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メディアグランプリ

今に居続けることの安心感

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:菊地紀子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
座敷のあるレトロな鰻屋さんが好きだ。
 
「うな重とビールお願いします。」
「はーい。少しお時間かかりますけど、よろしいですか?」
 
30分以上待つのは想定内。
鰻の高値は続いているし、鰻をいただける機会は少ないんだけど。
それでも、夏になると一人ではなく不思議と家族で行きたくなる場所。
 
もちろん、鰻は江戸時代から人気の食文化。日本人が好きなご馳走のひとつ。
ただ、今の世の中、これほど美味しいものがたくさんあるのに、なぜそこまで鰻屋さんに惹かれてしまうのか? 自分でも不思議で仕方ない。
 
理由をあげるとキリがない。
鰻が焼ける香ばしい匂い
焼きあがりを待つ間に飲む一品とビールの美味しさ
畳でリラックスしながら、待ってる間に弾む会話
お重の蓋をあける瞬間のワクワク感
鰻の美しいゴージャスな照り
濃いタレの染みた熱々のごはんのおいしさ
 
私はどうやら鰻を味わうのと同じくらいに「待つ」時間が楽しいらしい。
その点はじゅうぶんに納得できる。
家族が珍しく誰も文句を言わず、幸せな気分で何十分か待ち続けるって。
なかなかの幸福度じゃないかと思うのだけど、どうでしょうか?
 
と思うのは、普段の私は、残念なことに些細なことも待てずに焦っているから。
 
朝から電車の中で、降車にもたつくだけで舌打ちして不機嫌になる人を見かければ、
こちらまでイラつきが伝染する。
 
エラそうに言ってみた私も人のことは言えない。
ネットの通信速度が遅くなると、途端に不機嫌になってしまう器の小ささ。
チャットのレスが遅いと、損した気持ちになることさえある。
 
世の中のスピードについていこうとするあまりに、目を逆三角につりあげて緊張していて。
そんなときの自分の顔は、カンタンに想像できて怖くなってしまう。
しかも、焦って得た成果はたいしたものではないから、余計にバツが悪い。
 
だからこそ、「待てる」ことは一種の安心になるのかもしれない。
 
ヨガをしているときに、近い意味のことを言われることがある。
「今にいなさい」と。
師匠曰く、私の心は鉄砲玉のようにピューっと未来に行ってしまって、
今、行っているポーズや体の変化に意識がないという意味だと教えてもらった。
 
確かに、今この瞬間、災害など命の危機に直面する問題など起こっていない。
猛暑ではあるが、冷房の効いた涼しい部屋で、やるべきことを健やかにやれる。
当たり前に守られていることに感謝しかない。
 
それなのに、仕事や育児となると、未来のことが気になって仕方ない。
必要以上にうまくやろうとして、誰もが不安になってしまうらしいのだ。
先に先に意識をやると、人は自分で勝手に心配の種を作ってしまう。
 
ときどき、人生の中で、不安がなかった時期とかあったのかな? と考えてしまう。
思い出した。小学校くらいまで毎年、行ったおばあちゃん家の夏休みだ。
 
電車は1日数本だけ。コンビニもスーパーもない。
アイスが買えるのは15分歩いたところにある農協ストアだけ。
見渡す限りの青々とした田んぼと野菜畑が広がり、無限に蝉の鳴き声が聞こえる。
誰が見ても田舎だ。
 
外出するときもドアも窓も開けっぱなし。
おかげで、風がとおる広い座敷は十分に暑さをしのげた。
 
お昼前の11時すぎ。
おじいちゃんは、黙々と農具の手入れをしている。ときどき、煙草をゆったり吸ったり、犬の相手をしながら。
おばあちゃんは、冷麦のために、しいたけで出汁をとって麺つゆを作っている。
 
大人が丁寧に焦らず自分のやることを進めていると、自然と周りに居る子供も犬も落ち着いて過ごせていた。
農家の夏の朝は早い。
涼しいうちに仕事を終え、ひと段落すれば、昼前にはのんびりした時間が流れ始める。
畑仕事で体力を消耗した後だから、気温の上がる午後は自然と体を休めつつ、回復することをちゃんと意識する。
気候や自然にペースを合わせているので、無意識の感覚に近いのかもしれない。
 
改めて今になって気づくのは、今のことを考える方が健全なのだと。
 
優等生であろうと精一杯だった自分も同時に思い出す。
子供ながらに敏感で、周囲の顔色の変化に気づきやすかった。
母親は優しかったけど、きっちりした人だったので、常にプレッシャーを抱えていた。
小さいながらに親や学校の期待が理解できた分、それに応えることが当たり前になっていた。
 
だから、余計に何も心配しない田舎の夏休みが、心の解放を手助けしてくれたと思う。
何十年も前の記憶なのに、今もはっきり覚えている。
 
「お待たせしましたー。」
お店の奥さんのやさしい声とともに、丁寧に焼かれた香ばしい鰻が運ばれてきた。
 
鰻は蒸したり、焼いたり、調理に時間がかかるのはあたりまえで、30分くらい待つのは想定内。
だから、のんびり何もせず待つしかない。
裏返せば、機嫌よく出来ることをしていれば、何の心配もないということ。
 
「待っていました!」と鰻を口に運ぶと、次第にお腹と一緒に心も満たされていく。
 
必要以上に何かを得ようとしなくても、だいじょうぶ。
誰でも、人や自然とゆっくり関われたら、それだけで幸福度はアップするのだから。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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