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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西田 七海(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「アイドルにハマってんねん。韓国発の男性グループやねんけど」
母が言った。齢60手前の、アイドル黄金期を通過して育った彼女がハマったのは、キラキラ王子様ではなく、ちょっと抜けたところのある、フレッシュな若手アイドルだった。
これまでにも、母が音楽アーティストにハマることはあった。あるときは、Jポップをメインとするシンガーソングライター。あるときは、インディーズからデビューしたばかりのバンド。多彩なパフォーマンスに触れることを好む姿をよく知っている私は、「ああ、またか」といった心持ちだった。
しかし、今回は違う。熱中度合いが違うのだ。
SNSの更新があれば逐一チェックをし、同じアイドルグループを好いている人同士のグループチャットに登録した。初めてのファンクラブ登録を済ませたかと思えば、しまいにはライブに使うための『ファンサービスうちわ』とやらを準備した。因みに、デザインからプリント、飾り付けまでをするのは私である。正直、とんだとばっちりだった。
しかしまあ、驚いた。今まで「追っかけ」とは無縁の世界にいた母がここまでハマるとは。だから、素直に疑問だった。母もそうだが、私自身も、そこまで熱中出来るファンであったことがないのだ。
「何故、そんなに熱中出来るのか」純粋な疑問と、少しの熱さましの為に投げ掛けた問い。
その言葉に、母は笑った。
「追っかけはな、いずれ思い出になんねん」
生き生きとしていて、それでいておおらかな笑顔だった。
 
アイドルを好きになる理由は、沢山あるだろう。『歌って踊る』はいまやアイドルの最低条件となり、その条件から提供するコンテンツやアイドルのコンセプトに併せて枝分かれしている。音楽番組に留まらず、ドラマやバラエティの出演、ラジオのパーソナリティに、雑誌の連載。様々なメディアを通して、グループや各個人の特異性を打ち出している。
その中でも、最近特に見られるようになったのが、『ライブ配信』である。SNSや専用のアプリケーションを用いて、メンバーの練習風景や日常を届ける。リアルタイムで視聴出来るだけでなく、視聴者はコメントや支援を贈り、それに対するメンバーの反応までもを見ることが出来る。
アイドルは今や、高嶺の花では無くなった。もっと身近で、親しみやすい存在なのだ。
 
母はいう。今のアイドルは成長を一緒に追いかけることができる、と。
例えば、アイドルが新しい曲を発表する。すると、動画サイトや音楽配信サイト、CDなどで配信される。さらにSNSでメンバー個人個人が発信し、ファンが送ったリプライに返信していると思えば、MV撮影の裏側や練習風景がアップされ、曲に込めた想いをライブ配信で話す。
メンバーとファンが同じ時間を共有する機会が増え、それが一層、アイドルの成長を間近で感じられるのだという。
そして、それがアイドルとファンの未来に生きる過去になるらしい。
例えば、今までよりも規模の大きい会場でライブをする、CDの売上枚数が頭一つ飛びぬけたものになる、など。これには、脱退、卒業、解散、なども準ずる。そういった、そのグループにとっての節目の時に、過去の発言や、ライブ配信から「あの時こんな事を言っていたよね」と思い返しては、成長の軌跡を一緒に追うのだという。
 
私はそこに、家族や親戚、近所の幼馴染とのありふれた日常のような、そしてそれを共有する、望郷の温かさに似たものを感じた。母のような『見守り型』の追っかけは、そう言った、過去と未来を見据えた楽しみ方をするのだ。
成程と私は感嘆した。アイドルが『違う世界に居る憧れの人』と言われることは無くなった。アイドルは今や『同じ時を共有する人』として、近しい距離にいるからこそ、追いかけられるのだ。母とそのアイドルの年の差がたとえ40近く離れていようとも、憧れではなく見守りとして追いかけているのだ。
追っかけをしている母の笑顔は、近所の人や私達に向けるそれと、何ら変わりなかった。
 
例えばその気持ちを、私に置き換えるのならば何になるのだろう。近所に住んでいる年下の子が芸能界を目指す、といった感じなのだろうか。年の差を考えると、小学校で出会っている年齢としてもぎりぎり通ずるものがあるのかも知れない。そんな考えを巡らせながら見たアイドルの姿は、舞台用の化粧をしているにも関わらず、どこか人間味のある親し気なものに感じられた。
 
「近所の子の成長を見守っているみたいな感じや」
私がそれを共感出来るようになるには、まだ少し人生経験を積まなければならないのだろう。
盗み見た母の横顔に、私は少しくすぐったさを覚えた。そうしてそれを悟られないように、大きな声で声をかけた。
「うちわ、出来たで」と。
 
 
 
 
***
 
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2022-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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