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メディアグランプリ

子どもへ捧ぐ「アホになれ」


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:T.AYUMI(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「アホになれ」
 
これは、わたしの友人Aちゃんが、彼女の息子Rくんに常々言っていた言葉だ。
 
子どもに?
どゆこと?
 
と、聞いた当初、わたしはてんで意味が分からなかった。
 
わたしは、到底褒められた母親じゃないけれど、一応、一丁前に悩むこともある。
そんなときに、Aちゃんに相談すると、私からは見えない角度からの助言が飛んでくる。人間力MAXな彼女のそれがおもしろくて、自分の殻を破りたくて、よく会いに行くのだ。
 
あるとき言われたのが、冒頭の言葉。
「小学生になった息子にこう言ってたよ〜」と教えてくれた。
 
真意が分からないわたしは、その後のRくんが気になった。
 
「その言葉かけでどうなったの?」
 
 
答えの前に、まず、Rくんのことをご紹介したい。
Rくんは現在小学6年生。彼の経歴はちょっとおもしろい。
 
幼稚園時代:自由な園風で彼らしく育つ
1年生:公立学校・普通学級
2年生:フリースクール
3年生:公立学校・支援学級
4年生:公立学校・支援学級
5年生:公立学校・支援学級+普通学級
6年生:公立学校・普通学級
 
2〜5年生までを見て、お察しだろうか。いわゆる発達障がいを持っている。秀でているところと、苦手なことのギャップが大きい凸凹ちゃん。頭の回転がすこぶる速く、ずっとギア全開。だからかとても早口だ。
回転が速い分、先回りして考える。それが良い方向ならばいいが、悪い方向に結びつけてしまうという特性があった。何事も、挑戦する前に「失敗するから」と決めつけていた。幼少期から、地面に座ると汚れると言って座らない。泥を触るなんてもってのほか。寝る前には「嫌なこと思い出し大会」が始まる。
 
 
幼稚園に通っていた当時の、AちゃんとRくんの合言葉は、
「明日には明日の風が吹く」。
 
Rくん、意味は分かったような分からなかったような。
だけど毎晩2人でそう唱えて眠った。
「気負うことなかれ」
と、Aちゃんから出た言葉だった。
 
 
小学校は、幼稚園に比べるとより複雑な社会だ。
適応するのが難しく、目を三角にしてピリピリするRくんに届けたのが、冒頭の言葉だ。
 
「アホになれ」
 
ふざける友だちに適応できなかった彼に、Aちゃんはこう声をかけて固まった思考をほぐしてきた。
言葉の意図は「学校では力を抜け。真面目に考えすぎるな」ということだったらしい。しばらく呪文のように言い続けた。
支援学級で過ごす間もRくんは「アホになれ 」を特訓してきた。
最初は、頭の上に?がいくつも浮かんだRくんだったが、少しずつ少しずつその言葉を捉えるようになってきた。
時間をかけて、アホになってこれたところで、お母さんであるAちゃんはまた別の言葉をプレゼントする。
 
「どんどん失敗しろ」
 
失敗を恐れるあまり、挑戦しなかったRくんだが、子どもの特権は失敗できる環境にあるということ。大人になって失敗するのではダメージが大きくてできるなら避けたいものだが、子どもにはそんなに無くすものはない。失敗したって会社も潰れないし、大抵は人も死なせない。「おおいに挑戦し、おおいに失敗していい、どんどんやってごらん」という愛情を込めて彼に言ったのだ。
 
日々、本人が気づかないような小さな挑戦も、お母さんの働きかけでやってのけたりしながら、「どんどん失敗する」を、少しずつ自分のものにしていった。
 
失敗できるようになった彼は、新たな挑戦をすることになる。
普通学級に戻るということだ。
5年生の途中から少しずつ普通学級に通う時間を増やした。6年生では普通学級一本に絞りたい彼の、リハビリ期間だ。
 
 
普通学級から支援学級に行くというのが、特性を持つ子どもの一般ルート。
そこを逆流しようというのは、彼女の町では例がなかったようで、すんなりとまとまる話ではなかった。どうやら「こっちが無理だったから支援学級に戻る 」となるのを懸念してのことのようだ。Rくんの思いを軸に、学校、教育委員会と何度も何度も検討会を開き協議した結果、Rくんの希望が叶うことになった。
 
支援学級という、彼の安全圏から出ていくのは、船酔いするのに志願したマグロ漁船の新人乗組員と似たような心境かもしれない。でも彼は自分で決めた。挑戦したのだ、マグロ漁船に。
 
 
普通学級と支援学級では時間の流れが大きく違い、はじめは苦戦していた。
授業は前よりもスピーディになったため大変になり、休み時間はにぎやかで目が回った。
 
でも前とは違う。
友だちの冗談も、冗談だと受け流せるようになってきた。
嫌なことがあっても、相手の心を思いやりながら「やめてほしい」と伝えることができる。
帰りは友だちとふざけながら帰ってくる。
楽しめるようになってきたということだ。
 
Aちゃん曰く、「今、完全にアホ」。
 
最高の褒め言葉だ。
 
 
その時のその子に合った言葉一つで、その子らしく輝くようだ。
押し付けがましいわたしは、まだうまくできず勉強中だけど、その時々で考えながらやっていこうと思う。
 
Rくんは小学校ももうすぐ卒業。
しばらくは私立の中学に行くことを検討していたが、友人と同じ進路を歩みたいと、地元の中学校へ進学するそうだ。
 
これも決断。
 
アホになったあと、彼の目はまるく輝き、未来が大きく広がった。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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