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「おばあちゃん」か「アメリカ人」になりたい


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記事:星有希(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
朝、急ぎ足で駅へと向かう、いつもの道。
一人の男性が、道路に背を向けて立っていた。
男性の目線の先にあるのは、ガラス窓に内側から貼られた、ハンバーガーのメニュー。
 
そこは、近日中の開店を控えた「モ◯バーガー」の新店舗である。もう一年近く空き店舗になっていた場所で、もの寂しい雰囲気を漂わせていたが、ある日突然「モ◯バーガー」の看板が掲げられ、開店準備が始まったのだ。
 
「楽しみですよね! 『モ◯バーガー』!」
 
そう話しかけたかった。でも気持ちをぐっと抑えて、私は足早に通り過ぎた。そして心の中でつぶやいた。
 
「あぁ、私がアメリカ人か、おばあちゃんだったら、話しかけるのになあ……」
 
 
 
 
私の知る限り、「アメリカ人」と「おばあちゃん」は、赤の他人に話しかけるのが上手である。
 
アメリカ人のその特性に気付いたのは、学生時代に留学していた時だ。
 
一緒にスーパーに行ったホストファミリーが、レジで店員と親しげに話し始めた。あまりに自然だったので、私は後で「さっきの店員さんと友達なの?」と聞いた。するとこう返された。「いやいや、初めて会ったよ! こんなの普通でしょ!」
 
そもそもアメリカは、日常の決まり文句に、他者への親しみが組み込まれているように思う。例えば「Have a nice day(良い一日を)」「You too(あなたもね)」のやりとり。決まり文句だと分かっていても、毎回ちょっと心が温かくなる。
 
さらに、これはちょっとめずらしいケースかもしれないが、私はバスの中で突然「You are absolutely beautiful」(あなた、ものすごく美人だね)と言われたこともある。なおその人はそのままバスを降りて行ったから、ナンパではない。日本では、私は一生待ってもこんな言葉はもらえないだろう。
 
 
 
 
そして日本にも、アメリカ人に似た特性を兼ね備えている人々がいる。「おばあちゃん」である。これは子育てをするようになってから特に感じた。
 
「かわいいわねえ」
「こんなかわいい子が家にいたら、毎日楽しいでしょうねえ」
 
子どもと出かけると必ずと言っていいほど、何か言葉をかけてもらえるのだ。
 
先日も、子どもが水たまりで遊び始めて、やめさせるべきか迷いながらもそのまま見守っていると「あなたえらいわよ。小さいときは、好きなことたくさんさせてあげるのが一番よ」と言ってもらえた。
 
子育てをしていると、周囲の人の迷惑になっていないか、自分の子育てはこれで大丈夫なのか、不安になることが多い。おばあちゃんたちの言葉は、自分へのエールのような気がして、元気づけられる。
 
 
 
 
アメリカ人や、日本のおばあちゃんのように、私も人に声かけができるようになりたい……最近、そう強く思っている。
でも、これがなかなか難しいのだ。
 
理由は二つあると思う。
まず、日本では赤の他人同士が会話することはめったにない。唐突に話しかけたら、相手を怯えさせてしまう可能性がある。ハンバーガーのメニューを見ている時に「楽しみですよね!」と突然話しかけられたら、九分九厘ギョッとするだろう。
 
もう一つは、声をかけたくても、何と言ったら良いのか思いつかない場合があるからだ。特に、相手が何か困難な状況にある時は、相手をそれ以上不快にさせないような言葉が、とっさに出てこない。
 
先日、まさにそんな場面に出くわした。
 
小児科に行った時のことだ。会計を終えて廊下に出ると、小学生くらいの子どもが、何か嫌なことがあったのか、手を振り回したり、走ったり、叫んだりしている。一緒にいる親とみられる人物は、もう自分とそれほど体の大きさが変わらない子どもを、追いかけたり、抱きしめたり、何が嫌なのか聞いたりして落ち着かせようとしている。
 
親は、困ったような様子ではあるが、一方で、このような状況にすでに慣れているようにも見えた。もしかしてこの親は、たくさん悩みながらここまで子育てをしてきたのではないかと感じた。
 
親子がこの時、どのような気持ちだったのかはわからない。でも、もし誰かが何か声をかけたら、子どもの気分がよくなるきっかけ、親の気持ちが楽になるきっかけになれたような気がする。今になって思えば、「病院嫌だったかな? 疲れちゃったよね」とか「何かお手伝いしましょうか?」と言ったらよかったかもしれない。でもその時の私には、言葉が何も思い浮かばず、結局素通りしてしまった。
 
 
 
 
人生経験を積みながら、いつか「おばあちゃん」か「アメリカ人」みたいにになりたいと思う。赤の他人の、ほんのちょっとの声かけが、誰かを楽しませたり、励ましたり、癒やしたりすることもあるかもしれない。そんな気がするからだ。
 
なお、おばあちゃんには、このまま生き続ければ自動的になれるのが嬉しいところだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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