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「サッカー好きですか?」はご縁をもたらす魔法の言葉


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋 さやか(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
私が中学3年生の頃、イギリスの隣のアイルランドの田舎で一人ぼっちだった。
 
中学2年生の一年間は、父の仕事の都合でドイツに家族で住んでいた。
 
若い頃にスイスに留学していた母は「可愛い子には旅をさせよ」という考えのもとアイルランドにある全寮制の日本人学校に家族から離れて1人での留学を勧めてくれた。
 
日本にいた頃は、小学校からエスカレーター式の女子校に通っていて文字通りの「箱入り娘」だった。このままだときちんとした大人になれないと心配になったらしい。
 
クラスメートは女子だけで、引っ込み思案だった私は友達が少なく人と会話するということがとても苦手だった。
 
また長女だったので年上というだけで緊張してしまい、男子と会話する機会が極端に少なかったためリラックスして会話ができる人が限られてしまっていた。
 
両親はそんな私を見かねて、日本の受験にも対応する日本人学校で外国人講師の授業が多数あり、寮の部屋では別の学年と共同生活という学校を選んだのだと思う。
 
学校生活のカリキュラムには、一学期の終わりに近隣のアイルランドの家庭にホームステイをするというイベントがあった。
 
入学して3ヶ月弱で英語もおぼつかない。
 
寮生活にも慣れていない中で、ホームステイがスタートした。
 
食事をするのも、お風呂に入るのも英会話が必要になる。受け入れてくれたホストファミリーの方々はとても親切で、日常生活は快適だった。
 
最も問題なのは会話が苦手だった私が、雑談で何を話すかである。
 
そんな折に、1990年サッカーW杯イタリア大会の決勝戦をテレビで中継しているのを偶然見て観戦をした。
 
当時の日本はまだまだ野球が一番人気で、サッカーはマイナーだった。
 
女子校育ちの私がサッカーで知っていることと言えば、図鑑で知ったアルゼンチンのディエゴ・マラドーナとアニメの「キャプテン翼」だった。名前を知っているくらいで何がすごいかはよくわからなかった。
 
テレビをよく見ると、私が知っていたマラドーナ率いるアルゼンチンが、つい最近まで住んでいたドイツ(当時は統一前の西ドイツ)と優勝を争っているではないか。
 
ルールは何も知らなかったけど、食い入るようにテレビの画面を見つめた。
 
西ドイツ代表のユニフォームを纏った選手たちを見た瞬間に、家族で過ごした西ドイツの風景やお世話になったドイツ人の顔が浮かび、気がついたら手に汗を握って必死に応援していた。
 
結果は1対0で西ドイツが優勝した。生まれて初めてサッカーを観戦して感動した。
 
ホームステイのホストファミリーが「サヤカが住んでいた国が優勝したね。おめでとう」と祝福してくれた。
 
英語もサッカーも何もわからなかったのに、思いがけず英語での楽しい会話ができたのだ。
 
次の日に近所の家にホームステイをしていた同じ学校の2歳年上の男子の先輩に偶然会った。それまで会話をしたことがなかったのに、ドイツが優勝した話で盛り上がった。
 
女子校育ちで男子と話した経験に乏しかった私は、ちょっと声をかけられただけでドギマギしていたのに、2歳も年上の男子の先輩とサッカーを通じて楽しく会話をできたというのが我ながら衝撃的だった。
 
この時にサッカーは世界共通語だということを肌で感じたのである。
 
数年後に日本にもJリーグが発足し、W杯優勝経験のあるドイツの選手も含め、海外のスーパースターが多数来日した。
 
また、1994年のW杯アメリカ大会の「ドーハの悲劇」を受験勉強の合間にテレビで観戦し、アディッショナルタイムでイラクに同点ゴールを許してW杯の切符を逃したことに涙した。
 
サッカーというスポーツは、選手もサポーターも勝ったら天国だが負けたら地獄である。この気持ちの振り幅も競技としての魅力だと感じた。
 
また単なる球技の面白さだけではなく、体を張ったディフェンスは格闘技のような迫力があり、得点を入れるときのシュートは芸術的で美しい。
 
ドーハの悲劇以来、テレビのサッカー番組と試合の中継で気になった選手の名前と顔と背番号を覚える癖がついた。
 
大学の四年間はイギリス、フランス、スペインに短期留学をした。色々な国のクラスメートと仲良くなると、知っている選手の名前を話してみたがびっくりするほど喜ばれた。
 
サッカー選手といえば英雄で、国民の心を明るくする存在だ。逆に海外で知っている日本人の名前を外国の方から言われたら嬉しくなった経験はないだろうか。
 
日本で普通に過ごしていても、新たに人と知り合った時にサッカーが好きということがわかると途端に仲良くなれるから不思議だ。海外のお客様の接客や
1人でバーや交流会に行くと「サッカー好きですか?」とついつい聞いてしまう。
 
サッカーが共通の趣味で恋愛に発展したり、新しい友達ができたりしていつの間にか楽しい人の輪が出来上がっている。
もともと子供時代は引っ込み思案で年齢や性別が違ったら会話ができなかった頃を考えたら、サッカーに偶然出会えて本当によかったと思う。
 
1998年のフランス大会に初出場した年に社会人となった。このころを境にサッカーが好きな人がますます増えてきたと思う。次に海外に行くときはサッカーを観戦したいと思っていた。
 
しかし、私に残念なことが起きてしまった。
 
社会人になって数年経った頃に病気になってしまい、飛行機の長時間のフライトが怖くなってしまい海外に行くことがほぼ難しくなってしまった。また、人が密集する場所もますます苦手になってしまった。
 
大好きだった海外からは縁遠くなってしまったが、サッカーのW杯や欧州選手権の試合を観ると自然と海外に接している気分になる。
 
サッカーの大きな試合がある時だけだが、選手のインタビューで外国語が少しでも分かるととても嬉しいし、わからない単語を調べてみたりしている。
 
また、出場国であまり馴染みのない国を知るというのもとても楽しい。
 
アフリカ勢のサポーターの音楽と踊りを交えた応援を見るのは文化に触れたように感じるし、サッカーが全てという中南米諸国の国歌斉唱は歌うというより魂の叫びのように感じて自分の国ではないのについつい涙腺が緩んでしまうのだ。
 
そして選手やサポーターのユニフォームの色を見るとそれぞれの国の香りや、親切にしてくれた人たちの笑顔を思い出す。
 
メールもSNSもない時代の海外生活だったので、仲良くなった友人とは疎遠になってしまったが、もし海外で一度でも縁があった友人が偶然観た日本戦で私のことを思い出してくれていたら、これ以上嬉しいことはない。
 
この先、年をますます重ねたら行動範囲が狭まってしまうと思うが、「サッカー好きですか?」を合言葉に海外に接することと色々な人との交流を続けていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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