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修学旅行に行けることは、当たり前じゃない!


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記事:むぅのすけ(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
高校二年生の息子が、明日から三泊四日で修学旅行に行く。
行き先は中学の時と同じ、沖縄だ。
 
高校に入学して割とすぐに、修学旅行の行き先は沖縄を予定している、と知らされた。
その時、私が息子にかけた言葉は
『また沖縄かぁ、ちゃう(違う)とこやったらよかったね』 でも
『同じでしゃあない(仕方ない)けど、まぁええやん。みんなと一緒ならまた楽しいやろし』 でもなく
『よかったね! 沖縄行けるんだ』 だった。
 
息子は、ちょっと嬉しそうに、そして噛みしめるように肯いた。
今度こそ行けるといいけど……と言いながら。
 
 
突然だが
現在、大人である紳士淑女の皆さんの中で、義務教育課程における修学旅行に行けなかったという人はいるだろうか。
 
当日になって病気になったり、不幸があったり、その他やむを得ない事情で、個人的に行けなかった方はいるかもしれない。
もちろん行けなかった当人には、残念で気の毒な話だが、他の同級生は行ったはずだ。
だから、修学旅行の思い出が自分には作れなかったとしても、他の皆にはあり、卒業アルバム等にも、学校行事として実行された記録は残っているだろう。
 
でも、学校がその年の修学旅行を取りやめる、ということはまずないのではないだろうか。
 
 
実は息子は、中学三年生の修学旅行に行けなかったのだ。
 
彼に何かあったわけではない。
二年前の2020年当時、世の中が、日本だけでなく世界中がコロナ禍によって大きく変わっていく最中にあった。
その大きなうねりのような社会の変化の中で、当時の息子の修学旅行は中止になったのだ。
 
 
息子の中学では、三年生の六月頃に二泊三日で、沖縄への修学旅行が予定されていた。
一泊は宿舎、もう一泊は近頃人気の民泊で、地元の方のおうちに泊めてもらって生活を体験するというものだった。
行き先がどこであれ、学校の大勢の仲間と、普段と違う場所で寝泊まりを共にできる経験は修学旅行の醍醐味であり、良くも悪くも他には代えがたい思い出になるものだ。
 
でも世の中では、以前なら、当たり前のように年月が過ぎて、その日になればこなせるはずだった予定達の多くが、変更や中止を余儀なくされていた。
芸術やスポーツの大きな大会すら、人が集まってはならないからと、直前での中止も珍しくなくなっていたのである。
 
当時はコロナ禍という言葉が使われ出した頃で、コロナという病気がもたらすあらゆることに、今よりもっと社会が混乱していた時期だった。
 
そもそも学校もまともに通えない状態から始まった新学年だったが、やはりコロナは治まりそうになく、学校側は修学旅行の延期を決めた。
九月に変更して予定を組みなおし、感染状況をみて無理なら中止する、ということだった。
 
三年生達は希望を九月につなぎ、修学旅行に行く前提で、班分けやしおり作成を進めていた。
同時に沖縄について、戦地となったことや琉球時代のことなどにも学びを深めていった。
そしてそれらは、夏の暑い日に授業として他の教科の合間に行われていた。
 
例年なら、夏休みの日程だったはずなのだが、春頃にずっと休校になっていたせいで、あの年の中学生の夏休みは、お盆前後の八日間ほどしかなかった。
 
一般の社会人と変わらない休みの少なさに
『なんでクラブでもないのに、毎日授業で学校行かなあかんねん~』
とぼやく息子に、心の底から同情したものだった。
 
そんな思いをしながら準備を進めたものの、結局、彼らが修学旅行に行くことは叶わなかった。
 
決定が下るまでの日々、何度も、沖縄なんて遠いところに行けるのかと心配した。
私だけではないだろう。
多くの保護者の方も、賛否それぞれに気をもんだ日々だったに違いない。
もっと近くで、せめて一泊でもいいから、という声もあったようだが、時はもう九月であった。
 
彼らは総じて受験生なのだ。
 
これ以上、予定を組みなおすことはないと事前に知らされていた通り、中止となって積み立てていた旅行代金は返金された。
そしてそのまま、学校側は受験モードへとシフトチェンジしていった。
 
 
中止の報を受け、予想はできたものの、私はなかなかにショックだった。
といって、大げさに残念がるわけにはいかない。
何より息子がどう考えているのか気になった。
 
息子はというと、淡々としていた。
世の中の様子を見れば、仕方のないことと感じたようだった。
私はそんな息子を見て、残念だけど仕方ないね……と言うだけにしておいた。
 
その後、聞くところによれば、残念がったのは主に保護者で、本人たちは概ね冷静に受け入れているらしかった。
彼らはあの時、中学三年生にして、世の中にあるどうにもならない理不尽なことを、全員で経験したのだ。
 
修学旅行に行けなかったことは、残念としか言いようがない。
でもそれは、当時の誰にも、どうにもできないことだった。
文句を言っても仕方がない、そんなことする間は惜しいと言わんばかりに、準備したものをそっと片付けて、受験生になっていったのだろう。
彼らにとっては、修学旅行に行けなかったことこそが、全員の思い出になっていたのだ。
 
 
私が知らないだけで、もしかしたら大きな災害のあった地域などでは、修学旅行どころではない年があったかもしれない。
だとしても、それは限られた地域のことであるはずだ。
でもあの年は、全国的に約半数の学校が中止を決めたそうだから、修学旅行に行けなかった中学生も全国に大勢いることになる。
 
皆それぞれに理不尽に見えることを、同級生全員で飲み込んで前を向いたのだろう。
 
コロナによって、もっと大変な思いをしている方もたくさんいる中で、たかが修学旅行かもしれない。
でも、行けなかった本人たちには、これも大きな学びの経験になっていたのではないかと改めて思った。
 
 
 
息子は明日、五時に家を出るらしい。
ただでさえ早い集合時間の上、我が家は空港まで約二時間はかかるからだ。
 
母はそんな早い時間起きられへんわ~、と言いながら、やっぱり起きて見送ってやろう。
息子と同級生の皆が、一生の思い出となる、楽しい時を過ごせることを祈っている。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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