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週刊READING LIFE vol.163

めちゃくちゃ当たるという占い師に占ってもらった結果とは《週刊READING LIFE Vol.163 忘れられないあの人》

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2022/03/28/公開
記事:パナ子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
すごく具体的に私の将来を言い当てた人が、この世の中に一人だけいる。
それが、猫屋敷の田村さんと呼ばれている占い師だ。
「猫屋敷」というのは占いの館の正式名称ではないのだが、猫をたくさん飼っている部屋で占ってもらうということで占い客の間ではそのように呼ばれていた。
私が占いにドはまりしていた約20年前、友人と連れ立って数々の占い師の元を訪れたが、正直田村さんほどドンピシャで当てた人は他にいない。
 
今はもう移転してしまったようだが、よく当たると評判の猫屋敷はその当時、福岡の親不孝通り近くにあった。
親不孝通りは福岡市中央区天神という繁華街に位置している。
そもそも「親不孝通り」は通称で、本来「天神万町(よろずまち)通り」という正式名称があったのだが、ほぼ誰も意識していないといっても過言ではない。
「親不孝通り」の名前の由来は、大手予備校がこの地に移転してきたことに始まる。多くの飲食店などがあったこの通りに若者たちがたまり、「浪人生なのに勉強もせず遊ぶ親不孝者」という声からこの「親不孝通り」という名称が浸透していったのだ。
実際には、この由来以上に、当時の親不孝通りにはいかがわしい雰囲気が満載であった。
 
大小さまざまなライブハウスやクラブなどがあり、夜は若者たちで賑わうし、朝はその名残りなのか何なのか、モヒカンのロックな革ジャンのお兄さんが道路で寝転がっていたりしている。なかなかダークな匂いを漂わせていた。更には、今でこそないがテレクラがあったり、怪しい夜のお店があったりと、一応真面目少女として生きていた私は「本当は足を踏み入れたらいけない場所なんじゃ……」と感じたことも多くあった。
それでも当時は名の知れたミュージシャンたちが、ドラムロゴスやドラムビーワンといった全国的にも有名と言われているライブハウスに来ていた為、私も姉や友人たちと何度も足を運んだ。恐れながらも親しみを持ってしまう、そんな誘惑の通りなのである。
 
そんな通りから少し入ったところにひっそりと古びたアパートが建ち並んでいる場所があった。人通りも少なく、表の店が多い場所とはうって変わって急に静かになる。普段、ここで生活している人以外行き来しないような所だ。猫屋敷の田村さんは、そのなかの一つのアパートの2階の一室にいた。
 
占い好きの間では、田村さんの評判は上々だった。
「なんか、めちゃくちゃ当たるらしいよ」
こんなのは当たり前で、なかには
「『とにかく好きなことだけしなさい』と言われた人が過去にいたんだって。そしたら、その人後日亡くなったんだって……」
ウソか本当か、そんな都市伝説のような話も出回るほどだった。
 
興味半分、怖さ半分。
怖いけど、それだけ当たると言われているのなら、一度は占ってもらいたい!
私の中に湧き上がる衝動を抑えるのは到底無理なようだった。
 
早速、学生時代のからの友人と予約を取ることにした。
ちなみに当時、まだスマホなんてものは当然なく、情報は口コミで……ということも珍しくない時代であった。田村さんの携帯番号は知る人ぞ、知るといった感じで以前占ってもらった人が次の人に伝えて番号を知る、そのようなリレー形式をたどっていた。そうなると、今みたいにググれば出てくるのとはわけが違い、田村さんの携帯番号はプレミア付といってもおかしくなかった。人気の占い師のため、すぐにとはいかなかったが、無事に数週間後の予約を取り付けることができた。
 
そして、迎えた当日。
田村さん本人に言われた場所に向かう。看板も何もない少し古びた木造のアパート。
多少、戸惑いながらも足を進める。
「ここかな?」
「うん、多分ここだよね……」
おそるおそる2階に上がると何となくの雰囲気で「あそこが噂の占いの館だ」ということがわかった。
 
約束の時間になり、占ってもらっていただろう若い女性客と入れ違いに私達が部屋に招き入れられる。田村さんは一見物静かな40代くらいの女性だった。
さすが、猫屋敷と言われるだけあってギョッとしてしまうほどの数の猫がいた。実は私は犬や猫の動物が多少苦手なのである。遠くに見ている分には「可愛いね~」と余裕なのだが、自分に近づいてくるのがわかると「え! 噛まれない? 大丈夫!?」と急に不安になってしまうのである。そういうこともあり入室早々引き気味になってしまったが、田村さんはそんなことはもちろんお構いなしで座るよう私達に促した。
 
