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看護の先輩は、私にとっての腕利きの運転士


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:笹尾和代子(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「んぎゃぁ……、んぎゃぁ~。」
元気な産声を聞きながら、私もこうやって産まれてきたんだなとしみじみ思う。
私は、京都の病院の手術室で帝王切開術の担当看護師をしていた。
 
母は36歳の時に私を産んだ。
身長145㎝の小柄な体格の母から約4,000gの巨大児が産まれたのだから、周囲もびっくりである。
その後、一歳年上の兄とともにすくすくと成長するが、何故か私だけよく風邪をひき、ひと月に2回は熱を出していた。
その度に、母は私に付きっきりで看病をし、何度となく小児科や耳鼻科を受診したのだった。
小学校に上がると熱を出すことも少なくなり、友達と元気に遊びまわれるようになった。
 
「わたしは将来お嫁さんになるの!」「うちはケーキ屋さんになる!」
そんな会話を友達同士ですることが増え、自然と「わたしは看護師さんになるんだ!」と言っている自分がいた。
まだ小学生なのに、なぜ、自然と看護師になることを決めていたのだろうか?
それは、おそらく母が口癖のように「かよちゃんは優しいから、将来看護師になるといいよ」と言っていたからだと思う。
小さな頃からよく病院に行き、看護師さんの存在を身近に感じていたこともあり、いつの間にか、「わたしは看護師さんになるんだ」と思うようになっていた。
母の口癖、恐るべし!
 
中学生、高校生と成長するにつれ、様々な職業があることを知り、自分がなりたい職業は何なのか改めて考えてみるが、やっぱり行きつく先は「看護師」だった。
「何だかお母さんの言うとおりになるのは癪だけど、やっぱり看護師になりたいな」
こうして、明確に看護師になることを決め、受験先を決める時期がやってきた。
 
専門学校に行くか、大学の看護学科に行くか……。
当時、大学の看護学科はまだ少なく、近隣では佐賀の国立大学にある看護学科を第一志望の進学先にし、第二志望に福岡市内にある国立病院附属の専門学校を選んだ。
受験勉強の成果も出て、合格がやや難しいと思われていた第一志望も合格圏内にすることができた頃、母が「佐賀の大学の下見に行ってみる?」と提案してきた。
「受験当日に道に迷わないためにも、下見をしておいたほうがいいな」
と思い、家族と一緒に第一志望の大学の下見に出かけた。
佐賀に着き、田んぼに囲まれた大学を見た瞬間、私の心は決まった。
 
「佐賀の大学には行かない! 第二志望の福岡の専門学校に行く!」
 
えぇ!! 高校の担任教師はいきなりの志望校変更にびっくりである。
だって、田んぼに囲まれた大学に4年も通うなんて無理! お店もないし、つまらなさそう。福岡の学校に通うほうが友達もいるし、楽しいに決まってる!
こうして、私は福岡市内の国立病院附属の看護学校に進学した。
後から知ったのだが、母は私がこの看護学校に進むことを望んでいたらしい。
う~ん、何だか母親の希望通りになっていってるぞ……。
 
専門学校に入学して約半年、いよいよ初めての病院実習に行く時がきた。
ここで予想外の事態発生!
初めての病院実習に行く前に戴帽式を行うのだ。
戴帽式、それは看護師の象徴でもあるナースキャップを戴く儀式である。
ろうそくの灯る厳かな雰囲気の中、ナースキャップを一人一人戴き、看護の誓いを行う。
看護師になると決めたときから、憧れに憧れた儀式であり、卒業式のようなものだと勝手に思っていた。
それが、入学して早々に行われるのである。
戴帽式を一つの目標にしていた私のモチベーションは保たれるのか!?
 
戴帽式と初めての病棟実習を終え、私は気持ちも新たに看護師になりたいと思っていた。
患者さんと接することで、患者さんの力になりたいと思えるようになり、新たなモチベーションを持つことができたのだ。
数々の病棟実習は、患者さんと接しながら実践的な看護を学べるが、レポート作成に追われる修行のようでもあった。
そんな修行の中、私の一番の相談相手は母だった。
なぜなら、母は結婚前まで看護婦として働いており、私の気持ちを一番に理解し、的確なアドバイスをしてくれるからだった。
 
「やっぱり、お母さんはすごいなぁ」
 
この時、母は看護の現場から離れて20年以上は経っている。
それでも、疾患や治療内容の知識はしっかりしており、看護の先輩なんだなと実感させられた。
修行の日々を乗り越え、国家試験にも無事に合格することができた私は、念願の看護師の資格を手にしたのである。
しかし、看護師の資格は得たものの、一人前の看護師になるためには経験を積まなければならない。
どこで経験を積むのか……。
九州を離れてみたいと思っていたこともあり、考えた結果、私は京都の病院に就職することにした。
京都への引っ越しを終えたとき、母は手を振って私を送り出してくれた。
 
看護師になるというレールをさりげなく敷き、私がそのレールの上をゆらゆらと走り出してからも脱線しないように見守ってきた母は、まるで腕利きの運転士のようだ。
そして、無事に看護師の資格取得の駅に送り届けて、さらっと私の列車を降りて優しく見送ってくれた。
 
今、私は一人前の看護師になる駅も通り過ぎ、一人前の手術室看護師になっている。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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