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週刊READING LIFE vol.152

叔父さんが姪っ子のために選書した絵本《週刊READING LIFE Vol.152 家族》

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2021/12/20/公開
記事:nasuica(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
そろそろ帰省を考える時期になってきた。コロナ禍が始まってからほとんど帰る機会がなかった。感染者数が落ち着いた時だけ、「不要不急」ではなく、「要かつ急」の時にしか帰っていなかった。慌ただしく実家について、用事を済ませて帰る、あんまり家族団らんという雰囲気のことはできていなかった。
 
そしてなおさら、姪っ子に会う機会がなかなかない。姉夫婦の子供が三姉妹で、まさに蜂の巣をつついたような賑やかさなのだが、実家に帰るタイミングがなかなか合わず、会えていない。そういえば、姪っ子と長時間遊んだのは、2年近く前になる。コロナが日本に来る前に、一緒にディズニーランドに行った。まだ3人目がお腹の中にいる時に、6歳と5歳の彼女たちは、地面に足がついていないんじゃないかってくらい、ピョンピョンはしゃいでいた。
 
なんか、姪っ子って不思議な存在だなー、とふと考えることがある。
家族、と言われるともちろん家族なのだが、今まで生きてきた歴史を共有しているわけではない。だから、共通の話題は少ない。彼女たちにとっては、私はたまに会うオジサンだ。
こちらにとっては少しだけ、恋人に似ているところもある。プレゼントを買ってあげたくなるし、姉の送ってくるLINEの写真を見て、愛くるしいなあと思う。だけど、(こんなこと言うと怒られそうだけど)ずっと一緒にいたいとは思わない。ちょっとだけ遊びに付き合ってあげるのは楽しいけど、長い時間いるとむちゃくちゃ疲れる。彼女らはスタミナが無尽蔵なので、私がやりたいこと、読書や残っている仕事など、できるわけがない。
 
私なりの結論としては、「たまに会う、印象がむちゃいい、かあちゃんの弟」くらいの都合のいいポジションをとりたい。つまり、お盆と正月くらいに顔を合わせて、ちょっとだけ遊んでほしい。自分がプレゼントしたものに、喜んでいる顔を見たい。(少なくとも、思春期に入る前までは……。)

 

 

 

一番上の姪っ子が、小学校に入る前くらいだっただろうか。彼女の気を引くためには、どうすればいいかと考えた。Googleで「姪 プレゼント」とかで調べてみたりしても、しっくりくるものはなかった。そこで、最近の彼女らの好みを姉からリサーチしてみると、女の子らしく「プリンセス」ブームが来ているという。ディズニーのプリンセスの名前を全部言えるらしい。ディズニーのシールを部屋中に貼ったり、プリンセスが描いてある絵本を、うっとりとため息をつきながら読んでいるという。
 
姉にその話を聞いた時に、ディズニーの何かをプレゼントすればいいのか、と思った。が、よく考えると、それは得策ではないなと思った。私よりもさらに姪を喜ばせたい人がいるからだ。
姪っ子にとってのおじいちゃん、おばあちゃんがいるからである。私の両親もそうだし、お義兄さんの両親もそうである。プレゼントを考える上で、おじいちゃん、おばあちゃんは競合として強い。私よりも溺愛度合いははるかに強い。それ故に、財布のひもはガバガバだ。彼女たちが欲しい、と思ったものはすぐに買い与えている可能性が高い。
 
つまり、「顕在的」な欲しいもので戦うのは、非常に難しいと思った。プリンセスのシールだったり、おもちゃだったり、姪っ子が自覚的に欲しくて、言葉にできるものは私はプレゼントとして選ぶべきではないと思った。
彼女たちが自覚しておらず言葉にできない、「潜在的」なものに着目する必要があると思った。そして我ながらアホだなあと思うが、どうせ何かあげるなら、ながーーく思い出に残ってほしい。彼女らは、寝て起きたらもう「飽き」がくる。その飽きを乗り越えるレベルの何かがプレゼントの中に必要だと思った。
 
理想的なプレゼントを探すのはなかなか難しかった。何せ、年に数回しか会わないにも関わらず、潜在的なほしいものを突き止めねばならないのだから。その数回からヒントを見出すしかない。

 

 

 

最大のヒントは、すぐ近くの記憶にあった。
一番上の姪は異常な「読書狂」なのだ。姉がご飯を食べさせようとしても、お風呂に入れさせようとても、自分の周囲に積み上げた20冊くらいの絵本を読み終わるまでは、次のアクションに移れない。私の母親(つまり、姪にとってはおばあちゃんになる)は、長女から要約系Youtuberさながら、絵本の解説されるらしい。気に入った本であれば何十回も繰り返し読んでいるため、一言一句覚えているのだ。たまに「おきさきさま」とか、年齢からかけ離れた単語が出てきて驚くことがあると言っていた。
 
そうか、絵本を買ってあげればいいのか。そう思った。それと同時に、なんて難しい問題なんだ、とも思った。
 
既に実家には、数百冊の絵本がある。実家の居間の一角は、ちょっとした「絵本図書館」のようになっている。読書好きの私の父は、兄、姉、私の三兄弟のために絵本を好き放題買っていた。もちろん、我々三兄弟は、その絵本を読んですくすくと育った。しかし、姪っ子のようにジェンガのように積んでむさぼるように読んでいたわけではない。もしかすると、本好きの父の遺伝子が隔世遺伝して、何かが憑依したかのように本にかじりつかせているのかもしれない。
 
絵本図書館(仮)が実家にあり、かつ、姉はせがまれて図書館に絵本を借りに行く。絵本読者の、エリート育成機関のような環境の中だと思った。そんな中で、彼女らの嗜好に合った絵本を探せるのか。むしろ、読んだことない本を探せるのか、それが大きな問題だった。
 
