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中卒でオール1だった私の仕事

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:柳澤理志 (ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
私の最終学歴は中卒であり、通知表はオール1だった。
 
テストで0点を取ったこともある。
 
通知表をもらう前に、
「全部斜線(/)にするか1にするかどっちがいい?」
と担任の先生に聞かれた。
 
きっとオール1というのは可哀そうだから、
オブラートに包んであげようという
思いやりだったのだろう。
 
しかし私は
「1でお願いします!」
と満面の笑みで答えたのだった。
 
高校に進学しようと思ったことがなく、
受験勉強はしたことがない。
 
偏差値なるものも計ったことがない。
 
理系文系の違いも未だによくわからない。
 
大学にランクがあることもピンとこない。
 
そんな私だが、少し前に、
国立大学の非常勤講師を3年間つとめたことがある。
 
初めてキャンパスに足を踏み入れた私が
大学生に成績をつけたときは
なんだか不思議な気持ちではあった。
 
私はプロの囲碁棋士である。
 
プロのトーナメント戦を戦うことや、
教室等のレッスンを生業としている。
先の大学の授業も、もちろん囲碁を教えたものだ。
(現在、全国約30の大学で単位の取れる囲碁授業がある)
 
「食っていけるの?」
 
とド直球で聞かれることもあるが、
なんとか今日まで生きている。
 
6歳で囲碁を覚えて、9歳のときに
「プロになりたい」
という気持ちをハッキリと自覚した。
 
その頃、大人に混ざって出た大会で勝って
賞をもらったことがいたく嬉しく、
そのあたりからこの志を抱くようになった。
 
囲碁をやっている、
というと同級生に
「ジジイ!ジジイ!」
と囃し立てられたこともあった。
 
いかに鈍い私でも
そこに悪意を感じたので悲しかったが、
確かに田舎で囲碁をやっていたのは
おじいさんたちばかりであった。
 
そのイメージが強いのも無理からぬことだろう。
 
でも実際、同年代よりも、
大先輩方に囲まれている空間の方が
居心地が良かったので、
 
「そうか、自分はジジイかもしれない」
と妙に納得したりした。
 
なぜ自分は普通ではないのだろう、
みんなが普通にやっていることができないのだろう、
なぜみんなが考えていることと違うことを考えるのだろう。
 
こんなふうに悩んだりもした。
 
しかしついに、「普通」の枠の中に
自分をはめ込むことはできなかった。
 
小学校まではそれなりに周りに合わせていたが、
中学校から本格的に囲碁修行の道にはいって、
学業の方は完全に捨てた。
 
もちろん、それ相応の覚悟あってのことである。
 
囲碁棋士です、と自己紹介すると、
「じゃあ頭良いんですね!」
と言われることがある。
 
プロ棋士になる人は、大体2種類に分けられると思う。
 
イメージ通りめちゃくちゃIQの高い人か、
全てを捨ててもその道に進まなければ
生きられなかった、クレイジーな人である。
 
なぜこれほど囲碁に惹かれたのか、
よく考えることがある。
 
私にとって最大の魅力は、
圧倒的な自由さである。
 
オセロであれば挟めるところしか置けない。
将棋であれば駒の動きは決まっている。
 
囲碁は、広い盤面の中で、
どこでも自分の好きなところから行ける。
 
まるで絵を描くように、
考えなくても感覚的にいける部分もある。
 
将棋の駒はすべて役割があるが、
囲碁はそれがない。
全てが等しく同じ碁石であり、
自分がそこに役割を与えることができる。
 
その役割も、局面によって常に変化する。
さっきまで王様のように
全てに優先して守らないといけなかった石が、
次の瞬間には周りのために犠牲となるべきときもある。
 
理不尽さが一切ないところも良い。
 
トランプのように、
手札の運みたいなものはない。
 
ヒキの強さみたいなものも、もちろんない。
 
全ての情報は盤上に開示され、
次の手を選択する全ての責任は自分にある。
 
審判のジャッジもない。
相手と自分だけの世界である。
 
とにかく、自分のペースでやれるのである。
 
そうやって考えてみると、
自分がこれまで述べてきた、
学校が合わなかった理由にもつながってくる。
 
他人の作った枠組みで、
他人に点数を付けられる。
自分で選択ができない。
 
真逆である。
 
そもそも私は、じっと座っているのも苦手である。
 
「え?じゃあなぜ囲碁を?」
 
と思われるかもしれないが、
対局中は自分が考えたいから
そこに座っているのであり、
自分のタイミングで席を外すこともある。
 
正確に言うと、「座らされる」のが苦手なのだ。
 
自分の意志と関係ない事を、
自分のペースと関係ない時間やらされる。
 
納得できないこともやりたくない。
 
教えられている内容も、
なぜ今これを、この方法で学ぶ必要があるのかも、
当時の自分には理由が見いだせなかった。
 
国語の時間に
「学校なんていらない」
というタイトルの作文を書いたり、
 
テスト中に寝て白紙で提出したり、
 
満面の笑みで「1にしてください」
と言ったのは、自分なりの反抗心からだった。
 
誤解なきように付け加えると、
学校の「システム」に
納得がいっていなかったのであり、
先生方に対しては敬意を持っている。
 
ちなみに言うと、
両親は共に小・中学校の教員である。
 
そのようなわけで、
私はこれを生業とする前から、
囲碁によって生かされてきた。
 
唯一、自分の100%の意思を表現し、
それに相手が応えてくれる世界だった。
 
居場所をもたらしてくれたし、
年齢、肩書き、言語さえも超えて
様々な人と出会うことができた。
 
囲碁には、多くの人をつなぎ、
多くの人の居場所となる力がある。
 
それは、私が囲碁をもっと広めたい理由の一つでもある。
 
そして、もちろんそれが、
私の棋士としての仕事である。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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