こたつテーブルのような小さい机を挟んで座る。
田村さんが差し出してきた紙に名前と生年月日を書く。
まずは友人からだ。
 
差し出した紙を見て、ほんの数十秒後……怒涛の占いがスタートした!
とにかく言葉数が多くてメモを取りたくてもきっちりは取れない。ペラペラペラペラ、田村さんの言葉は急に立ち漕ぎしてシャーッと走り去ってしまう自転車のようにとどまることを知らない。その自転車には油がたっぷり差してある。そんな感じだ。
立て板に水とはこういうことか! と変な感心をしてしまう。
(田村さん、もしかして原稿準備してました?)
そう思ってしまうほどに、とにかく田村さんは友人に対してしゃべり続けた。
 
生年月日から運勢を読み解く四柱推命という占いにプラスして、田村さんは霊視ができる人だった。
 
10分ほどとにかく一方的にしゃべり続けた田村さんが、いったん呼吸を置き友人に聞く。
「何か他に聞きたいことはありますか?」
すると、友人は以前から興味のあったアーティスト活動を仕事としてやっていけるのかを聞いた。
「うん、それは、無いですね」
間髪入れずにそう返す田村さん。聞いているこちらも思わずギクッとしてしまう。
(そんなハッキリ言わんでも……)
すると納得がいかなかったのか、友人が急に怒り出した。
「なんでそんな事言われなきゃいけないんですか!? 何を根拠に言ってるんですか!?」
今度は友人にツッコミたくなる。
(いやいや、占ってもらうために来てるやん? 私たち)
田村さんは冷静だった。苦笑いでこう言う。
「根拠って言われてもねぇ……。占いだから」
 
ぶすくれてしまった友人と田村さんの間に不穏な空気が流れたまま、今度は私が占ってもらう番になった。
やはりスラスラスラスラ、あらかじめ用意されていた原稿をスピーチするかのように流暢に私に向かって占った結果を話していく。当時取ったはずのメモも20年経った今はもうどこにいったかわからなくなって、正直大半は何を言われたのか忘れてしまった。
 
しかし、今でも忘れられない事が二つだけあるのだ。
ひとつは「あなたは、長崎が広島の人に縁があります」というものだった。
両親が共に長崎出身で、私自身は長崎に住んだことはないものの、それまでにお付き合いした人が長崎出身の人だったという確かな事実がある。しかし、広島というとその頃は縁もゆかりもない土地というイメージしかなかった。
(長崎はなんとなくわかるけど、広島の人とどうやって出会うんだろう?)
 
更に、田村さんは私に向かってこう言った。
「あなたねぇ、男腹(おとこばら)よ! 何人産んでも男しか生まれないわ」
 
私は(へ~、長崎か広島の人に縁があって、男の子を産むのかぁ)と当時はまだまだ先の未来過ぎたが、頭の中で何度も反芻しながらぼんやりと将来に思いを馳せながら、まだプンスカ怒っていた友人を慰めつつ家路についたのであった。

 

 

 

そんなこともすっかり忘れ去っていた約15年後の春、私は趣味の場で一人の男性と出会うのである。それがのちの夫である。彼は広島の人だった。
お付き合いも順調に進み、結婚の話が出だしたあたりで私は唐突に思い出す。
(あー! そういえば、長崎か広島の人に縁があるって言われてたわ!!)
 
この15年後の答え合わせに衝撃を受けた私は、かなり興奮して、近しい人には言いまくった。47都道府県あって、もしかしたら外国の人との結婚だって0%じゃないだろうに、そんなピンポイントで当ててくるんだ。すごい! 今更ながら信頼感が一気に加速した。
 
この衝撃の答え合わせを体感した身としては、もう結婚後男の子を産むことは確定のようなものだった。
そして……、私が産んだ赤ちゃんは、二人ともまさしく男の子だったのだ。
「性別、どっちだろうね」
妊娠初期のまだ性別が確定していない時期にこういう会話は幾度となく経験するが、そのたびに私は田村さんの言葉を思い出し
「いやー、若い頃占い師に男腹って言われた事あって。男の子かな」
なんて返していたが、その通りになったというわけだ。
 
この結果を田村さんに報告するわけではないが、バチンとハマったこの結果が客の身の自分でもなんだかすがすがしいくらいに気持ちよく、その分夫とたまにケンカすることがあっても「この人は運命のひとだから」と思うようにしている。ひとつの指針になってるみたいだ。
 
40を過ぎて家庭を持っている今、ここまで当たる占い師を訪れるのはもう逆に怖い気がする。
それはやはり守るものが出来たゆえの弱さなのかもしれない。
とはいえ、占い自体は嫌いになれず、YouTubeでごまんといる占い師の言葉を家事をしながら聞き流したりしている。
 
「今月の射手座さーん、対人関係はバッチリですよぉ~」
今はこれくらいのライトな占いが私にはちょうどいい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
パナ子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年10月よりライターズ倶楽部へ参加。男児二人を育てる主婦。「書く」ことを形にできたら、の思いで目下走りながら勉強中のゼミ生です。日頃身の回りで起きた出来事や気づきを面白く文章に昇華できたらと思っています。

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2022-03-23 | Posted in 週刊READING LIFE vol.163

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