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僕の心臓は、もはやうどんも作れない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三好 健(ライティング・ゼミ10月コース)
 
 
「この中で、お医者さんや看護師さんはいらっしゃいますでしょうか!?」
ニュースやドラマや映画の中で、こういった台詞をときどき聞く。
例えば飛行機の中だったり、新幹線や電車の中だったりで、急に体調が悪くなった人、怪我をした人を助けるのだ。
こういうときに手助けができる人たちって、素直にかっこいいと思う。憧れもする。まるでスーパーマンのように見えるじゃないか。
 
実際にはそういったシチュエーションには、なかなか遭遇しないのだが。
だが……といいつつ、年に一回程度のペースで遭遇していた時期があった。
 
40歳前後のオッサンというのは、もうタチが悪くてね。僕もなのだが。
精神と肉体の乖離が大きく広がる時期なのだ。
男というのは単純で、何歳になってもガキンチョで、ちょっとしたことで張り切っちゃう。でもその「張り切り」に肉体が付いてこない。
心は子供、身体はオトナ……ちょっとした名探偵になれそうだが、事件を解決することはなく、どちらかというと事件を起こしちゃう。
 
若くかわいいレディ達や、酸いも甘いも知ったマダム達に見られていれば、そりゃあオッサンどもがんばっちゃうもんね。
そう、子供の保育園の運動会というのは、パパ達が活躍できる数少ない場なのである。
 
僕の娘が通っていた保育園では、「親子リレー」というのがその運動会の山場だった。親と子供がワイワイキャッキャと一緒に走るのではなく、「親vs子供リレー」である。
頭は賢くなり、身体も出来てきて、種目によっては子供に部があるケースもある。それが、先生のお手伝いもできて、年少さんの面倒も見れちゃう、みんなの憧れ「年長さん」。
鉄棒や登り棒なら、たぶん子供の方が上手だろう。身体の軽さが物を言う。
だが、走ることに関しては、まだまだパパ達は負けない。
しかし「親子リレー」は、巧妙に子供の側にハンデが付けられ、なかなか良い勝負になるのである。
 
狭い園庭。滑りやすい乾いた砂。そこに描かれた楕円形のコース。
子供達に良いところを見せたい!
マダム達にモテたい!?
そういった想いをエネルギーに、白い石灰で描かれたコースを全速力で走りきろうとするオッサンが、足をズサーッと滑らせ、ゴロンゴロンと転がっていく。
そうして、毎年一人はオッサンが犠牲になるのである。
 
するとどうだろう。
誰も何も声を掛けずとも、そのオッサンの元に、数人の人が集まるのだ。
大抵は女性。そして彼女らは、看護師を本職としている。
まさに、「この中で、お医者さんや看護師さんはいらっしゃいますでしょうか!?」的な状況である。
(経験上、全治半年くらいの大ケガが多いので、オッサン達は本当に気をつけましょう)
 
保育園というのは、「人間関係」というものに焦点を合わせたとき、とても不思議な場となる。
仕事の繋がりで出会った人ではなく、学校などで学ぶ友人とも違う。
スポーツや趣味のサークルで出会う類いの関係とも違う。
自分自身の好みで繋がっている人間関係ではないので、色んな人がいるのだ。
 
看護師はもちろんのこと、警察官、消防士、理学療法士、義肢装具士、うどん屋、医師……
本当に色んな職種の人がいる。
 
「色んな人」がいるけれど、嫌な人というのはそうそういない。
自分の子供と、子供の友人。子供達が繋げてくれる、親同士の関係。
利害が少なからず絡む職場や学校などの関係とは違い、緩い繋がりが心地よい。
弱いネットワーク、弱い紐帯(ちゅうたい)が、情報の伝達において高い価値をもたらすという説もある。
 
親たちの目的はただひとつ。子供が楽しいかどうか。
子供達のことを中心に置いた思考や行動をするから、皆、優しくて温かいのだ。
 
しかし弱いネットワークだったからこそ、そこが仇となり、感染症が蔓延していた時期において、まったくその繋がりが切れた。
特に保育園を卒園し、それぞれの学校へバラバラとなってしまえば、会うこともなくなる。
彼らは何をしているだろうと思いつつも、積極的に会いに行くこともなかった
 
しかし、連絡が来た。我が家の奥さんを経由し、フットサルのお誘いだった。
「行く」と僕は即答した。
フットサルがしたかったわけではなかった。むしろ球技は苦手。
でも、皆に会えれば、きっと子供も楽しいだろうと思ったから。
 
オッサンたち10人でフットサル。ギャラリーに、子供達と奥様方。
むくむくと起き上がる、オッサン達の中に眠るガキンチョ魂!
 
「ケガをしないように気をつけましょう!」
開始前に散々皆で確認し合った。
しかし始まってしまえば、どうだろうか。
みんな転びまくったとか思うでしょう?
 
残念ながら、そうはならなかったのである。
 
心臓の鼓動が速すぎてやばい。
そして呼吸も速い。息を吸っても全然酸素が入ってくる気がしない。心肺機能が衰えていた。
足腰が砕けて転ぶ前に、まず心肺機能がついてこなかったのである。
ここまで弱っていたのかと、我ながら衝撃を受けた。
 
「あと1分!」
弱音を吐こうにも、はぁはぁしちゃって声にならない。
 
僕は空を仰ぎ見る。青い。
暑い。冬なのに。首の周りに汗が滲んでいた。
 
空は青く、芝は緑。でも目の前は白くなりそうだ。
 
1セット5分……。カップ麺は作れるけど、カップうどんは作れないな。
その程度で満足しちゃうなんて、コスパの良いカラダだな、ほんと。
 
そうして、5分を2セットやっただけで、オッサンどもの心肺は満足したようであった。
くたばったオッサンはギャラリーとなり、子供達が15人くらいでワラワラとフットサルもどきを興じていた。
子供が楽しそうにしている姿を見るだけで、充分楽しい。
 
そして、こうやって保育園を卒園した後でも繋がっていられる今の人間関係には、感謝しかなかった。
 
フットサルに誘ってくれたパパ友と、LINEの交換をした。「今さらかよ!」と思われるかも知れないが、パパ友というのはこの程度の繋がりなのである。
仲が悪いわけではない。会えば楽しく話す。飲みにも行っていた、かつては。
その弱いネットワークが、ちょうど良かったのだ。
 
でも、これからももっと、この関係は続けていきたいと思った。
間に子供が入らなくなったとしても。
もう少し強いネットワークとして。
 
いずれラーメンも作れない心臓になり、それこそリアルに看護師さんのお世話になるかも知れないが。
これからは自分の老後のためにも、人との繋がりを強く大切にしていきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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