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私のTips、紹介します! 〜ローション相撲編〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上遥(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
雲ひとつない、青い空。
どこまでも広がる海。
真っ白な砂浜。
 
そして、ローションまみれの男たちが9人。
 
その男たちの前には、筋肉モリモリマッチョマンの黒人男性が1人。
 
計10人の男たちが、グアムのビーチで熱い視線を交わしていた。
 
何がどうしてこうなったのか。
少しばかり、この珍妙な事態の経緯を振り返らせていただきたい。
 
 
 
「グアムでローション相撲をやろう」
 
全てはS氏の一言から始まった。
彼とは大学一年生の時、サークルの新入生歓迎会で知り合った。一学年上の先輩であるS氏を一言で表すのなら“遊びの天才”である。「無人島に行こう」「運動会をやろう」「カバディチームを結成しよう」などなど、S氏から提案されるあまりにも破天荒な遊びの数々は、心底笑えるものばかりであった。そんなS氏の人望の厚さは凄まじいものであり、まさにカリスマと言うべき存在だった。
 
そして卒業が目前に迫り、S氏を含む先輩方と我々後輩たちとの卒業旅行先がグアムに決定した矢先、S氏が言い放ったのが先のセリフである。
長年の付き合いから、S氏がバラエティ番組などでよく見られるローション相撲を偏愛していることは周知の事実であった。過去には旅先でローション相撲が強行されたこともある。そしてこちらも経験上、面白いことに目がないS氏がグアムで何かしたいと言い出すことも予想済みだった。
無論、返答は「承知しました」一択である。
かくして、敬愛する先輩の夢を叶えるべく、我々後輩一同は準備に取り掛かった。
「ローションは某量販店に売っているのが一番コスパ良いよ」
「そのローション、ちゃんと自然に優しい素材のやつ? 確認しとこうよ」
「俺、飛行機にローション持ち込めるか調べてみるわ」
「やるとしたら砂浜だろ? 大きめのビニールシート持っていって土俵代わりにしよう」
「後始末のこと考えて、シャワー設置されてる浜辺探しとく」
ローション相撲のノウハウは無駄に蓄積されていたため、準備は恐ろしいほどスムーズに進んだ。すごい。そして必要なアイテムは情熱的な価格で商品を提供しているあの量販店で全て揃えることができた。これもすごい。店内に流れる「ドン、ドン、ドン♪」という陽気なテーマソングに合わせて、私たちの気分も高まっていく。
 
そして我々はついに、20リットルのローションとともにグアムのビーチへと降り立ったのである。
 
当日は天候にも恵まれ、ザ☆南国と言わんばかりの光景が広がっていた。
そんな絶景に目をくれず、私たちはいそいそとローション相撲の準備に着手する。
人気のないビーチの、その中でもさらに目立たず、騒いでも迷惑がかからなさそうな一角にビニールシートを広げる。そこにローションを注いでいけば、あっという間にローション相撲大会会場が爆誕だ。S氏は感動のあまりに「俺の青春はグアムにあった!」と叫んでいた。違う。あなたの青春はきっと日本にある。
とはいえS氏のみならず、全員のテンションが最高潮に達していた。砂浜に対戦表を書き、怪我をしないよう入念に準備運動をする。第一試合は私とS氏の対戦であった。互いに塩の代わりに砂を撒いて土俵入りするというしょうもないおふざけを挟んだ後、「はっけよい、のこった!」の掛け声で試合が開始された。
 
 
ここで、ローション相撲にまつわるTips(豆知識)をご紹介しよう。
 
一番大事なのは、ローションの量である。これは多ければ多いほど良い。量をケチると滑りが悪くなるので、足場がひたひたになるくらい注ぎ込むのがポイントだ。
そして、身体中にローションを塗りたくるとさらに良い。相撲という競技の性質上、相手の体を掴む必要があるが、互いにローションを身にまとうことで、この難易度が飛躍的に上がる。そうなると、相手を捕まえようとするもうまくいかず、さらには足元のローションで体勢を崩して挙動不審な動きを発生させるケースが頻発し、すこぶる面白くなる。
 
以上が、私が体得したローション相撲に関わるTipsだ。
今後生きる上で微塵も役にも立たない情報を皆様にお届けしたことを、心より恥じる。
 
 
そんな無意味な学びも得ながら、私たちはローション相撲を目一杯楽しんでいた。
自分がやるのも楽しいが、試合を見るのも面白い。相手を倒そうと意気込んだ挙句、足を滑らせて自滅したり、相手にコツンと小突かれただけで体勢を崩し、ブレイクダンスばりの激しい動きをしながら転倒を回避しようとする男たちの姿は、まさに滑稽そのものであった。
そうして腹の底から笑い合っていた最中のことである。
 
「Hey!」
 
声がした方向に全員で振り向く。
見ると、筋肉モリモリマッチョマンの黒人男性が一人、私たちに向かってズンズンと近づいてきていた。
 
先ほどまでのお祭り気分から一転、緊張が走る。
異国の地で見知らぬ外国人に声をかけられるというシチュエーションは、めちゃくちゃに恐ろしい。大変失礼な話ではあるが、私は「何らかの理由で現地の方の怒りを買ってしまったのでは? この後、我々は問答無用で拉致された挙句、どこか見知らぬ異国の地へと人身売買されてしまうのでは?」という妄想を繰り広げてしまうくらいにビビり散らかしていた。
しかし、我々とていっぱしの大人である。使用しているローションは環境に無害なものを使用しているし、後片付けの準備も万全だ。しかも、仲間の一人は帰国子女で英語もペラペラである。コミュニケーション手段も問題ない。
 
どんな話を持ちかけられるか分からないが、落ち着いて冷静に対応しよう。
我々は腹を括った。
 
「Ah……」
 
彼は我々に向けて何かを伝えようとする。
我々は、固唾を飲んで次の一言を待つ。
 
彼が放った言葉は――。
 
 
「……Is this the Japanese “SUMOU”?」
 
 
――これは、日本の“相撲”ですか?――
 
 
――であった。
 
 
その言葉を聞いて、我々は思わず顔を見合わせた。
そして、全員で声を揃えて答えたのである。
 
 
「「「「「「「「「――YES!!!」」」」」」」」」
 
 
――と。
 
その時の我々の表情は、グアムの快晴にも負けないほどの晴れ晴れとした笑顔であった。
 
 
 
その後、筋肉モリモリマッチョマンの彼は満面の笑顔を浮かべながら「めっちゃええやん」「グアム楽しんでな〜」的な言葉を言い残し、去って行った。彼はこれから、「日本の相撲って、あんなウネウネ体動かすんだね」という誤解を抱えたままグアムで生涯を過ごすのかもしれない。そう考えると申し訳ない気持ちに……いや、そんなわけない。こんなしょうもない出来事、彼はきっとその日のうちに忘れてるだろう。
 
その後ローション相撲大会は、S氏の優勝で幕を下ろしたのであった。
 
 
 
あれからもう10年近くが経ったのだと思うと、流れる時の早さに驚くばかりである。
卒業後もS氏をはじめとする学生時代の友人たちとは定期的に遊んでいる。相変わらず生産性のないことばかりしているが、彼らと出会っていなかったら、私の人生はもっと面白みのないものになっていただろう。
 
そんなちょっとした感傷に浸りながらこの記事を書いていた時、S氏から連絡が届いた。
「●月×日、空いてる?」
要件は書かれていない。今度は一体、何をしでかすのだろう。
その日が空いているかどうかを確認すべく、私はスケジュールアプリを開いたのだった。
 
 
 
 
***
 
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