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メディアグランプリ

ポーター教授と大人の甘酒。そして、エビチリ・唐揚げ・コロッケ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:阿部真巳(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「うまい!」
買ってきたばかりの日本酒を口に含んだ瞬間に広がる甘味と酸味、そして炭酸のさわやかさが心地よい後味となり、お猪口に入れた液体を一気に飲み干す。
一言で表現すると“大人の甘酒”といった感じの味だ。
この後やることがあるので、お猪口1杯……2杯に抑えておいたが、あまりお酒の飲めない私でも、すぐに1本空けてしまいそうなほどの美味しさだった。
「やはり、スーパーMに置いてあるものは、間違いないよな~」
と言いつつ、買ってきたお惣菜のエビチリに手を付けようとしたが、妻に冷蔵庫へしまわれてしまう。
そんな私を見て妻は「そうね~」と気のない返事。
お猪口とはいえ昼間から日本酒を飲んでいる上、夕食のお惣菜を食べようとしたことに呆れているのかもしれない。
そんな美味しい日本酒を撮影し、SNSにアップすると、早速いくつかの反応がかえってきた。
そんな反応を見て、私のコミュニケーションは、まさにスーパーMと同じであると感じている。
 
北関東の片田舎に店舗を構えるスーパーMは昭和40年代に創業した1店舗のスーパーで、私が中学生の頃は、近所の人が行く何の特徴もない普通のスーパーにすぎなかった。
当時はスーパーも、あまり規模化・チェーン店化されておらず、このような小さなスーパーでも生き残れた時代である。
それも1991年に改正された大店法によって一変する。
法改正により、大型店舗の出店規制が大幅に緩和され、資本力のある大手チェーンが土地の余っている地方に大型店舗の出店を加速させる。
そうなると、地方のスーパーは太刀打ちできなくなり、次々と閉店を余儀なくされる。
「ねえねえ、スーパーMも、最近やばいらしいわよ」
近所の主婦たちが井戸端会議で話すのを聞いてはいたが、私は大学進学のために上京し、地元を離れることになる。
 
あれから4年、Uターン組として地元に戻ってきた私は、運転の練習がてら片田舎の道をドライブしていると、なにやら渋滞が発生している。
「なんでこんな田舎道が渋滞しているのだ?」
渋滞で止まった時間を利用して車のMDを入れ替えながら不思議そうにつぶやくと、前の車が動きだし、渋滞の原因が判明する。
スーパーMに入る車が駐車場に入りきらず渋滞を引き起こしていた。
「ば、馬鹿な! し、信じられん!」
某マンガのワンシーンが頭に浮かぶ。
私が地元を離れている間に何が起こったのか店に寄って確かめたかったが、今から駐車場待ちをしてまで確かめるには、空腹でお腹が持ちそうになかった。
 
「ねえ、これスーパーMで買ってきたのだけど食べる? 黒糖が体にいいのよ」
自宅に戻ると、母親が何やら見慣れないメーカーの“かりんとう”を手に話しかけてくる。
「え? スーパーMにそんな珍しいもの売っているの? 数年前までは潰れそうだったけど」
「何言ってるのよ。あそこは他のお店には置いていない、こだわり食材があるのよ。知らなかったの?」
最近、地元に帰ってきたのだから知るわけがない。
「知っているのか母親!?」
また某マンガのセリフが出かかったが、とある年代の男性にしか理解できないのでやめておこう。
話の長い母親に変わって要約すると、スーパーMは“健康と美味しさ”をキーワードに、全国でも生産地以外には、ここにしか置いていないような食材を専門に扱うスーパーに生まれ変わっていた。
こだわり食材であるため、価格は高く、生産量が少ないため、安いものを大量に販売する大手スーパーでは取り扱うことができない。
これは経営学の大家、マイケル・ポーター教授の「差別化戦略」である。
ポーター教授と聞いて、ざわつくのは極めて一部の人々だけなので、誰が提唱したのかは置いておくとして、「差別化戦略」とは「他の人に真似のできないことをして、特異な地位を築くこと」となる。
実はこの「差別化戦略」は企業の戦略だけでなく、私たち個人にもコミュニケーション戦略として応用できると知ったのはつい最近のことである。
 
 
「おいしそー」
友人がSNSで反応する。
「マヂで美味しいよ! 今度持っていこうか?」
私も反応に対して返信を行う。
「じゃあ、場所を抑えないとだね。友達も呼ぶ?」
「そうだね、ダイレクトメッセージで相談しようか」
SNSの投稿がきっかけで週末のスケジュールが楽しいものとなった。
 
最初の頃、SNS投稿への反応は薄いものだったが、日記感覚で美味しいものを見つけるたびにアップし続けていたら、次第に反応が大きくなり、「いつも美味しそうだね!」「今度どこ行くの?」とか声をかけられるようになった。
「差別化戦略」なんて全く意識していない。
ハッキリ言って後付けだ。
決して面白いことをしているわけではないのだが、反応の濃淡に関係なく、頻繁に投稿を続けたことが差別化につながり声をかけられるようになった。
継続は力なり、といったところか。
私の場合は、たまたまSNSであったが、人のやらないことであれば何でもいいと思う。
人が嫌がること、一歩を踏み出すのに勇気が必要なこと。
誰もが知りえないニッチな分野に詳しいのも差別化だ。
差別化することで個性が生まれ、その個性に興味をもった人たちとのコミュニケーションが生まれ、コミュニティが広がっていく。
これを意識的に行えるようになれば立派な戦略家となる。
コミュニケーションの魔術師と言われる日が来るかもしれない。
ただし、自身の行動すべてを差別化すると、ただの変わり者になってしまうから注意が必要だ。
 
 
ふと気づくと周りがすっかり暗くなっていた。
どうやら「差別化戦略」とか考えているうちに寝てしまったらしい。
寝ていたとはいえ、お腹は減るものである。
「今日の夕飯は、スーパーMのエビチリと唐揚げ、コロッケも買っていたな」
何ともまとまりがないが、家族が個々に好きなお惣菜を買ってきたのだから必然的にこのようなメニューとなってしまう。
自室からダイニングに移動し、飛び込んできた光景に唖然とする。
そこにあったのは、空になったプラスチック容器が3つ。
「あら、おはよう。美味しかったわよ」
「……」
私は自宅の夕飯時にお酒を飲む習慣はないのだが、今日は“大人の甘酒”を、おかず代わりとしてテーブルに並べることにした。

 
 
 
 
***
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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