、
「違うんだなあ」
と答えた。
 
「僕たち、毎年イルミネーションを一緒に見に来ていて。でも、会うのは年に一回だけ。ね?」
と言いながら、マダムの方へ笑顔を向ける。
 
誰かに話せることが嬉しかったのか、紳士はそのまま話を続けた。
ふたりとも経営者で毎日忙しい日々を送っていること。この関係がはじまってから、もう数十年以上経っていること。紳士は福岡で、マダムは北海道に住んでいること。年に一度、この時期に大阪で会っていること。
 
自分たちの関係については、明言しなかったが、一言では言えないような、なにかを積み重ねてきた関係なんだろう。それを言葉に表すと不倫というのかもしれないが、ふたりの楽しそうな姿を見ていると、そんな言葉で片付けてしまうのは、なんだかもったいないような気がしてくる。
 
だって、どこからどうみても、ふたりは恋しているのだ。
よく見てみると、すぐにわかる。きっとこの日のために揃えたのであろう真新しい洋服、席にエスコートするときに感じた、少しのぎこちなさ、何にもおもしろいことはないのに、顔を合わせる度に微笑むふたり。
 
そのとき、プロジェクションマッピングがはじまった。紳士とマダムが同じ方向を向くと、ふたりの瞳にきらりとカラフルな光が灯った。なんかもう、完璧だった。
ふたりの仲睦まじい様子をみていると、まるで少年と少女のようで、そう、まるで想像上の彦星と織姫に見えてくる。
 
プロジェクションマッピングが終わると、
「じゃあ、ありがとうね」
と言って、ふたりは立ち去って行ってしまった。
 
あのふたりが次に会うのは、1年後か。
そう思うと、なんか不思議な感じ。あのふたりの絆の特異さを、ひしひしと感じる。
 
このイルミネーションは、コロナウイルスが感染拡大したときも、規模を縮小して、ライトアップだけは実施していたようだ。でも、離れて暮らしているふたりだから、会えたのかな? と少し心配になる。
 
だから、街角で笹に短冊が揺れているのを見る度に、思ってしまう。
今年も冬の天の川がかかる日に、ふたりが会えますように、と。
 
そして、もうひとつ。
もし本当に不倫なら、どうか紳士の奥様には一生バレませんように……!
 
 
 
 
***
 
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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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