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ハニーの時給


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大高 充 (ライティング・ライブ東京会場)
 
 
アイロン掛けしている女性の背中が言った。
「でんき!」
「え?」
「だから、でんき!」
私が振り向いて後方を確認するとトイレと洗面所の照明がついたままになっている。
このヒトは後ろに目でもついているのか?
 
このヒトと暮らして、20年は経つ。
事あるごとに
そろそろ電気を消せない男だと諦めてくれないか、と伝えているのだが
そろそろ電気を消せる男になれ、と向こうはいう。
 
どうやら電気が大事らしい。
 
彼女をヒトと呼ぶのはヨソヨソしい気もするのでここで呼び方を変えてみたい。

結婚した相手を第三者に表現する場合、なかなか適当なものがない。
「家内」だと少しキザだ。
「嫁」とは本来は息子の配偶者という意味だから適当ではない。
「妻」とは刺し身のツマという使い方もあるように、寄添うモノという意味らしいが、我々の場合おそらく当てはまらない。
 
甘い響きの「ハニー」と言いたいが、電気消灯問題で敵対していることもあるので、不本意ながらいまは「電気おんな」と呼ぶことにする。
 
電気おんなに
この世には完璧な男などいない、といえば
電気を消すことは
それ以前に人として当たり前ことだという。
 
 
 
この間などは
「○✕△■◎▲□!!」と長々と指導をいただいたので
 
ここぞ、とばかり
「夫婦円満の秘訣は言いたいことの半分だけ言うことらしいよ」と言ったら
 
「これで半分よ!」 と返された。
うまい、おもしろい
だが
蜂のような一刺しだ。
 
そんな私は夜な夜な悔しさで枕を濡らしていた。
 
そんな電気おんなは家の中では強い。裏を返せば外では頼もしい存在と言えなくもない。
 
じっさいそのとおりで
 
例えば、スーパーのジャガイモの詰め放題などに遭遇したときなどは
まずはビニール袋を時間をかけて、ゆっくりとゆっくりと十分に引き延ばす。そうして破れんばかりに詰め込む。
これで一般的な関東人の1.4倍は詰め込むことができる。
家計は大助かりだ。
 
私の実家のある秋田に帰省したときにはこんな事もあった。
土地柄、素朴な人も多いので、電気おんなさんの詰め放題ぶりに目を丸くして、私の分も
と周囲のお母さんたちにお願いされ、詰め放題の輪ができたほどだ。
 
ただ、電気おんなさんのチカラはこんなものではない。
大きな買い物のときにこそ発揮される。
 
クルマを購入するときがそうだ。
優秀な営業マンは家族を見て、一瞬でヒエラルキーがわかるという。
その時の風間くんもそうだった。私がこの車が欲しいと伝えたあとの彼は
キーパーソンの電気おんなさんと打ち合わせしようとする。
 
あまい、風間くんはあまい、ベタベタに甘ちゃんだ。ハチミツのように甘い。
その人と交渉してはいけない。わが家はふつうの家庭とは少し違うのだよ。
 
でんきハニーさん
いや
でんきおんなさん
の本当の怖さをこれから知ることになるだろう。
 
営業マンは年度末に追い込みを掛ける。
一年の集大成が成績になり、それが翌年度の昇給やボーナスに反映されるからだ。
多少無理をしてでも年度末、つまり3月末までに、より多くの車を販売したいのだ。
そんな事情を知っての
でんきハニーさんの戦略はこうだ。
 
年度末のひと月まえに一度ディーラーに様子を見に行く。
何を見てくるのか?
ディーラーと営業マンの目標達成の具合だ。
要するに少し焦り気味のディーラーの気の弱そうな営業マンを探すのだ。
ターゲットにロックオンして、車を選び、あとは年度末にかけて価格交渉をする。
 
まずは相手の体中の毛髪がなくならんばかりに、価格を下げてもらう。
というか下げさせる。
もう無理ですとなってからが勝負なのだと、でんきハニーさんは豪語する。
 
じゃあ、オプションならOKでしょ。これと、これ、お願いね。
ディーラーオプションならお店の判断で何とかなるでしょ。
あ、そうそう、この登録手数料は含めないでいいです。自分たちでやりますので、という。
つまり、自動車登録は自分たちで手続きするのでその分、安くしてほしいと交渉するのである。ここまでが事前交渉だ。
 
本番はこうなる。
これから捺印するからと
年度の最終日の夕刻に自宅に風間くんを自宅までおびきよせる、いや、ご足労いただく。
なぜ、自宅で捺印なのか?
そこには、わがでんきハニーさんの戦略がある。
自宅は文字通りホームなのだ。つまり風間くんからしたら完全にアウェーの場所だ。
われわれ家族の4人の住む建物に単身で夕方に乗り込む風間くんの身になってみてほしい。頼みの上司と引き離すというのもハニーの作戦だ。
 
この時点で風間くんはすでに負けている。
 
もちろん、このまますんなりと契約に相成りましたとは問屋
ではなく
わがハニーがおろさない。おろすはずもない。
 
ハンコをチラつかせながら、
「ハンコ押したいところだけど、登録は自分たちでやろうとおもったんですけど、それもお願いしちゃっていいかな、風間さん」と笑顔で圧をかける。
これだけで登録手数料の37800円プラス消費税分の家計がたすかるのだ。
 
風間くんはチカラなくハイと言うしかない。
本音のところは、彼も目標達成ということで、お互いにWin-Winなのだそうだ。
 
さて、めでたく契約完了後のハニーは
TBS「情熱大陸」のエンディングのように輝いて見えた。
 
なぜここまでクルマのディスカウントに情熱を傾けるのか?
聞いてみた
「時給10万くらいのワリのいい仕事だから。かな?」
 
そう笑って彼女は
マイバックを片手に、颯爽とスーパーに向かった
 
 
 
 
***
 
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2022-11-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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