ふと、書店員さんってこんな気持ちなのかな、と思った。この人にぜひ読んでほしい、喜んでほしい、そしてできたら彼女の人生が豊かになる、そんな本を選書したいと思ったのだ。

 

 

 

帰省する度、絵本探しに苦労した。彼女たちが読めるレベルだけど示唆に富む絵本。何回読んでも楽しめるし、新たな発見もある。いろんな視点で絵本を選んだ。
 
その中で、私が選書した絵本を二つ紹介したい。
あくまで実家の本棚に存在せず、小さいころ読みたかったなーと思って私が買ったもの。そして、姪っ子が繰り返し読んでいるもの。この二つの条件を満たした絵本を紹介させてほしい。

 

 

 

一つ目は、「賢者の贈り物」(オー・ヘンリー)だ。
裕福ではない夫婦の物語。二人はお互いにクリスマスプレゼントを買おうと思っている。けれどもお金に余裕がなく、プレゼントは買えない。
夫妻には自慢のものが二つあった。一つは、夫の父から受け継いだ金の懐中時計。そして二つ目は妻の綺麗な長い髪の毛。
妻は、夫が懐中時計を日頃から大事にしているのを知っていた。その懐中時計を吊るすのに、ちょうどいい鎖を買おうと思ったが、お金はない。悩んだ結果、自分の髪の毛を商人に売り、そのお金で鎖を買う。
家に帰った夫は、バッサリと切った妻の髪と、プレゼントに驚く。彼は、愛している妻の綺麗な髪をすくための櫛を買うために、父から受け継いだ大事な懐中時計を売ってしまっていた……。
 
有名なお話なので、知っている方も多いかと思う。もし知らない方は、ぜひ手に取って読んでみていただきたい。
いくつになっても飽きない絵本だな、と毎回実家に帰って読む度に思う。そして、毎回泣ける。幼児向けの絵本で、しかもその短さで泣けることってある? って毎回思うのだけど、毎回泣ける。夫婦の行き違いが生む、思いやりのストーリーが心にぐっとくるのだ。
オー・ヘンリーの絵本は間違いがない。もう一つ、「最後の一葉」という絵本も姪っ子たちに非常にウケが良かった。

 

 

 

二つ目は、「ふしぎな たね」(安野光雅)だ。
ある青年のところに、仙人が現れる。その仙人から謎のタネを二つもらうところから始まる。青年がタネを一つ食べると、一年何も食べなくても空腹にならない。もう一つを植えておくと、翌年二つタネができる。その二つのタネを、一つは食べ、一つはまた植えて……というのを毎年繰り返す生活をする。
ところが青年は気づく、二つ植えたらどうなるのか、と。その年はなんとか自分で働いて食いつなぎ、二つともタネを植える。すると翌年には四つのタネができた。
その中から一つ、食べて余った三つをまた植える。一年我慢しただけで、どんどんタネが増えていく。
時がたち、青年は結婚、子供が生まれる。すると、三人タネを食べる必要が出てくる。家族のために頑張ってタネを育てる。
しかし、嵐が来てタネを植えた畑が流される。なんとか家族を守り、少しの貯蔵していたタネを残すことに成功する。そしてまた、一から新しく生活を始める。
 
この本の面白さは、なんといってもタネの増え方だ。このままいったらどんだけ増えんねん!  と、ページをめくるにつれ興奮が高まっていく。紙に書いてでも、翌年には何個になるかが気になってしまう。なんとなく読んでいても、数学を意識させられることがこの本のにくいところ。
 
そして、個人的にはかなり投資教育っぽいなと思う。100万円あったとして、利子として3%が毎年もらえるとしよう。利子にも二つ種類がある。単利と複利だ。
単利の場合、100万円にしか利子がつかない。そのため、毎年3万円もらえるだけだ。しかし複利の場合、一年後には103万円、二年後には103万円×3%が利子として増える。
単利の場合、100万円が2倍になるのに33年くらいかかる。しかし複利の場合は24年しかかからない。じゃあこれが複利で5%だったら……、とか考えてしまう。
この絵本は、複利の力を使って資産を増やそう、そして台風のようなリスクいつか起こるので注意しようね。大人になってからだと、そういう風に読める。
こちらも、どんどんタネが増えていくワクワク度合いとともに、数学的な面白さが相まって大人になっても何度も読み返してしまう絵本だ。
 
安野光雅さんは、他にも面白い数学の絵本を描かれているので、おすすめしたい。

 

 

 

姪っ子が絵本を読んでいるのを見ると、あーこれ読んだわ。幼稚園のころハマってたわ。みたいなことが多々ある。私の母も私たち兄弟に読み聞かせしたことを覚えているので、親子三代にわたって、絵本に書かれている教訓が染みわたっている気がする。
イソップ童話とか、長く残っているものは、面白さと大切な学ぶべきものがあるから今も存在しているんだろう、じゃないと他の面白いだけのものに淘汰されてしまうだろうと思う。
そう考えると、絵本はウナギ屋さんの秘伝のタレみたいなもので、我が家で似た価値観を形成する上で、一役買っているのだなと思った。その秘伝のタレに、私も絵本を買って少し違った味をつけ足してる、そんな感じなのかもなと思った。
 
そんな姪っ子たちも、大きくなったら
 
「あーこれ小さいころ読んだわー!」
 
となるに違いない。その中に、私がこっそり忍ばせた絵本が入っていたらいいな。
その時は、「これ叔父さんが買ってきたやつだよ」と、どや顔で言ってやりたい。
 
 
 
 

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2021-12-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.152

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