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メディアグランプリ

見えない世界が教えてくれたこと。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Pauleかおり(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
あなたは缶ビールの開け口そばに点字が書いてあるのを知っているだろうか?
私は、毎日1本ビールを必ず飲む。
しかも何十年も飲んでいるのに、そのことに一度も気づいてなかった。
それを教えてくれたのは、「暗闇の世界」だった。
 
ここは視覚障がい者のかたがアテンドしてくれて、「見えない世界」を体験できる施設。
私は8年くらい前が最初で、その後4回体験をしている。
何度体験しても、新しい発見があり、この缶ビールの件も4回目で知ったのだった。
 
一番最初の時は、予約を入れるだけでも半年ぐらい、迷ったものだ。
「本当に何も見えないってどんな感じなの? 怖くない?」
正直、お化け屋敷よりも怖いかも……。
 
それが一転して挑戦に至った理由は、面白い企画が出てきたから。
1人参加限定で、知らない人同士8名がチームになり、体験する企画だった。
「知らないもの同士、だから寂しくない」 的な文面だった様に記憶している。
前日までの注意書きに、「ヒールのある靴はお避けください」 「体調の悪い方はスタッフにお伝えください」 「時計、アクセサリーなど外れやすいもの、光るものは外してください」 などあり、それを読んでいるだけで、なぜか心臓がバクバクした。
 
当日、男性4名、女性4名のチームで、年齢はバラバラだった。
アテンド(視覚障がい者)の方がドア前に集合をかけ、これから体験するための心得など話してくれる。
一つ目のドアが開き、薄暗い部屋へ案内され、全員が入るとドアが閉められる。
 
その瞬間、妙に呼吸が苦しくなる気がして、圧迫感に襲われた。
まだ真っ暗じゃないのに、こ・わ・い……!!
もし何かあったらどうなるんだ?
と言って、何かって何?って聞かれると思いつかないほど動揺していた。
 
そんな不安をわかっているアテンドの男性は、とても明るい笑顔と声で、白杖の使い方をレクチャーしてくれる。
「みなさん、ここまででわからないことありますか?」
皆、無言で首を横に振った。
 
「僕ね、みなさんが声を出して話してくれないと、わからないんですよー、笑」
はっ! そうだった。彼は見えないんだった。
わかっていても、全員の声が出るまでには少々時間を要した。
そして軽い自己紹介が終わり、いよいよ次のドアが開かれていく。
 
「さあ、この向こうは、僕が生きている世界と同じ世界が広がってます。
手で触ったり、匂いを嗅いだり、音を聞いたり、声を掛け合ったりして一緒に楽しんでいきましょう」
やばい、本当に真っ暗!!!
光の筋さえ見えない。自分が目を開けているのか、閉じているのかさえわからなくなる。
足がすくんでしまい、一センチ前に足を出すことすらできない。
前の人の体温を感じるくらい接近するのがやっと。
みんなが団子状態。
 
「じゃあ、ぶつからないように一列になって、ゆっくり順番に、僕の声がする方向についてきてね」
「最初は誰? 順番に名前を言ってついてきてね」
先頭から名前を言っていく。
頭の中で誰の次に誰がいて、自分はどのあたりにいるのか、自分の後に誰がいるのか、位置がわかってくる。
前の人の声に全神経を集中させながら、白杖と手の甲を使い進んでいく。
 
「あ、ここら辺から上り坂になってるみたい。左に手すりがあるよ」
「ここには落ち葉がある。滑りやすいから気をつけて!」
「こっちは、竹みたいな塀が続いてるよ」
状況中継してくれる仲間の言葉を頼りに、橋を渡ったり、門をくぐったりする。
それぞれが気づいたこと、体験したことを声に出すのも遠慮がなくなってくる。
 
「大輔、しゃがみます。ここにはカゴがあるよ」
「誠っち、ブランコ発見したよー」
「なんかこっちの方では水の音がしてる」
「水? 水のそばは誰がいるの?」
「私、ヨッシー」
この世界では、黙っていると存在さえしないことと同じになる。
だから、忘れられないように、置いていかれないように、みんなよく声を出す様になる。
自分は誰で、今どこで何をしてるのか、それがまた空間情報になるし、助け合いにもなるのだ。
 
だんだん暗闇での過ごし方がわかってくると不安も薄れてくるから不思議だ。
不安というのは、対処の仕方がわからないから起きるということだと気づく。
 
少しづつ緊張もとれ、動ける様になってきた頃、時にはベンチに腰掛けて絵を描いたり、時にはみんなでボールを転がしたり、時には楽器演奏したり、その時の企画によって楽しめる様になっている。
 
みんなで見えない世界を楽しんだあとは、カフェでお茶を飲む体験がある。
カフェでは、狭く低い扉をくぐり、テーブルがある席にそれぞれ着席し、ポケットに入れた小銭で飲み物を買う体験をする。
「サイダーは300円。お茶は200円。大人の飲み物ビールは400円。さあ、何を頼む?」
えー? 見えないのに買えるの? 飲み物受け取れるの? お釣り受け取れるの?
そんな疑問も難なくクリアできてしまうからこれまた不思議。
それも、これも、一緒にいる仲間が声かけして協力してくれるから。
 
「このビールはどこのメーカーだろう?」
「ていうかさ、ジュースと区別つかなくない?」
するとアテンダーが
「空け口のところを指で触ってみて!」
普段触り慣れていない点字の小ささと、指の腹の不感症具合に我ながら驚く。
書かれている言葉は、『おさけ』
知らなかった! 間違ってアルコールを飲むことがないようについていたんだ。
 
見えない世界で味わう飲み物やお菓子は、見える時よりも、触感、匂い、食感で、よく味わっている自分達に気づく。
そして、そんな感動を声を通して仲間たちと共有し、盛り上がった。
 
「さあ、それではそろそろ虹をみんなで見にいきましょう」
暗闇の中、アテンドの後ろをついていくと、遠くがぼんやり明るくなる。
少しづつ、光が差し込んできた。
「僕は本物の虹を見たことがないのでわからないですが……。どうですか? 本物とは違いますか?」
アテンドの明るい声に、胸が締め付けられた。
目尻に流れた涙で、忘れていた目の存在が蘇ってきた。
 
いつもの世界は、ものすごく明るく、眩しかった。
改めて、仲間の顔を見てしまう。この声の主はこんな感じだったんだ!
見えるイメージと、交わしたコミュニケーションとのギャップを感じた人もいた。
 
この体験をするまで、見えることは幸せだと思っていた。
いや、間違いなく幸せなことだ。
しかし、この体験後は、見えるからこその残念さ(不幸せ)に気づくようになった。
見えるから、無理して言葉を交わそうとしない。
見えるから、1人でも困らない。
見えるから、比較をしがちになる。
見えるから、コミュニケーションを蔑ろにしてる。
 
今、自分が持っている武器を存分に使っている?
反対に持っていない武器ばかりにフォーカスしていない?
自問自答しながらの帰り道は、不思議なほど新鮮な自分を見つけている。
また行こう!!!!
 
 
 
 
***
 
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2022-09-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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