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東大の呪縛


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高木優加(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「東大出てるのに私の方が年収高いんだー。すごい意外」
 
「こんなこともできないの?本当に東大卒なんだよね?」
 
「え?東大卒?ヤバ(笑)結婚相手見つけるの大変でしょ」
 
いずれも20年近く前に東大を卒業した私にここ数年で投げかけられた言葉だ。
 
世界の大学ランキングで東大が何位に落ちようと、この島国における「東大」ブランドは、良くも悪くも、未だ幅を利かせているようである。
 
今年1月に起きた東大理科三類に入学して医者になりたかったという名古屋の少年による東大前刺傷事件も記憶に新しい。彼は、一体「東大」に対してどんなイメージが持っていたのだろうか。想像するに「勝ち組」「エリート」「高年収」「成功」や「保証された生活」……などだったのだろうか。
 
しかし、東大を経験した人間はそれが真実ではないことを知っている。
 
東大の一学年は約人も三千人もいて、その中には、親も東大や国内外の有名大学出身、高級官僚、企業の役員や政治家等で、半分以上が東大に進学するような有名私立高校を卒業し、東大合格なんて当然の通過点の様に入ってきた学生がいる一方、私のように、親は高卒で、自分は地方公立高校出身で、何なら親も先生も本人も期待していなかったが、たまたま合格したような学生もいる。
 
そして、後者のような学生は、入学するや否や、狭い日本にも存在する本物の「天才」「エリート」の存在と、一方で、東大に合格したことで「意外とすごいのでは」と勘違いしていた自分は紛れもない「凡人」であり、大学受験ごときと違って、並大抵の努力ではどうしようもない何かが存在することを思い知らされるのだ。
 
そこから東大の呪縛は始まり、卒業後も終わることはない。運命のいたずらか東大に合格したことで自分の中に生まれてしまったプライド、周囲からの果てしなく高い期待と実際の自分とのギャップ、それを埋め合わせるために自分と他人に対してつき続ける嘘。そんなものに苦しめられている卒業生は結構いるんじゃないだろうか。
 
というより、「東大卒」に限らず、「社長や有名人などの息子・娘」、「名家の跡取り」、「帰国子女」や「ハーフ」のように、そんな何かしらのレッテルに人は苦しんでいるようにも思う。
 
ところで、このような凡人東大生の苦しみを増幅するものとして、「進振り制度」というものがある。東大は、受験の時点では進学する学部は明確には決まっておらず、一、二年生での成績によって、三年生への進学時に決定することとなる。そして、人気の学部は進学に必要な点数が非常に高く、東大に目標をもって入学しても、三年生の時点で学びたいことが学べないことが確定することがあるのだ。そのような不幸な学生は、「東大卒」の経歴を得るためだけに、特に興味のない学問を学ぶために残りの二年間(大学院もいけば四年以上)を費やし、また、そのため実際に履修せざるをえなかった興味を持っていない専攻学部と関連する就職先に(志望理由を捏造して)就職することがある。
 
私もそのような学生の一人であった。そんなことも一因となり、卒業後、納得できる仕事に就くことができず、いくつか職を転々としていたのだが、数年前に、外資コンサルに中途入社した。それまで特に経営コンサルタントの仕事に就きたいと思ったことはなかったが、たまたま出席した同社の説明会で勧誘を受け、また、転職エージェントに「絶対に後悔することのない職場」と強烈に勧められた(外資コンサルは年収が高いので、私が外資コンサルに転職すれば当然彼らの手数料も高額になる)のがきっかけだった。
 
しかし、やはり入社したものの、どうしてもやる気は起きない。経営コンサルタントなので、当然競合を蹴散らし、顧客企業の利益あげてナンボの世界である。入社前から薄々気づいてはいたが、高校時代から老子の思想を敬愛する私にとって、コンサルの価値観は自分のそれとはかなり異なっていた。
 
賢明な上司は、私を呼び出し「やりたくないことは、やらない方がいい。周りにも迷惑だし、自分のためにもならない」と言い、私はその日にプロジェクトを下ろされた。自分としては苦しみながらも頑張っていたつもりであり、流石にショックを受けた。
 
私は上司の言うことが正しいとはわかっていたが、「負けを認めたくない」、「まだ頑張れるかもしれない」、「別のプロジェクトでは成果を出せるかもしれない」などと、すぐには転職を決意することはできなかった。
 
しかし、結局その後も状況は変わることはなく、1年経ってようやく私は転職した。
 
転職先は障がい者の方の就労支援や、障がい児の発達支援に関連する企業だった。小学生の頃から元々興味のあった分野だった。この転職で、給料は外資コンサル時代の半分位になったし、福利厚生も全く簡素なものになった。「もったいない」と言う友人もいたし、コンサル時代の同期が頑張っているのを聞くと、「辞めなきゃよかったかな」と思うこともある。
 
でも、私は久しぶりに自分で選択をすることができたと感じている。また、不思議なことに、最近は冒頭で記載したような「『東大なのに』発言」を聞くことも滅多になくなった。
 
もしかすると、卒業後ウン十年をかけて、ようやく「東大」の呪縛から解放されつつあるのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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