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メディアグランプリ

「テキーラ」の呪い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:千々岩康治(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
他の人より縦も横もあるのでお酒が好きと思われがちだが実際は甘いもののほうが好きだ。だが甘党の私でも美味しいと思えるお酒がある。「テキーラ」だ。テキーラはメキシコ発祥のお酒だ。罰ゲームなどで飲んだことがある人もいるだろう。
常温・冷蔵・冷凍で飲んだりするが私は冷凍を強く推す。通常の液体なら冷凍すると凍るがアルコール度数の高いテキーラは凍らない。片栗粉を溶かしたようにドロリと粘性を持つのだ。文字通り氷の様に冷たい液体がゆっくり喉を通り、その直後灼ける様に熱くなる。そして塩を一舐め。そうするとテキーラの甘さが広がる。意外な事に冷凍したテキーラは甘いのだ。
 
テキーラの飲み方を覚えたのは20代前半の時だった。職場の先輩に連れて行ってもらったのだ。罰ゲームではなく味わうことを教えてくれた。初めてテキーラを飲ませてもらったことは今でもはっきり覚えている。
 
……あれは小倉の繁華街だった。
 
バーでのテキーラデビュー。どのくらい飲んだのだろう? 気が付くと何ショット飲んだかわからなくなっていた。テキーラが水のように感じた。これなら何ショットでも飲める。先輩がそろそろやめろと言うが関係ない。夜の小倉は最高だ!
 
そう認識した瞬間私は救急病院のベッドにいた。記憶がとんでいる。
 
 
 
どうやら飲みすぎて救急車で運ばれたのだ。俗にいうアルコール中毒というやつである。確かバーにいたはずだと考えたが走り回る看護師さんを見てここが病院だと認識する。
 
と……つぎの瞬間強烈な違和感をおぼえた。
 
 
何かおかしい。
ぼんやりと頭が痛いのだろうかと考える。
いやちがう。
急激に頭が冴えてくる。
そして私は違和感の正体を自覚した時テキーラの本当の恐ろしさを知った。
 
 
 
痛い……痛いのだ!
頭ではない!
内臓が痛いのだ……! 胃でもない。お腹でもない。内臓が鈍器で殴らたように痛いのだ!
痛みでまったく動けない。だがこれ以上病院の人に恥ずかしい恰好は見せたくない。早くここからいなくなりたい。私は最後のゴマ粒ほどの気力を振り絞り先輩の用意してくれたタクシーに転がり込んだ。
 
 
……帰りのタクシー。
一緒に乗ってくれた先輩は痛みで呻く私をみて「飲みすぎ」と言うと大きな声で笑い、私を家まで送ってくれた。
 
後日痛む体を抱え先輩に謝罪に行くと「しっかりしろよ! 次はたのむぞ! 」と言われた。
苦笑いしかできなかったのも今でも覚えている。
 
 
それから10年以上経っている。私は小倉でまだテキーラを懲りずに飲んでいた。横には新卒の後輩がいた。
 
横の後輩もテキーラを飲んでいる。
テキーラは初めて飲んだという。
結構飲んでいる。こいつ今何ショット目だ?
後輩は覚えていないという。よく見ると瞬きをしていない。
これはやばい。
すぐにチェイサーを飲ませようとするが言うことを聞かない。
 
ん? この光景何処かで……。
見たことある光景を思い出しながら悪い予感を感じた。
 
 
 
悪い予感というのは当たるもので数時間後私は病院の待合室にいた。案の定後輩が病院に運ばれたのだ。運ばれた病院は若い時私の運ばれた病院だ。運命や皮肉のようなものを感じる。
 
病院の待合室は非常に居心地が悪かった。なぜか? 看護師や事務の人が妙に冷たいのだ。それはそうだろう。生死の境のような人もくる中小倉の繁華街ではしゃいで倒れたのだ。目線も厳しくなる。
 
視線が体に突き刺さる。
痛い……。これなら内臓が痛いほうがよっぽどましだ。
 
 
後輩が処置室から出てきた。フラフラだ。その姿をみて吹き出しそうになるが寸前で思いとどまる。さすがにかわいそうだ。
そこは何処かで見た光景とは違った。
 
後日後輩が謝罪に来た。
「しっかりしろよ! 次はたのむぞ!」私は先輩と同じことを言っていた。
 
気が付くと先輩の顔が浮かんでいた。そして私は先輩が本当に言いたかった事が理解できていた。
先輩は
「(若いやつと飲むときはお前が)しっかりしろよ! 次は(お前が面倒見てやってくれ)たのむぞ!」
先輩はきっとこう言いたかったのだ。
 
 
思えば先輩はいつも私に自由に仕事をさせてくれた。そして失敗のフォローをしてくれていた。どうしようもなくなった時はすぐに助けてくれた。冷静に考えれば無謀な事もやっている。今になって思えば失敗する前に止めたり手を出せばラクだ。だがあえてそれをしなかった。私に失敗させて学習の機会を与えてくれたのだ。
テキーラで失敗した時も注意一つ言わず笑って許してくれていた。待合室での出来事を考えると申し訳ない気持ちと先輩の愛情を感じた。
仕事もプライベートも若い時しか失敗できない。それをフォローするのは先輩の役割。そう言われているような気がした。
 
私はバトンを渡されていたのだ。いや、そんな生易しいものでははい。
これは呪いだ。
呪いの内容は「後輩には自由に仕事をさせる。失敗した時はすかさずフォローを入れる。」
テキーラを飲んだ時にかけられたのでこれを「テキーラ」の呪いと呼ぼう。
 
 
私はいま後輩に「テキーラ」の呪いをかけている。この呪いが発動するのは後輩が先輩になった時だ。何年後になるかわからない。もしかしたらここではない別の職場かもしれない。
だがそれは構わない。大切なのは呪いが発動することだ。
 
後輩は苦笑いしている。これも何処かで見たことある光景だ。
 
月曜日の朝、自分と後輩の中に先輩の志が生きているのを感じた。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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